
主催者の発表では、来場者は3日間で数万人。開場と同時に通路には人が流れ、隣のブースの前には人だかりができている。それなのに、御社のブースの前だけ、足が止まらない。お昼を過ぎて名刺入れを見ると、朝から増えたのは数枚。担当の方は「人は来ているのに、どうしてうちには寄らないのだろう」と、通路を眺めておられるのではないでしょうか。
「展示会の集客は、何をすればいいですか」
来場者を会場まで集めるのは、主催者の仕事です。御社の集客は、通路を流れる人の足が御社のブースの前で止まる理由を、1つ置くことから始まります。事前の案内状も、当日の声かけも、会期後のフォローも、その「止まる理由」があって初めて働きます。多くの会社では、止まる理由が無いまま、案内状の数と名刺の枚数だけを増やしておられます。
以下、展示会の集客が2段に分かれていること、施策がどれも同じに見えてしまう理由、足を止める理由の置き方、前・中・後の流れ、来場者の数より先に見ておく数字、の順に書きます。
1. 展示会の集客は、2段に分かれています
1段目は、主催者が会場まで人を集める段です。広告を打ち、事前登録を募り、会期中に数万人を会場へ運びます。出展料に含まれているのは、ここまでです。
2段目は、会場に来た人が御社のブースの前で足を止める段です。ここは主催者の手を離れ、各社に任されます。出展を終えた会社が「にぎわっていた」と満足しておられるのは、たいてい1段目の話で、ご自分のブースの前については「こんなものか」で終わっています。
来場者の方の一日は、思っているより短いものです。アペルザの来場者調査(n=413)では、来場者は平均17社を訪問し、受け取った資料の94.9%は保管されないと答えています。通路からの3秒で印象に残らなければ素通りされる、と現場ではよく言われます。数万人という1段目の数字は、御社のブースの前では、通路を歩く速さで過ぎていく十数秒に変わります。
2. 集客の施策が、どれも同じに見えてしまう理由
実機のデモ、ノベルティ、名刺集め。どれも、やってよいことです。やめる必要はありません。問題は、それだけで終わると、どのブースも同じに見えることです。来場者の方は1日に10社を超えるブースを回っていますから、同じに見えたブースは、翌日には区別がつきません。
もう1つ、現場で起きていることがあります。展示会では、名刺のリストを集めることがゴールになってしまっている、ということです。集めたあとは電話やメールで追えばよい、と考えられがちですが、名刺のデータだけをいただいても、その場で話が盛り上がっていなければ、商談には結びつきません。集めた名刺の9割は捨てているのも同然、と言われるのは、このためです。
数字にも表れています。マーケライズの調査(2026年、製造業を主とする企業の営業・販促担当者180名、複数回答)では、展示会で重視する指標に名刺獲得数を挙げた担当者が71.9%でした。一方で、出展の効果を指標で明確に測定していると答えた担当者は18.9%です。Sansanの調査(2025年)では、名刺交換のあと日常的にフォローのメールを送る営業担当者は4人に1人、名刺を受け取る機会の多い買い手の約6割が、受け取った名刺をすぐに使える状態で管理できていない、とされています。名刺は集まっても、送る側も受け取る側も、その先へ動けていません。
※ マーケライズ調べ(2026年)/Sansan調べ(2025年)
御社のブースの前で足が止まらないのは、人が来ていないからではありません。足を止めたあとに何が起きるかまで含めて、止まる理由がまだ置かれていないからです。
3. 足を止める理由は、製品の説明ではなく、来場者の方の現場の場面です
通路を歩く来場者の方は、まず「何屋か」を読み、次に「自分に関係があるか」を読みます。製品名と仕様を大きく掲げても、2つ目が読めなければ足は止まりません。止まるのは、ご自分の現場で起きていそうな場面が、通路から見えたときです。ブースの前を素通りされる理由と、実機のデモに現場の物語を足す考え方は、別の記事に書きました。
弊社がご一緒しているのは、御社の製品が使われている現場で、お客さまが困っていた場面を1つ選び、社員の方ご自身が語れる物語にして、ブースの入口に置くことです。弊社はこれを「マンガ×体験価値」と呼んでいます。マンガはきっかけで、社員の方も、来場者の方も、その先の相手も巻き込んで、みんなが主体的に動く形を作る。来場者の方が「うちの現場も同じだ」とご自分の話を始めてくださった瞬間に、商談の入口が開きます。物語は、買い手の側にも語る役を渡します。
床面サインの特殊施工をされている株式会社美華道さまは、2026年5月の第2回鉄道技術展・大阪(インテックス大阪)で、施工の見本を見せるだけでなく、来場者の方の現場で起きていそうな場面をマンガにして、ブースの入口に置かれました。自社マスコットのシグナ・ミカも、その場面の中にいます。人を引きつけるブースになり、3日間のアンケートは459件で、前回出展の関西物流展の約12.8倍。前向きな反応は164件、会期中にその場でいただいた見積は19件でした。
