
「マンガは消費者向けの商売のものではないですか。うちは法人相手なので、たぶん合いません」
結論から申し上げます。BtoBでマンガが効くのは、絵が目を引くからではありません。比べられる土俵が、条件から物語へ移るからです。同じ会社が、同じ製品で、選ばれ方だけを変えられます。
法人の取引では、相手は必ず複数社を並べて見ます。並べた瞬間に効くのは、価格、納期、実績年数、規模。この4つで比べられている限り、有利なのは大きいほうです。ここから抜けるために、順番を変える。それがBtoBでのマンガ活用の中身です。
1. 条件で比べられている限り、勝つのは大きい会社
まず、うまくいっていない状態を正直に書きます。
会社案内も、展示会のパネルも、求人票も、たいていは同じ形をしています。創業年、拠点、設備、取扱品目、そして「品質と信頼」。書かれていることに嘘はありません。ただ、同業他社の資料と並べたとき、違いが見つけられません。
読み手は、違いが見つけられないとき、いちばん分かりやすい指標に戻ります。価格と規模です。中小企業がこの土俵に立ち続ける限り、比較で勝てる場面は限られます。
2. 物語にすると、比べる軸が「この会社と働きたいか」に変わる
マンガにして変わるのは、情報の量ではありません。読み手の中で立ち上がる問いが変わります。
条件表を読んでいる人の問いは「どこが安いか」です。物語を読んだ人の問いは「この人たちと組んで大丈夫か」に変わります。後者は、規模では決まりません。中小企業が勝てる土俵は、こちら側にあります。
そのために必要なのは、絵の巧さより順番です。読み手の困りごとから始め、回り道を通り、解決の道具を出し、最後に解決された後の日常を見せる。販促物を起承転結に組み替える手順は、そのまま法人向けの資料にも使えます。
3. 型1 展示会。名刺の枚数ではなく、その場の熱を残す
1つ目は展示会です。目的は、名刺を集めることではありません。
アペルザの展示会調査(n=413)では、来場者は1日に平均17社のブースを訪問し、持ち帰られた資料の94.9%は保管されないという結果が出ています。一方で、訪問後に56.6%が検討を始めているとも出ています。つまり、その場で心が動いた相手だけが後に残ります。
ところが現場では、リスト集めがゴールになりがちです。集めた後にテレアポで追えばいい、という前提です。データだけ取られても、当日その場で盛り上がっていなければ、後の連絡は無視されます。展示会の成果をどう測るかという問いは、当日の熱をどう作ったかという問いと同じものです。
マンガはここで、足を止める理由と、話しかける口実の両方になります。パネルの前で読み終えた人は、すでに文脈を知った状態で立っています。
4. 型2 採用。知らなかったのではなく、知る機会がなかった
2つ目は採用です。ここでいちばん申し上げたいことを、先に書きます。
地元の人は、御社を知らないのではありません。知る機会がなかっただけです。求人は、いま探している人にしか届きません。探していない人の日常に、先に置いておく必要があります。
条件で募集をかけると、比較の相手は大企業になります。給与も休日も設備も、衛生要因と呼ばれる部分では規模の差がそのまま出ます。勝負になるのは、働く姿をありありと想像できるかどうかです。遅刻したときに何と言われるのか、有給は実際に取れているのか、3年後に何を任されているのか。ここが見えていないことを、多くの求職者はブラックボックスと感じています。
マイナビの2027年卒調査(n=2,800、2026年3月20日から4月5日)では、地元就職を希望する学生は58.7%で、4年ぶりに増えています。潜在層が地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。これは新卒を対象にした調査で、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、人づての話が入口になっているという構図は、入社後に定着するかどうかを考えるうえでも見過ごせません。
5. 型3 海外。日本文化が好きな人の側から見る
3つ目は海外です。内需が細っていく以上、外を見るのは攻めではなく生存戦略になりました。
