
「中小企業だから、採用が難しいのでしょうか。求人は出しています。給与も見直しました。採用サイトも作りました。それでも応募が来ません。何から手をつければよいのか、正直わからなくなっています」
中小企業だから難しいのではありません。別々の3つの原因が同時に起きていて、それが「難しい」というひとつの感触にまとまって見えているだけです。3つに分けると、どれが御社で止まっているのかが決まり、手をつける順番も決まります。
以下、その3つの分け方と、順番が決まっている理由、御社がどこで止まっておられるかを見分ける質問、そして順番どおりに進めた会社さまの記録を並べます。
1. 「中小企業だから」でひとまとめにすると、打ち手が決まりません
採用がうまくいかないとき、原因を会社の規模に置くと、そこから出てくる打ち手は3つに絞られます。給与を上げる、媒体を増やす、採用サイトを作り直す。どれも規模の差を埋めにいく動きです。
ところが、この3つはいずれも大きい会社が同じことをもっと大きくできます。給与を上げても応募が来ないのは、条件を上げた瞬間に、条件で比べられる場所へ自分から立ったからです。規模を原因に置くかぎり、打ち手は必ず規模の勝負になります。
原因は規模ではありません。次の3つです。
2. 原因は3つに分かれます
- 知られていない。御社の名前が、まだ相手の頭の中に入っていない状態です。求人広告は、求人を探しておられる方の画面にだけ出ます。探しておられない方には、そもそも表示されません。
- 働く姿が見えない。名前は届いたけれど、そこで何をしてどう過ごすのかが想像できない状態です。求人票に載るのは勤務地、給与、休日、雇用形態で、これは全社が同じ形式で書きます。読み手に届くのは条件だけになります。
- 続いていない。一度は届いたけれど、止めた月に元へ戻る状態です。掲載を止めれば表示は消えます。単発の説明会も、終われば終わりです。
この3つは、症状が似ているのに原因がまったく違います。1で止まっている会社さまが採用サイトを作り直しても、見に来る方がいません。2で止まっている会社さまが媒体を増やしても、増えた画面で同じ条件が比べられるだけです。3で止まっている会社さまが単発の打ち手を足しても、足した分だけ止めたときの落差が大きくなります。
3. 順番は1、2、3です。逆から始めると効きません
3つには順番があります。知られていない相手に働く姿は届きません。働く姿が見えないものを、続けて届けても中身が変わりません。だから1から順に手をつけます。
実務では、この順番が逆になっていることがよくあります。先に採用サイトを整え、次に媒体を増やし、最後まで「知られていない」に手がつかないまま、掲載費だけが積み上がります。採用コストが高くなるのは、この順番の狂いが毎月の請求書に出たものです。
順番を守ると、打ち手はずいぶん地味になります。1は、探しておられない方の日常に御社の名前を先に置くこと。2は、働いている場面をそのまま見える形にすること。3は、その2つを止めずに続けられる仕組みにすること。派手さはありませんが、大きい会社と同じ土俵に乗らずに済みます。
なお「母集団を大きくすれば解決する」という考え方には、ここでは立ちません。母集団を増やす動きは、そのほとんどが1ではなく、条件で比べられる場所での露出を増やす動きになるためです。
4. 御社がどこで止まっておられるかを見分ける、3つの質問
社内で答えを合わせてみてください。人事の方だけでなく、現場の方にも聞いていただくと、ずれが見えます。
- 御社から半径10キロに住んでおられる方のうち、御社の社名を聞いたことがある方は、どのくらいいらっしゃると思われますか。「たぶん、ほとんど知らない」と答えが揃ったら、止まっているのは1です。
- 御社に未経験の方が入られて最初につまずく場面を、90秒で、条件を使わずに説明できますか。朝どこに集まり、誰と何を話し、何を作っておられるのか。ここで言葉に詰まるようでしたら、止まっているのは2です。
- 去年の採用費のうち、支払いを止めても手元に残るものは何割でしたか。ほとんど残っていなければ、止まっているのは3です。
3つとも当てはまることもあります。その場合も、着手は1からです。
5. 知られ方の入口は、求人媒体の外にあります
