
展示会が終わって少しすると、次回の出展の案内が届きます。社内では「来年も出るのか」と聞かれる。けれども、今回の出展が良かったのかどうか、はっきり答えられない。そんな状態で、申込の期限だけが近づいていませんか。
「来年も同じ展示会に出るべきか。何を材料に決めればいいのでしょうか」
来年も出るかどうかは、名刺の枚数では決められません。決める材料は、会期が終わってから集めるものではなく、会期中に取っておくものです。誰が来て、何に悩んでいて、どの反応が見積に近かったか。この3つが手元にあれば、出るかどうかも、出るなら何を変えるかも決められます。反対に、この3つが無いまま2回目に出ると、1回目と同じ結果をもう一度なぞることになりがちです。
以下、判断に迷う理由から始めて、2回目に何を持ち越すか、出展をまたいで数字がどう変わったかの記録までを書きます。
1. 来年も出るかで迷うのは、今回の出展を測る物差しが無いからです
担当の方が迷われるのは、決断力が無いからではありません。迷う場面には、たいてい次のような事情があります。
- 名刺は集まったが、そのあと何件が話に進んだのか分からない。お礼のメールは送った。返事は数件だった。それが多いのか少ないのか、比べる相手がいない。
- 上司からは費用のことを聞かれる。小間代、装飾、人件費、配布物。出た分の費用は数字ではっきりしているのに、得たものは数字にしづらい。
- やめるのも怖い。同業が毎年出ている展示会で、うちだけ姿を消したら何と思われるか。出ないことにも、目に見えない損がありそうに感じる。
- 出るとしても、何を変えればいいのか分からない。ブースの見せ方か、配る物か、立つ人か。変える場所が決まらないので、結局は去年と同じ準備を繰り返す。
4つとも根は同じです。今回の出展を、あとから比べられる形で残していない。だから、良かったとも悪かったとも言えず、次の一手も決まりません。
2. 名刺の枚数は、判断の材料になりにくい数字です
いちばん手元に残りやすいのは名刺の枚数です。けれども枚数は、ブースの前をどれだけ人が通ったかに引っぱられます。会場の広さ、小間の位置、その年の来場者数でも動きます。枚数が去年より増えても減っても、それが御社のやり方の良し悪しなのかは分かりません。
しかも、名刺そのものには「その方が何に困っていたか」が書かれていません。会期から日が経つほど、どの名刺の方とどんな話をしたかは、立っていた方の記憶からも薄れていきます。商談化率が上がらない理由も、ここにあります。
3. 2回目に持ち越せるのは、会期中に取った3つだけです
来年の判断に使えるのは、会期中に、来場者の方ご自身の言葉で残してもらったものです。弊社が伴走する出展では、次の3つを必ず会期中に取ります。
- 誰が来たか。名刺の肩書きではなく、「どんな立場で、何のために来場されたか」。情報を集めに来た方か、具体的な検討を始めている方か。
- 何に悩んでいたか。来場者の方が、ブースでご自身の現場の話をされたときの中身です。多かった悩みは、翌年のブースで最初に見せるべきものになります。
- どの反応が見積に近かったか。見積のご希望、現地を見てほしいというご依頼、資料だけでよいという方。反応の強さで分けておくと、会期後に追いかける順番が決まり、翌年に何を増やせばよいかも見えてきます。
3つとも、会期のあとで電話やメールで聞き直すのはほぼ無理です。だから、ブースでの体験とアンケートを一続きにして、来場者の方が自然に答えてくださる形を会期の前に作っておきます。分け方の詳しい手順は展示会のあとのフォローは何から始めるかに書きました。
4. 出展をまたぐと、数字はこう変わりました
株式会社美華道さまは、床面に貼るサイン「スマートシグナル」の特殊施工をされている会社です。弊社は、関西物流展から鉄道技術展へ、出展をまたいでご一緒しています。
2026年5月の第2回鉄道技術展・大阪では、自社のマスコット「シグナ・ミカ」のマンガをブースの入口にしました。来場者の方がマンガを読み、アンケートに答えながら、ご自身の現場の悩みを話し始める。説明を聞かされる場ではなく、ご自身が話す場にしました。
3日間のアンケートは459件で、前回出展された関西物流展の約12.8倍でした。前向きな反応は164件。会期中にその場でいただいた見積は19件、すぐ商談に進めるS級とA級の見込客は86件でした。