誠幸運輸倉庫さまが2026年10月のものづくりワールド大阪(インテックス大阪)に出展されたときも、同じことが起きています。3日間のアンケート71件のうち、物語に重なる回答をくださった41件では前向きな反応が22件。物語に重ならなかった30件では、前向きな反応は0件でした。足を止めた理由が、そのまま商談の入口になっています。もちろん、どの会社でも同じ数字が出るとは申し上げません。ただ、足を止める理由を製品の説明から現場の場面に変えると、来場者の方の反応が変わることは、2つの現場で確かめています。
4. 前・中・後を1つの流れで組むと、集客は会期の前から始まります
足を止める理由が決まると、事前・当日・会期後が、1本の流れになります。
- 前。主催者の事前登録者に案内状を一斉に送るのではなく、会いたい相手を絞って、当日に会う約束を先に取ります。ブースの入口に置く場面も、この時点で決めておきます。詳しくは展示会の事前集客は何をすればいいかに書きました。
- 中。足を止めてくださった方に、製品の説明より先に、現場の話を伺います。ブースで何を話しかけるかと、アンケートで何を残すかは、このためにあります。その場で何に反応されたかを残し、すぐ商談に進める方と、時間をかける方に分けておきます。
- 後。全員に同じお礼を送る前に、会期中に分けた3つの順に動きます。会期後のフォローの始め方と、来年も出るかを決める材料は、会期中の記録から作ります。
弊社は、作って納めて終わる制作会社としてではなく、この前・中・後を一緒に回すプロジェクトの運用者としてご一緒しています。1回の出展で終わらせず、今年の会期中に足が止まった場面の記録から、翌年の出展を設計します。美華道さまの次の出展の準備も、鉄道技術展の記録から始まっています。だから、お付き合いは1年以上、できれば何年も続くプロジェクトになります。
5. 来場者の数より先に、見ておく3つの数字
主催者の来場者数は、御社の集客の数字ではありません。会期中に、次の3つを数えておくと、来年の出展が設計できます。
- 通路を通った方のうち、御社のブースの前で足を止めた方の数。1時間だけでよいので、誰かが数えます。
- 足を止めた方のうち、ご自分の現場の話をしてくださった方の数。
- その方々のうち、会期中に次の約束(見積・訪問・試作・サンプル)が決まった数。
名刺の枚数は、この3つのあとです。枚数を目標に置くと、会期中の動きが枚数を集める動きに変わってしまいます。展示会の目標設定に何を置くかに、その理由を書きました。
6. 明日からできる3つ
次の出展に向けて、社内でできることを3つに絞ります。
- 前回の出展で、ブースの前で足を止めた方が最初に口にした言葉を、思い出せるだけ書き出します。製品名ではなく、その方の現場の言葉が出てきたら、そこが場面の入口です。
- 御社の製品が使われている現場で、お客さまが困っていた場面を1つ選びます。社員の方が「それはうちの話だ」と語れるものを選びます。
- その場面を、通路から読める1枚にして、ブースの入口に置きます。実機もノベルティもそのまま主役にして、その手前に場面を足します。
この3つが決まれば、マンガにするか、パネルにするか、キャラクターを立てるかは、あとから決められます。
よくあるご質問
Q1. 来場者数の少ない展示会では、集客は望めませんか。
主催者が集める人数より、通路を歩く方の職種が御社のお客さまと重なっているかが先です。重なっていれば、来場者数が少なくても、足を止めた方の数は取れます。どの展示会に出ればいいかに、選び方を書きました。
Q2. 事前集客の案内状は、何通送ればいいですか。
通数から入らないことをお勧めしています。会いたい相手を先に決め、その方に当日会う約束を取るほうが、会期中の動きが決まります。一斉送付は、その約束の補助として使います。
Q3. ノベルティで人を集めるのは、効果がありませんか。
あります。足を止めていただくきっかけとして、ノベルティは働きます。問題は、受け取ったあとに話が始まるかどうかです。受け取って次のブースへ向かう方が多いなら、きっかけのあとに置く場面が足りていません。
Q4. 名刺を多く集めたほうが、商談は増えませんか。
枚数と商談の数は、比例しません。会期中に話が盛り上がらなかった名刺は、会期後に電話をしても、相手の記憶に御社が残っていません。枚数より先に、その場で現場の話をしてくださった方の数を見てください。
Q5. 1小間の小さなブースでも、できますか。
できます。置くのは大きな装飾ではなく、通路から読める場面1つです。小さなブースほど、製品と場面が近くに置けるので、足を止めた方がそのまま製品に手を伸ばしやすくなります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
前回の出展で、御社のブースの前で足を止めた方は、最初に何とおっしゃいましたか。
その言葉が、次の出展で通路に置く場面の、最初の1コマになります。
社員の方と一緒に、来場者の方の現場の場面を物語にしてブースの入口に置き、前・中・後を回して翌年の出展へつないでいくところまで運用しています。展示会マンガプロジェクトを見る
前回の出展で足を止めた方の言葉を2つ3つお持ちいただければ、次に通路へ置く場面の見当まで、その場で一緒に出せます。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考実績
展示会の集客は、来場者の数ではなく、御社のブースの前で足が止まる理由を1つ置くところから始まります。


