
「展示会には毎年出ています。名刺は300枚、400枚と集まります。それなのに、そこから商談になるのは数件です。お礼のメールも送りましたし、営業が電話もかけました。展示会の商談化率というのは、どこの会社もこんなものなのでしょうか」
こんなものではありません。商談化率が上がらないのは、会期のあとの追いかけ方が足りないからではなく、会期中にもう決まっているからです。ブースで熱が生まれなかった名刺は、あとからどれだけ追いかけても、商談の手前で止まります。
以下、商談化率が上がらない仕組みを分けて、どこから直すかまで並べます。
1. 名刺の枚数を追うほど、商談化率は下がっていきます
展示会の担当になると、まず名刺の枚数で評価されます。枚数は数えやすく、上司にも報告しやすいからです。すると、ノベルティを配って、とにかく通路の方にスキャンさせていただく、という動きになります。
集めた名刺の9割は、捨てているのも同然だと、現場ではよく言われます。枚数を増やすほど、話もしていない方の名刺が混ざります。分母が膨らみ、商談化率は下がります。担当の方が怠けているのではありません。枚数を目標に置いた時点で、そうなる仕組みです。
もう一つ、厳しい数字があります。製造業の来場者調査(アペルザ、延べ413件)では、来場者は1回の展示会で平均17社のブースを回り、受け取った資料の94.9%は保管されていません。17社のうちの1社として、資料だけが残る。これが、枚数を追った出展の行き着く先です。
2. 追いかけても動かないのは、相手の手元に何も残っていないからです
会期のあと、お礼のメールを送り、電話をかけます。ところが相手の方は、御社のブースで何を話したかを覚えておられません。17社のうちのどれだったか、名前を聞いても思い出せないのです。
渡した名刺も同じです。Sansanの調査では、購買・調達の部門の方の57.7%が、受け取った名刺を管理していないと答えています。こちらが渡した名刺は、相手の机の引き出しで止まっています。
展示会では、リストを集めることがゴールになりがちです。あとはテレアポやメールで育てればよい、と考えてしまう。けれども、データだけ取っても、その場で盛り上がっていなければ商談には結びつきません。追いかける前に、相手の中に「あのブースの話の続きを聞きたい」という氣持ちが残っているかどうか。そこで決まっています。
3. 商談化率を下げている3つの穴
ここまでを、直せる形に分けます。
- 目標に枚数を置いている。数えるものが枚数なら、動きも枚数を増やす方向へ寄ります。話した中身は、どこにも残りません。
- 会期中に仕分けていない。すぐ見積が欲しい方と、情報を集めに来ただけの方が、同じ名刺の山に入っています。会期のあとに全員へ同じメールを送ると、いちばん熱い方への連絡が遅れます。
- ブースで相手が話す場面が無い。説明はこちらが一方的にするもの、になっていると、相手の悩みを聞けないまま名刺だけを受け取ります。悩みを聞けていない相手に、商談の提案はできません。
3つとも、会期のあとでは直せません。直すなら、会期の前と会期中です。
4. 会期中に熱を作ると、数字はこう変わりました
株式会社美華道さまは、床面に貼るサイン「スマートシグナル」の特殊施工をされている会社です。2026年5月の第2回鉄道技術展・大阪(インテックス大阪)に出展されました。
ブースでは、自社のマスコット「シグナ・ミカ」のマンガを入口にしました。来場者の方がマンガを読み、アンケートに答えながら、いつの間にか自社の悩みを話し始める。説明を聞かされる場ではなく、ご自身が話す場にしたのです。
3日間のアンケートは459件で、前回出展された関西物流展の約12.8倍でした。前向きな反応は164件(35.7%)。前向き率は初日30%、2日目37%、最終日42%と、日を追うごとに上がっています。会期中にその場でいただいた見積は19件、すぐ商談に進めるS級とA級の見込客は86件でした。
数字の中でいちばん大事なのは、枚数ではなく仕分けです。前向きな164件を、会期中の反応でS・A・Bの3段階に分けました。S級(見積をご希望)は19件ですぐ提出へ。A級(試験施工・現地訪問をご希望)は67件で会期直後の訪問へ。B級(説明・検討の段階)は78件で、マンガで関係を続ける側へ。追いかける順番が、会期が終わった瞬間に決まっていました。会期後のフォローを3つに分ける考え方も、この仕分けが前提です。
5. 1回の出展で終わらせず、次の出展へつなぎます
美華道さまとは、関西物流展から鉄道技術展へ、出展をまたいでご一緒しています。1回目で分かったことを、2回目の設計に入れる。アンケートで何を聞くか、どの悩みが多かったか、どの反応が見積に近かったか。これは1回の出展では手に入りません。
弊社は、展示会のマンガを1枚作ってお渡しする会社ではありません。会期の前に当日会う約束を作り、会期中に来場者の方ご自身が話す場を作り、会期のあとに仕分けた順で追いかける。そして、その結果を次の出展に持ち越す。前・中・後を、御社の営業の方と一緒に回し続けるプロジェクトの運用者です。マンガは、来場者の方が「自分の話」としてブースに入ってこられる入口として使います。
Q1. 展示会の商談化率は、何%くらいが普通ですか。
業種も展示会の規模も違うため、弊社は一般的な平均値を持っていません。出どころの確かな統計も見当たりませんでした。比べるなら、他社の平均より、御社の前回の出展です。前回、名刺1枚あたりいくつ商談になったかを出しておくと、次の出展の変化が測れます。
Q2. 名刺の枚数を目標にするのは、やめたほうがよいですか。
やめなくて構いません。ただ、枚数の横に「その場で次の約束まで話せた件数」を並べてください。二つを並べると、枚数だけが伸びて中身が伴っていない出展が、数字で見えるようになります。
Q3. 会期中に仕分けるのは、人手が足りなくて難しいです。
アンケートの設問に、確度を答えていただく欄を1つ入れるだけで始められます。「見積が欲しい」「現地で見てほしい」「情報を集めている」の3択です。答えた時点で仕分けが済みます。アンケートで何を聞くかもあわせてご覧ください。
Q4. 会期のあとの追いかけは、もう遅いということですか。
遅くはありません。ただ、全員に同じお礼を送る前に、熱の高い方から順に連絡してください。熱の高い方への連絡が1週間遅れると、その間に他社の話が進みます。
Q5. 次の展示会まで時間がありません。何から始めればよいですか。
前回の名刺の山から、実際に話の中身を覚えている方を5人だけ書き出してみてください。その5人が、どんな悩みを話しておられたか。そこに次の出展で聞くべきことが入っています。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
前回の展示会で集まった名刺のうち、どの方がどんな悩みを話しておられたか、いま思い出せる方は何人いらっしゃいますか。
数えるほどしかいないようでしたら、商談化率を決めているのは会期のあとではなく、会期中のブースです。
会期の前から、会期中の仕分け、会期のあとの追いかけ、次の出展までを一緒に運用しています。展示会マンガプロジェクトを見る
展示会の商談化率は、会期のあとの頑張りでは上がりません。ブースで、相手の方がご自身の悩みを話されたかどうかで決まっています。