弊社はフランスを中心に、JAPAN EXPO等へ累計11回出展しています。現地で毎回感じるのは、日本の文化そのものへの好意が、こちらの想像よりはるかに強いということです。マンガは、その好意にいちばん近いところにある入口です。製品の説明を翻訳するより、物語のほうが先に届きます。
出展を検討されている方には、まず開催時期と規模と出展区分の事実からお伝えしています。マルセイユで冬に開かれる展示会のように、パリ以外の地方都市にも場は広がっています。
6. 現場で起きたこと
実際の場面を1つだけ書きます。
アイケイケイさまでは、採用の説明会に集まるのは5名ほどだろうと見込んでいました。当日、参加されたのは28名でした。前年との比較でも、倍率の話でもありません。見込みと実績の差として、そのまま書いています。
変えたのは、案内の順番です。会社の説明から始めるのをやめ、参加した人がその日に何を持ち帰れるのかを先に置きました。派手なことは何もしていません。
7. 3つの型に共通する順番
展示会も採用も海外も、やっていることは同じです。順番だけを守ります。
- 相手の困りごとから始める。自社の紹介を1行目に置かない。
- 回り道を書く。調べた、相談した、うまくいかなかった、を省略しない。
- 解決の道具として、初めて自社を出す。4つのうち3番目です。
- 解決された後の日常を、場面で見せる。数字ではなく、その人の一日で書く。
- 渡す相手を1人に決めてから作る。全員に当てはまる文章は、誰の手も止めません。
この5つは、紙でも動画でもマンガでも変わりません。マンガが有利なのは、読み手が身構えずに最後まで進みやすいという一点だけです。
8. どこから始めるかの目安
3つの型のうち、どれから手を付けるかは、いま最も痛いところで決めて構いません。
- 来月に展示会がある。展示会の型から。当日その場で読み切れる分量に絞ります。
- 求人を出しても応募が来ない。採用の型から。求人票ではなく、働く一日を描きます。
- 国内の売上が頭打ち。海外の型から。まず現地の場の事実を集めるところからです。
3つを同時に始める必要はありません。1つで型ができれば、残りは同じ順番の使い回しになります。
よくあるご質問
Q1. 法人向けの商材が地味で、マンガにする題材がありません。
題材は製品ではなく、お客さまが困っていた場面です。地味な商材ほど、困りごとは具体的で描きやすくなります。何が売れるかではなく、誰の何が止まっていたかから探してください。
Q2. 決裁者は複数います。マンガで全員を動かせますか。
全員は動きません。狙うのは、社内で最初に困っている1人です。その人が上司に説明できる形になっていれば足ります。物語は、社内を通す説明の言葉としても使われます。
Q3. 効果はどのくらいで出ますか。
配って翌週に問い合わせが並ぶ、という性質のものではありません。前に置いておいて、相手が困ったときに思い出される形です。数か月単位で見てください。短期の反応だけで判断すると、効いている途中で止めてしまいます。
Q4. 社内に絵の分かる人間がいません。
必要なのは絵の判断ではなく、困りごとの証言です。営業やベテランの方が現場で言われた言葉を、そのまま10個ほど集めていただければ、そこから組み立てられます。
Q5. 一度作ったら、それで終わりですか。
1本で終わると、読まれた記憶も1回で終わります。続きがあると、次を待つ関係になります。前田機械さまも第2弾を継続して運用されています。作ることより、続けることのほうが効きます。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社の会社案内と、同業他社の会社案内を並べて置いてみてください。社名のロゴを隠したとき、どちらが御社のものか、ご自身で見分けられますか。
見分けがつかなかったなら、直すのは表紙ではありません。その2冊をお持ちください。どこで違いが消えているかを、一緒に見つけます。
渡す相手と渡す順番から一緒に組み立てています。マンガでできることを見る
条件で並べられている限り、選ぶ理由は規模になります。物語で読まれたとき、初めて会社の名前が残ります。
参考実績
参考ブログ
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