
「展示会に出よう、という話にはなった。ただ、どの展示会に出ればいいのかが決まらない。案内はどれも来場者何万人と書いてある」
選ぶ基準は、来場者数ではありません。その通路を歩く人の職種です。10万人が来る催しでも、御社の商品を買う立場の人が1人も歩いていなければ、商談は1件も生まれません。逆に、来場が2万人でも、決裁に関わる職種が濃く歩いていれば、その2万人のほうが重い。ここを取り違えたまま出展先を決めると、費用ではなく1年を失います。
以下、公表されている調査と、弊社が実際に立ち会った現場の記録を分けて並べます。
1. 来場者数と、御社の商談の数は、別の数字です
まず前提を1つ。来場者は、御社のためだけに来ているのではありません。産業機械の展示会情報サイト、アペルザの来場者調査(有効回答413名)では、来場者が1回の来場で訪問するブースは平均17社でした。
会場に1,000社が出ていれば、来場者が立ち寄るのは、そのうちのおよそ17。残る983社の前は通り過ぎます。つまり出展者にとっての本当の競争は、来場者の総数ではなく、その17枠に入れるかどうかです。
総来場者数が2倍になっても、この17という数はほとんど変わりません。増えるのは、通路を歩く人の数と、隣のブースの明るさです。
2. 主催者の案内から読み取るべきは、次の3つです
展示会の公式案内には、たいてい来場者数が大きく出ています。そこではなく、小さく載っている次の3か所を見てください。
- 来場者の職種の内訳。技術・購買・経営のどれが多いか。設計者ばかりの催しに、経営層向けの商材を持ち込んでも噛み合いません
- 来場者の勤務先の規模と業種の内訳。御社が取引したい層が、実際にその通路を歩いているか
- 同時開催の催しの顔ぶれ。人はチケット1枚で複数の会場を歩きます。隣で何が開かれているかで、通路の顔ぶれは変わります
この3つが公表されていない催しは、それ自体が判断材料です。出展を集めることが目的になっていて、来場者の質を数えていない可能性があります。問い合わせて出してもらえるかどうかまで含めて、主催者の姿勢を測ってください。
3. 同じ会社でも、出る催しが変われば結果は変わります
弊社が伴走した株式会社美華道さまの記録を、そのままお伝えします。床面サインの特殊施工「スマートシグナル」を扱う会社さまです。
前回の出展先は関西物流展でした。次に第2回鉄道技術展・大阪2026(2026年5月27日から29日、インテックス大阪)へ出展されています。この回で記録された数字が次のとおりです。
- アンケート回収459件。前回出展の関西物流展の約12.8倍
- 前向きな反応164件、率にして35.7パーセント
- 会期中に出た見積依頼19件
- 対話した相手の75.5パーセントが、JRや上場大手などの大企業層
ここで正直に申し上げます。この差を、出展先を変えたからだ、と言い切るつもりはありません。同じ回で、当日のブースの作り方も、迎え方も変えています。数字の全部を選び方の手柄にはできません。
それでも、はっきりしていることが1つあります。4番目の75.5パーセントという数字は、当日の工夫では作れないということです。誰が通路を歩いているかは、出展先を決めた時点で、ほぼ決まっています。当日できるのは、歩いてきた人の足を止めることだけです。
4. 決める前に、主催者へ聞いておく5つ
資料請求のときに、次の5つを書き添えて送ってください。返答の速さと具体性まで含めて、判断の材料になります。
- 前回来場者の職種別・企業規模別の内訳をいただけますか
- 前回の出展社数と、そのうち初出展は何社でしたか
- 小間の位置は、いつ、どんな順番で決まりますか
- 出展社向けの事前案内は、来場登録者へ何回、どんな形で届きますか
- 会期後に、来場者データはどこまで出展社へ渡されますか
3番目は、地味に見えて効きます。同じ出展料でも、入口から遠い袋小路の小間と、主通路に面した小間では、前を歩く人数が変わります。位置の決まり方を知らずに申し込むと、運任せになります。
