
「採用にかかるお金が、年々高くなっています。求人広告の掲載料も、人材紹介の手数料も、去年より上がりました。それでも応募は増えていません。採用コストが高いのは、うちの給与や知名度のせいでしょうか」
給与や知名度のせいではありません。高くなっているのは1件あたりの単価ではなく、同じ応募を毎月もう一度買い直しておられる、その回数のほうです。買い直しが続くかぎり、単価をどれだけ値切っても、1年の合計は下がりません。
以下、御社の採用費を2つに分けて数えていただく式と、買い直しが止まらない構造、そして止まった会社さまの記録を並べます。相場の金額は書きません。公表された一次統計が無いものを、それらしい平均値として書くことはしないためです。
1. 「1人あたりいくら」で見ると、下げどころが見えなくなります
採用コストを1人あたりの単価で見ると、比べる相手は媒体の料金表になります。そうすると出てくる打ち手は、安い媒体を探す、掲載の枠を小さくする、手数料を交渉する、の3つに絞られます。どれも数パーセントは動きますが、構造は変わりません。翌年も同じ交渉をすることになります。
見ていただきたいのは単価ではなく、去年払ったお金のうち、今年も同じように払わなければならないものが、どれだけあるかです。
2. 去年の採用費を、2つに分けて数えてみてください
領収書と請求書を1年分並べて、次の2つに仕分けていただきます。
- 流れていくお金。支払いを止めた月に、効果もゼロへ戻るもの。求人広告の掲載料、スカウトの送信料、人材紹介の成功報酬、合同説明会の出展料、求人票の更新作業にかかった人件費。
- 残るお金。払ったあとも手元に残り、翌月も翌年も使えるもの。会社案内、働いている場面の写真や映像、社員の方の声、見学を受け入れる段取りそのもの、地域へ配れる読み物。
仕分けが終わったら、流れていくお金を合計で割ってください。これが御社の「買い直し率」です。9割を超えているようでしたら、御社の採用は毎年ゼロから買い直す形になっています。単価が上がれば、そのまま総額が上がります。
この数え方には、平均も相場も要りません。御社の請求書だけで出ます。そして出た数字は、他社と比べるためではなく、来年どこを変えるかを決めるために使います。
3. 買い直しが止まらないのは、広告が「いま探している方」にしか届かないからです
求人広告は、求人を探しておられる方の画面にだけ出ます。探しておられない方の画面には、そもそも表示されません。そして掲載を止めた月には、探しておられる方の画面からも消えます。翌月また応募が要るなら、また買います。これが買い直しの正体です。
この構造は、求人広告を止めた月に応募もゼロに戻るという現象として、多くの会社さまが毎年ご経験になっています。効果が消えたのではありません。買っていたものが、もともと月極めのものだったということです。
4. 単価が上がり続けるのは、全員が同じ場所に並んでいるからです
求人サイトもハローワークも、勤務地、給与、休日、雇用形態が同じ形式で並びます。並んだ状態で読まれるのは条件です。条件で比べられる場所は、体力のある会社が有利になります。
そして採りたい会社が増えるほど、その場所の掲載料は上がります。つまり単価の上昇は、御社の事情ではなく、その場所の性質です。ハローワークに出した求人が埋もれるのも、地方だから難しいと感じられるのも、同じ場所で起きています。値段を下げる交渉より、立つ場所を1か所増やすほうが効きます。
5. 下げられるのは単価ではなく、探しはじめる前の接点です
マイナビの2027年卒を対象とした調査(調査期間2026年3月20日から4月5日、有効回答2,800名)では、地元での就職を希望する方の割合は58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加に転じています。同じ調査で、地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。求人媒体ではありません。
これは新卒の方を対象とした調査ですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、知られ方の入口が求人媒体の外にあるという点は、中途採用の現場で見聞きすることとも重なります。
地元の方は、御社を知らないのではありません。知る機会が、まだ無かっただけです。探しはじめる前に御社の名前が頭の中にある方が1人でも増えれば、その方の応募は、その月の掲載で買ったものではなくなります。買い直し率は、そこから下がりはじめます。
6. 残る形にすると、止めた月にゼロへ戻りません
大阪市港区の前田機械株式会社さまは、求人サイトに掲載しても応募が無い状態から、社員の働く姿を描いた採用マンガを地域へ配布されました。配布から10日で工場見学のお申し込みが入り、採用に至っています。現在は第2弾を継続して運用しておられます。
ここで作られたものは、配った翌月に消えません。手元に残り、見学のときにもお渡しでき、次の配布にも使えます。流れていくお金ではなく、残るお金の側に入ります。採用費の総額を下げるというのは、支払いを我慢することではなく、この側の割合を少しずつ増やしていくことです。
Q1. 求人広告を今すぐ止めても大丈夫でしょうか。
止めないでください。いま探しておられる方に届く経路は、それしかありません。止めるのではなく、残る側を1つ作ってから、その効き具合を見て配分を移していく順序をおすすめします。順番を逆にすると、応募が途切れます。
Q2. 採用単価の相場を知りたいのですが。
職種、地域、採用手法で大きく変わるため、御社の判断に使える一次統計はありません。相場の数字を基準にすると、高いか安いかは分かっても、来年どこを変えるかは決まりません。上の2の仕分けで出る御社自身の買い直し率のほうが、判断に使えます。
Q3. 採用代行に任せれば、コストは下がりますか。
運用の手間は下がります。ただし下がるのは社内の工数で、流れていくお金の割合は変わりません。任せた分だけ、御社の中に知見と素材が残りにくくなる面もあります。何を外に出し、何を中に残すかを決めてからお使いになるほうが、後で効きます。
Q4. 残る側を作るといっても、何から作ればよいのでしょうか。
働いている場面です。朝どこに集まり、誰とどんな会話をして、何を作っておられるのか。段取りを教わるときの雰囲氣、失敗したときにどうなるのか、有給をどう取っておられるのか。求人票に書きにくいことほど、知りたいと思われています。条件は書かなくても求人票に載っています。
Q5. 効果が出るまでに、どのくらいかかりますか。
買い直しの側は掲載した日から動きます。残る側は、届けた相手がご自分で探しはじめる日まで待つことになります。ですから片方だけにするのではなく、両方を同時に持つのが現実的です。前田機械さまの場合は、配布から10日で最初の見学のお申し込みがありました。これは早いほうの例で、すべての会社さまに当てはまる期間ではありません。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
去年1年の採用費のうち、支払いを止めても手元に残るものは、何割くらいあったでしょうか。
ほとんど残っていないとお感じでしたら、そのことをご相談のときにお聞かせください。掲載の値段ではなく、来年も使えるものをどこに作るかから一緒に考えます。
探していない方の日常に、働く姿を先に置いています。採用マンガプロジェクトを見る
地元の方は、御社を知らないのではありません。知る機会が、まだ無かっただけです。
前田機械さまでお作りしたのは、初日に遅刻した新人の話、説明どおりに行かなかった日の話、納期に追われた日の話の3話です。第3話では、失敗を申し出た新人に先輩がこう返します。「ええ判断や。隠すより100倍マシや」。求職者の方が知りたいのは、制度があるかどうかではなく、そのとき自分がどう扱われるかです。不安はひとつではありませんので、物語をつないでお届けします。
御社の場合はどの不安から描くとよいか、ご相談に乗ります。30分ほどお時間をいただければ、その場で1話目の見当までお出しします。相談してみる
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