
「展示会が終わって、名刺が200枚ほど手元にあります。上司からは早くフォローしろと言われるのですが、どこから手を付ければよいのか分かりません。とりあえず全員にお礼メールを送るところから始めるべきでしょうか」
お礼メールから始めないでください。会期後のフォローで最初にやることは、送ることではなく分けることです。そして分ける作業は、会期が終わってからでは間に合いません。会期中に、目の前でお話ししながら分けておきます。それができていれば、会期後にやることは「分けておいた順に連絡する」だけになります。
先に、判断の助けになる数字をひとつ置きます。製造業の来場者調査(アペルザ・延べ413件)では、来場者が回るブースは平均17社で、持ち帰った資料の94.9パーセントは保管されていません。同じ調査で、ブースを訪問したあとに検討を始めたと答えた方が56.6パーセントいました。会期後に残っているのは資料ではありません。会期中に何が起きたか、のほうです。
以下、弊社が伴走した出展で実際にどう分けたかを、数字のままお示しします。
1. 会期が終わってから分けようとすると、もう分けられません
会期後に机の上へ並んだ名刺の束を見て、どれが有望かを思い出そうとする。これが、いちばん多い進め方です。しかし3日間で何十人、何百人とお話ししたあとに、1枚ずつの会話を思い出すことはできません。思い出せないので、結局は全員に同じ文面を送ることになります。
そして全員に同じものを送ると、返ってくる数は名刺の枚数に比例しません。相手にとって、その1通は「先日お会いした会社の1社」からの連絡だからです。平均17社を回った方にとって、御社は17分の1です。
分ける作業には、御社の担当者がその場で見聞きしたことが要ります。どんな課題をお持ちだったか。どこまで具体的だったか。決める立場の方だったか。これは名刺に書いていません。会期中にその場で記録しないかぎり、あとから復元できません。
2. 弊社が伴走した出展では、会期中に3つへ分けました
株式会社美華道さまの記録を、そのままお伝えします。第2回鉄道技術展・大阪2026(2026年5月27日から29日・インテックス大阪)への出展です。商材は床面サインの特殊施工「スマートシグナル」で、鉄道や物流の現場に線や表示を貼り込む技術です。
会期3日間でアンケートが459件集まりました。前回出展された関西物流展の約12.8倍です。この459件を、会期中にその場で3つへ分けています。
A級が67件。試験施工や現地訪問の話まで進んだ方です。B級が78件。説明を聞いて検討に入られた方です。前向きなご回答は全体で164件、35.7パーセントでした。会期中の見積が19件です。このうち、すぐ商談に進める見込客として扱ったS・A級が86件でした。
お話しした相手の75.5パーセントが、JRや上場企業などの大企業層でした。
ここで見ていただきたいのは459という枚数ではありません。67と78という、分かれている状態のほうです。会期が終わった時点で、連絡する順番も、何を書くかも、すでに決まっています。
3. 分けるための質問は、会期中のご案内に組み込みます
その場で分けるには、聞かなければ分かりません。ただ、立ち話で経歴や予算を尋ねれば、相手は身構えます。だから弊社では、質問を単体で置かず、ご案内の流れの中に置きます。
美華道さまでは、ブースでの体験とアンケートを一続きにしました。来場者はまず床面サインを実際に見て、その場で「どの現場で困っているか」をご自身の言葉で書かれます。書かれた内容がそのまま、分けるための材料になります。担当者が推測する必要がありません。
前向きだと答えられた方の割合は、日ごとに上がりました。初日30パーセント、2日目37パーセント、最終日42パーセントです。3日間で12ポイント上がっています。同じブース、同じ商材で上がったのは、聞き方と案内の順番を会期中に直したからです。
4. 連絡の中身は、お礼ではなく会期中の続きにします
分けたあとの連絡で書くのは、ご来場のお礼ではありません。会期中にその方が言われたことへの返事です。
A級の方には、話に出た現場の条件で試験施工ができるかどうかを書きます。B級の方には、検討されていた箇所に近い施工例を添えます。文面は変わりますが、労力はほとんど変わりません。会期中に何を話したかが記録されているからです。
逆に、記録が無いまま差をつけようとすると、文面を考える時間だけが増えます。多くの会社で会期後のフォローが止まるのは、担当者の熱意が足りないからではなく、書く材料が手元に無いからです。
5. 御社が渡した名刺は、相手の手元でこう扱われています
フォローの前提として、1つ確かめておきたいことがあります。Sansanが買い手部門(購買・調達622名)に行った調査では、他者から受け取った名刺の57.7パーセントが管理されていないという結果でした。
これは御社が集めた名刺の話ではありません。御社が渡した名刺が、相手の手元で受けている扱いのほうです。つまり、会期後に御社から届いた連絡を見た相手は、御社の名刺を探せない可能性が高いということです。
だから連絡の冒頭に必要なのは社名の再確認ではなく、「あのとき、この話をした会社です」と相手が思い出せる一文です。会期中に何も起きていない相手には、書ける一文がありません。
6. 会期後にやることを減らすほど、会期後が動きます
ここまでを1つにまとめます。会期後のフォローの成否は、会期後の作業量では決まりません。会期中にどれだけ決め終えているかで決まります。
順番が決まっている。書く材料がある。相手が思い出せる。この3つが揃っていれば、会期後にやることは連絡だけです。揃っていなければ、まず思い出す作業から始めることになり、そこで止まります。
なお、才流の調査(n=300)では9割を超える企業が出展を継続しています。多くの会社は、出展そのものをやめるという判断はしていません。同じ回数出るのであれば、会期中の設計を変えるほうが先だと弊社は考えています。
よくあるご質問
Q1.会期後、何日以内に連絡すべきですか
期限の数字については、各社の記事でさまざまに書かれていますが、どの調査に当たるのかまで確かめられるものが見当たりませんでした。ですので弊社では、何日以内という基準はお出ししていません。順番が決まっていれば初日から動けますし、決まっていなければ何日以内でも同じ文面になります。日数より、分かれているかどうかを見てください。
Q2.アンケートを書いていただけない方が多いのですが
アンケートを単体でお願いすると書いていただけません。美華道さまの場合は、体験のあとに置いて一続きにしました。順番の問題です。
Q3.人数が少なく、会期中にそこまで手が回りません
会期中に分けるのは、会期後の作業を増やすためではなく減らすためです。会期後に200枚を思い出しながら仕分けるより、その場で書き込むほうが総量は少なくなります。どちらかを選ぶのであれば、会期中のほうに人を置いてください。
Q4.A級とB級はどう線を引けばよいですか
案件ごとに変わります。美華道さまでは、試験施工や現地訪問の話まで進んだかどうかで引きました。御社の場合、次の1歩が何かをまず決めてください。その1歩に進めるかどうかが、そのまま線になります。
Q5.マンガやキャラクターは、フォローのどこで効くのですか
会期後ではなく会期中です。足を止めていただき、体験していただき、書いていただくところまでを設計する道具として使っています。会期後に送る資料としてマンガを足しても、順番が決まっていなければ結果は変わりません。
御社の前回の出展で、会期が終わった時点で連絡する順番は決まっていましたか。
会期中に459件を分けた出展の記録は、第2回鉄道技術展・大阪2026 株式会社美華道さまの実績ページにまとめています。
会期後のフォローは、会期後に始めるものではありません。会期中に分け終えておくものです。
会期中に商談が生まれるブースとは
前・中・後を一度に見る