5. 選び終えたあとに崩れるのは、たいてい当日の作り方です
出展先を正しく選んでも、成果が出ない会社さまがあります。弊社が現場で繰り返し見てきた原因は、1つに集約されます。リストを集めることが、いつのまにか目的になってしまっていることです。
名刺さえ集めておけば、あとはテレアポやメールで追いかけられる。そういう段取りで組まれた出展は、ほぼ動きません。データだけ取られて、その場で何も起きていないからです。現場で盛り上がらなかった相手に、後日メールを送っても、送った側の記憶しか残っていません。
数字でも、同じことが確かめられます。先ほどのアペルザの調査では、来場者が持ち帰った資料の94.9パーセントは保管されていませんでした。名刺管理サービスのSansanの調査(有効回答1,272名)では、受け取った名刺の57.7パーセントが管理されないままです。展示会の現場では「3秒以内に印象に残らないと素通りされる」「集めた名刺の9割は捨てているのも同然」とよく言われますが、こうした数字を見ると、言い過ぎとも思えません。
一方で、同じアペルザの調査では、ブースを訪問したあとに検討を始めた人が56.6パーセントいます。その場で何かが起きた相手は、ちゃんと動いているということです。分かれ目は、集めた枚数ではなく、通路で交わした中身のほうにあります。
弊社は、フランスのJAPAN EXPO等のマンガ関連イベントに計11回出展してまいりました。言葉が通じない通路で分かったのは、掲げた説明文の正確さでは足が止まらないということです。読ませる資料より、絵だけで筋が追えるもののほうが、通路では強い。国内の展示会でも、これは変わりません。
よくあるご質問
Q1. 来場者数が多い催しに出るのは、間違いですか。
間違いではありません。順番の問題です。まず御社が会いたい職種を1つ決め、その職種が濃く歩く催しを探す。候補が複数残ったときに、はじめて来場者数で並べ替える。この順番なら、人数の多さは味方になります。逆にしたときだけ、費用が空振りします。
Q2. 初めての出展です。大きい催しと小さい催し、どちらから始めるべきですか。
小さいほうをおすすめしています。理由は費用ではありません。小間が小さいほど、誰の足が止まり、どこで止まらないかが、はっきり見えるからです。1度目で自社の見せ方の当たり外れを掴んでから、大きい催しで本命の小間を取る。この順番なら、1回で見切る出展になりません。
Q3. 出展先を毎年変えたほうがよいですか。
おすすめしません。BtoBの展示会マーケティング支援を行う才流の調査(有効回答300名)では、9割を超える企業が出展を継続すると答えています。理由は明快で、2回目以降は前年に会った人が訪ねてきてくれるからです。毎年変えると、その積み上がりが毎回ゼロに戻ります。変えるべきは出展先ではなく、当日の作り方のほうです。
Q4. 業界の展示会が見つかりません。
その場合は、御社の商品を使う人ではなく、御社の商品を組み込む人が集まる催しを探してください。部品なら完成品の催し、材料なら加工の催しです。買い手そのものより、買い手のとなりに立つ人のほうが、通路では見つけやすいことがあります。
Q5. 出展を決めたあと、社内で何から始めればよいですか。
ブースの図面より先に、会期後に誰が何日以内に連絡するかを決めてください。ここが決まっていない出展は、当日どれだけ盛り上がっても、2週間後に止まります。順番としては、会いたい相手、当日その場で起こすこと、帰ってからの動き。この3つを先に決めて、それから小間の設計に入ります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社がいちばん会いたい相手の職種を、ひとことで言うと何になりますか。
その1語を書いた紙を1枚、ご相談のときにお持ちください。
展示会での実際の取り組みをご覧いただけます。展示会マンガの事例を見る
選ぶのは、人数ではありません。選ぶのは、その通路を歩く人です。
参考ブログ
参考実績