大事なのは、12.8倍という数字そのものより、前回の出展で分かったことを今回の設計に入れたことです。アンケートで何を聞くか、どの悩みを入口に置くか、どの反応を見積に近いと見なすか。これは1回目の出展が無ければ決められませんでした。1回目は、2回目の準備でもあったのです。
もちろん、どの会社でも同じ数字が出るとは申し上げません。業種も展示会も違います。ただ、1回目の記録を2回目に持ち越せば、少なくとも「去年と同じ準備を繰り返す」ことからは抜け出せます。
5. 次回の申込書に判を押す前に、決めておく5つ
来年も出ると決めたなら、申込と同時に次の5つを決めておくと、準備が去年の繰り返しになりません。
- 今回の3つの記録を1枚にまとめる。誰が来て、何に悩み、どの反応が見積に近かったか。記録が無ければ、それ自体が来年いちばんに直す所です。
- 来年、ブースで最初に見せる悩みを1つ決める。今回いちばん多かった悩みを入口に置きます。
- 会期前に会う約束を作る相手を決める。今回A級だった方で、まだ話が続いている方には、来年のブースへのご案内が自然に送れます。
- 会期中に取る記録の聞き方を決める。今回聞けなかったことを、アンケートかブースでの体験に組み込みます。
- 会期後に誰が、どの順で追いかけるかを決める。会期が終わった瞬間に動ける形にしておきます。
反対に、この5つが1つも決まらないなら、来年は出展を見送り、記録の取り方を整える年にする、という判断もあり得ます。出るか出ないかより、次の出展で何を持ち帰るかを決めることのほうが先です。
6. 1回の出展ではなく、何年も続くプロジェクトとして回します
弊社は、展示会のマンガを1枚作ってお渡しする会社ではありません。会期の前に当日会う約束を作り、会期中に来場者の方ご自身が話す場を作り、会期のあとに仕分けた順で追いかける。そして、その結果を翌年の出展へ持ち越す。前・中・後を、御社の営業の方と一緒に毎年回し続けるプロジェクトの運用者です。
マンガは、そのための入口です。来場者の方が「自分の話」としてブースに入ってこられるので、会期中に3つの記録が自然に残ります。出展を重ねるほど、この記録が積み上がり、御社の展示会は「毎年同じことをする場」から「毎年少しずつ確かになる場」に変わっていきます。美華道さまとも、次の出展に向けた準備を一緒に続けています。
よくあるご質問
Q1. 1回目の出展で記録を取っていませんでした。もう遅いですか。
遅くはありません。いまある名刺を、話の中身を覚えている範囲で3つに分けるところから始められます。完全でなくても、2回目の出展の前に「何を記録するか」を決めておけば、2回目からは比べられる記録が残ります。
Q2. 同じ展示会に毎年出ると、来場者の方に飽きられませんか。
同じ見せ方を繰り返すと、そうなりやすいです。前回いちばん多かった悩みを入口に置き直し、前回話した方には続きをお見せする形にすると、同じ展示会でも毎年違う話ができます。
Q3. 出展をやめるべきかどうかは、何で判断すればよいですか。
弊社は、業種や展示会をまたいだ平均の数字を持っていないため、何件以下ならやめるべきという線は申し上げられません。判断に使えるのは、御社の前回の記録と今回の記録を比べたときの動きです。そのために、まず比べられる記録を残すことをおすすめしています。
Q4. 違う展示会に出ても、前回の記録は使えますか。
使えます。美華道さまも、関西物流展から鉄道技術展へと展示会を替えて出展されています。来場者の業界が変わっても、「どの悩みを入口にし、どの反応を見積に近いと見なすか」の考え方は持ち越せます。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
今回の展示会で、ブースに立った方が「この方とは話が弾んだ」と覚えている来場者の方は、何人おられますか。そして、その方が何に困っていたかは、どこかに書き残されていますか。
その記録が、来年の出展を決めるいちばん確かな材料です。
会期の前・中・後を設計し、その記録を翌年の出展へ持ち越すところまで、一緒に運用しています。展示会マンガプロジェクトを見る
御社の次の出展をどう組むか、一度お話をうかがうこともできます。30分の面談を予約する
来年も出るかを決めるのは名刺の枚数ではなく、今年の会期中に書き残した来場者の方の言葉です。
