
「人手不足ですから、うちのような会社に来る人はいませんよ。求人は出しています。媒体も変えました。それでも応募がありません。もう、人がいないということなのでしょうね」
人がいない、と決めてしまう前に、ひとつだけ確かめたいことがあります。その方たちに、御社を知る機会があったかどうかです。求人が届くのは、いま仕事を探している人だけです。探していない人の目には、そもそも入りません。
先に、判断の助けになる数字をひとつ置きます。マイナビの新卒調査(2027年卒の大学生・大学院生2,800名・2026年3月20日から4月5日)では、地元(Uターンを含む)で働きたいと答えた方が58.7パーセントで、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりの増加でした。新卒を対象にした調査ですから中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、地元で働きたい人がいない、という前提だけは、少なくとも成り立ちません。
以下、なぜ求人を出しても届かないのかを公表されている調査で確かめたうえで、探しはじめる前の方に何を届けるかを順に並べます。
1. 求人が届くのは、いま探している人だけです
求人サイトもハローワークも、人を探す側と仕事を探す側が出会う場所です。よくできた仕組みですが、前提がひとつあります。相手がその場所に来ていることです。
いま仕事を探している人は、働いている人全体から見れば一部です。残りの大多数は、いまの職場で働いています。転職を考えていないわけではなく、まだ探しはじめていないだけです。この方たちは求人を見ません。媒体を変えても、掲載の順番を上げても、見ていない人には届きません。
応募が来ないとき、原因は2つに分かれます。ひとつは、見た人が応募しなかった。もうひとつは、そもそも見られていない。前者なら求人の中身を直す話になります。後者は、求人をいくら直しても変わりません。地方や近隣の採用で起きているのは、多くが後者です。
2. 知らないのではなく、知る機会が無かった
ここが、私たちがいちばんお伝えしたいところです。地元の方は、御社を知らないのではありません。知る機会が、これまで無かっただけです。
先ほどのマイナビの新卒調査には、もうひとつ手がかりがあります。地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0パーセントでした。求人広告でも、説明会でも、検索でもありません。日常の会話です。
つまり、知られている会社は、探される前から人の生活のなかに置かれています。逆に言えば、置かれていない会社は、どれだけ立派な求人を出しても、探しはじめた一瞬しか接点がありません。
3. 探しはじめる前に、日常のほうへ置く
やることは単純です。探している人が集まる場所に出すのではなく、探していない人の日常のほうへ置きます。
- 通える範囲を決める。全国ではなく、自転車と車で通える距離に絞ります。
- その範囲の家庭に届く形にする。郵便受け、地域の掲示、取引先、学校、家族の手元。
- 読まれる形にする。求人票の体裁ではなく、読み物として最後まで読める形にします。
- 働く姿を見せる。条件ではなく、誰と、どんな一日を過ごすのかを見せます。
3番と4番が効きます。求人票は、探している人には読まれますが、探していない人は読みません。読ませるものではなく、読みたくなるものにする必要があります。
4. 条件を並べても、大きい会社に勝てません
給与、休日、手当。これらは比べられる項目です。比べられる土俵に上がると、数字の大きいほうが勝ちます。中小企業がここで勝負すると、たいてい負けます。
一方で、比べられないものがあります。上司がどんな人か。分からないことを聞ける空氣があるか。失敗したときにどうなるか。有給をどう取っているか。10年後に何ができるようになっているか。この5つは、求人票には書けません。書いても伝わりません。
働く姿がありありと想像できるかどうか。応募するかしないかは、最後はここで決まります。だから私たちは、条件の比較ではなく、入ってからの不安と、その受け止め方を物語として見せる形をお勧めしています。
5. 応募がゼロだった会社が、10日で見学の応募を受けた例
大阪市港区で大型金属の精密切削機械加工を手がける前田機械株式会社さまは、求人サイトに掲載しても応募が1件も無い状態が続いていました。そこで、求人媒体ではなく、地域へ配る形に切り替えました。会社で働く姿を採用マンガにして、通える範囲の地域へ届けました。
配布から10日で、工場見学の応募がありました。その方は採用に至り、現在は第2弾を継続して運用されています。倍率でもパーセントでもありません。ゼロだったところに1件が生まれた、という話です。
起きたことは単純です。求人を探していなかった方の手元に、働く姿が届きました。それだけです。
よくいただくご質問
人手不足は事実ではないのですか。
事実です。働き手の数そのものが減っていることは、否定しません。ここで申し上げているのは、通える範囲にいる方のうち、御社を知る機会があった方が何人いるか、という別の問いです。母数が減っていることと、母数に届いていないことは、分けて考える必要があります。
求人広告は止めたほうがよいのですか。
止める必要はありません。いま探している方には必要な入口です。ただ、そこだけに予算を置いている限り、探しはじめた一瞬しか接点を持てません。探しはじめる前に置く手を、並べて持つことをお勧めします。
どのくらいの範囲に配ればよいのですか。
まず通勤圏です。自転車と車で無理なく通える距離に絞ります。範囲を広げるほど1軒あたりの密度が下がり、何度も目にしていただく機会が減ります。狭く、繰り返すほうが届きます。
すぐに応募が来ますか。
来ることもありますし、時間がかかることもあります。前田機械さまは10日でしたが、これは1件の例であって、必ずそうなるという話ではありません。探していない方に届ける手ですから、その方が探しはじめたときに思い出していただけるかどうかが本体です。
マンガでなければいけませんか。
いいえ。条件ではなく働く姿を、最後まで読める形で届けられるなら、手段は問いません。私たちがマンガを使うのは、読む前に目に入り、読み物として最後まで読まれやすいからです。
まとめ
人手不足だから採用できない、と決める前に、確かめたいことがひとつあります。通える範囲にいる方に、御社を知る機会があったかどうかです。
地元の方は、御社を知らないのではありません。知る機会が、これまで無かっただけです。求人は、探しはじめた方にしか届きません。探しはじめる前の日常のほうへ、働く姿を置いてください。順番が変わるだけで、届く相手の数が変わります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
いま御社にご応募がないのは、通える範囲に働ける方がいないからでしょうか。それとも、その方たちが御社をまだご存じないからでしょうか。
どちらか分からない、とお感じでしたら、そのままご相談のときにお聞かせください。人を増やす話ではなく、知る機会を作る話から始めます。
探していない方の日常に、働く姿を先に置いています。採用マンガプロジェクトを見る
辞めた理由で採ろうとすると、条件の話になります。選んだ理由で採ろうとすると、仕事の中身を見せる話になります。
前田機械さまでお作りしたのは、初日に遅刻した新人の話、説明どおりに行かなかった日の話、納期に追われた日の話の3話です。第3話では、失敗を申し出た新人に先輩がこう返します。「ええ判断や。隠すより100倍マシや」。求職者の方が知りたいのは、制度があるかどうかではなく、そのとき自分がどう扱われるかです。不安はひとつではありませんので、物語をつないでお届けします。
御社の場合はどの不安から描くとよいか、ご相談に乗ります。30分ほどお時間をいただければ、その場で1話目の見当までお出しします。相談してみる
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