マイナビの2027年卒を対象とした調査(調査期間2026年3月20日から4月5日、有効回答2,800名)では、地元での就職を希望する方の割合は58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加に転じています。同じ調査で、地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。求人媒体ではありません。
これは新卒の方を対象とした調査ですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、知られ方の入口が求人媒体の外にあるという点は、中途採用の現場で見聞きすることとも重なります。地元の方に会社を知っていただくという動きが、1に直接効きます。
そして通勤圏の方であれば、働く場所をその日のうちに見ていただけます。工場見学や職場見学が2に効くのは、この近さがあるからです。地方だから採用が難しいと感じられている会社さまほど、この近さを持っておられます。
6. 順番どおりに進めた会社さまの記録
大阪市港区の前田機械株式会社さまは、求人サイトに掲載しても応募が無い状態から、社員の働く姿を描いた採用マンガを地域へ配布されました。配布から10日で工場見学のお申し込みが入り、採用に至っています。現在は第2弾を継続して運用しておられます。
この順番は、1、2、3のとおりです。まず探しておられない方の手元へ届け(1)、そこに働く姿を載せ(2)、第2弾として続けておられます(3)。媒体を増やしたのでも、条件を上げたのでもありません。
Q1. 3つとも当てはまります。同時に進めてはいけませんか。
進めて構いません。ただし予算と手間を分けるときは、1に厚く置いてください。2と3は、1で届いた相手がいて初めて意味を持ちます。逆にすると、よくできたものを誰も見ないという形になりやすいです。
Q2. 求人広告は止めたほうがよいのでしょうか。
止めないでください。いま探しておられる方に届く経路は、それしかありません。求人サイトに意味がないのではなく、届く相手が「いま探している方」に限られているということです。止めるのではなく、1の経路を別に1つ持つ、という足し算で考えます。
Q3. 知名度を上げるには、広告費が要るのではありませんか。
全国に知られる必要はありません。必要なのは通勤できる範囲の方に知っていただくことだけです。範囲が狭いぶん、手元に残る形のもの、たとえば読み物や配れるものを地域へ届ける方法が取れます。全国区の知名度とは、必要な費用の桁が違います。
Q4. 人手不足が原因ではないのでしょうか。
働ける方がその地域からいなくなったのかどうかは、統計で確かめられます。多くの地域では、いなくなったのではなく、御社を知る機会が無かったという形で止まっています。人手不足を原因に置くと打ち手が消えますが、1に置き換えると打ち手が出ます。
Q5. 効果が出るまで、どのくらいかかりますか。
1は、届けた相手がご自分で探しはじめる日まで待つことになります。何か月先になるかは決められません。前田機械さまの場合は配布から10日で最初のお申し込みがありましたが、これは早いほうの例で、すべての会社さまに当てはまる期間ではありません。ですから、いま探しておられる方に届く経路と併せて持つのが現実的です。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社から通える範囲に住んでおられる方が、御社の名前を聞いたことがあるとしたら、それはどこで聞かれたものでしょうか。
思い当たる場所がひとつも無いようでしたら、そのことをご相談のときにお聞かせください。求人の出し方ではなく、その場所をどこに作るかから一緒に考えます。
探していない方の日常に、働く姿を先に置いています。採用マンガプロジェクトを見る
地元の方は、御社を知らないのではありません。知る機会が、まだ無かっただけです。
前田機械さまでお作りしたのは、初日に遅刻した新人の話、説明どおりに行かなかった日の話、納期に追われた日の話の3話です。第3話では、失敗を申し出た新人に先輩がこう返します。「ええ判断や。隠すより100倍マシや」。求職者の方が知りたいのは、制度があるかどうかではなく、そのとき自分がどう扱われるかです。不安はひとつではありませんので、物語をつないでお届けします。
御社の場合はどの不安から描くとよいか、ご相談に乗ります。30分ほどお時間をいただければ、その場で1話目の見当までお出しします。相談してみる
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