
「うちは地方の会社です。求人を出しても、応募が来ません。若い方は都市部へ出ていかれますし、通える範囲にそもそも人がいないのではないかと思っています。地方だから難しい、ということなのでしょうか」
地方だから難しい、ということではありません。難しさの正体は距離ではなく、通える範囲にお住まいの方に、御社を知っていただく機会がまだ無かったことです。求人の画面は、すでに探しはじめた方にしか開かれません。探しておられない方は、地方であっても都市部であっても、その画面をご覧になっていません。
以下、「地方だから」という言葉の中に混ざっている3つの別々のことを分けたうえで、公表されている調査と、弊社が実際に伴走した現場の記録を並べます。
1. 「地方だから」の中には、性質の違う3つが混ざっています
採用がうまくいかないときに「地方だから」とひとことで言われるものを分けると、たいてい次の3つになります。
- 通える範囲にお住まいの方の数そのものが少ない、という数の話
- 給与や休日が条件として並べられると、規模の大きい会社に分がある、という比べられ方の話
- その範囲にお住まいの方に、そもそも御社が知られていない、という知られ方の話
この3つは、打てる手がまったく違います。1つ目は御社の努力では動きません。2つ目は、同じ土俵に立ち続けるかぎり縮まりません。動かせるのは3つ目です。そして応募が来ない理由の多くは、実は3つ目に集まっています。
2. 数の話は、数えてから判断していただきたいのです
「人がいない」とお感じになったとき、その範囲に何人おられるかを数えたうえでおっしゃっている会社さまは、多くありません。市町村の人口ではなく、御社まで通える時間で区切った範囲に、何世帯あるか。そこに働いておられる方が何人いらっしゃるか。
数えていただくと、たいていは「思っていたより多い」という結果になります。なぜなら、いま御社が相手にしておられるのは、そのうち「今月、求人を探した方」だけだからです。分母は、求人を探した方ではなく、通える範囲にお住まいの方の全員です。人手不足だから採用できないのかという問いも、ここで一度止まります。
3. 条件が横並びになる場所に立ち続けると、規模で決まります
求人サイトもハローワークも、勤務地、給与、休日、雇用形態が同じ形式で並びます。並んだ状態で読まれるのは条件です。条件で比べられる勝負は、体力のある会社が有利になります。地方であることが不利なのではなく、条件で比べられる場所に立ち続けることが不利なのです。
ですから、求人票の文面や写真を直す仕事は、探しておられる方の中での見え方を動かす仕事です。これは無駄ではありませんが、応募の母数そのものは動きません。ハローワークに出した求人が埋もれるのも、同じ構造の中で起きています。
4. 選ぶ理由と、辞める理由は別のものです
給与や休日は、足りなければ辞める理由になります。けれども、十分にあるからといって、それだけで選ぶ理由にはなりません。人が会社を選ばれるときに効いているのは、そこで誰と、どんな仕事を、どのように進めているのかという中身のほうです。
そして通勤時間は、地方の会社にとって数少ない、規模で負けない条件です。片道20分で帰れることは、片道90分の大企業には作れません。ここは比べられても負けない場所です。ただし、知っていただかないかぎり、比べていただくことすらできません。
5. 地元の方は、御社を知らないのではありません。知る機会が無かっただけです
マイナビの2027年卒を対象とした調査(調査期間2026年3月20日から4月5日、有効回答2,800名)では、地元での就職を希望する方の割合は58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加に転じています。地元で働きたいという氣持ちのある方は、減っているどころか増えています。
同じ調査で、地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。求人媒体ではありません。人から人へ伝わっています。なお、これは新卒の方を対象とした調査ですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、知られ方の入口が求人媒体の外にあるという点は、中途採用の現場で見聞きすることとも重なります。
つまり、地元の方は御社を知らないのではなく、知る機会がまだ無かっただけです。求人を出しておられなかったからではありません。求人は、探しておられる方にしか届かないからです。
6. 通える範囲だからこそ、繰り返し届けられます
全国に知られる必要はありません。通える範囲に絞れば、届ける相手は数えられる人数です。その範囲へ、働いている場面が伝わるものを繰り返し届けることは、地域に根を張っておられる会社のほうがむしろ得意です。
大阪市港区の前田機械株式会社さまは、求人サイトに掲載しても応募が無い状態から、社員の働く姿を描いた採用マンガを地域へ配布されました。配布から10日で工場見学のお申し込みが入り、採用に至っています。現在は第2弾を継続して運用しておられます。配ったのは全国ではなく、通える範囲です。
Q1. 都市部に本社を移したほうが、採用は楽になりますか。
応募の数は増えることがあります。ただし、比べられる相手も増えます。条件で並ぶ場所では、規模の大きい会社が有利になるという構造は変わりません。移る前に、いまの通勤圏で知られているかどうかを確かめていただくほうが先です。
Q2. 給与を上げれば、地方でも応募は来ますか。
下限を下回っていれば上げる必要があります。ただ、上げたぶんだけ応募が増えるという関係にはなりません。給与は足りなければ辞める理由になりますが、それだけでは選ぶ理由になりにくいためです。
Q3. 知っていただくといっても、何を伝えればよいのでしょうか。
条件ではなく、働いている場面です。朝どこに集まり、誰とどんな会話をして、何を作っておられるのか。遅刻したときにどうなるのか。有給をどう取っておられるのか。求人票に書きにくいことほど、知りたいと思われています。
Q4. 地元に配っても、いま探している人には当たらないのではないですか。
当たりません。当てるのは、いま探しておられる方ではなく、これから探す方です。その方が探しはじめた日に、御社の名前がすでに頭の中にあるかどうかが分かれ目になります。これは求人を出してから間に合わせることができません。
Q5. まず何を1つやればよいですか。
直近で入社された方に、御社の名前をどこで初めてご覧になったかを聞いてみてください。求人媒体以外の答えが出てくれば、そこがすでに効いている入口です。全員が求人媒体とお答えになるなら、いまの応募はすべて、その月の掲載で買ったものだということになります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社まで通える範囲にお住まいの方のうち、御社が何をしている会社かをご存じの方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
ほとんどおられないとお感じでしたら、そのことをご相談のときにお聞かせください。求人の出し方ではなく、求人をご覧いただく前の置き場所から一緒に考えます。
探していない方の日常に、働く姿を先に置いています。採用マンガプロジェクトを見る
地元の方は、御社を知らないのではありません。知る機会が、まだ無かっただけです。
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