
「フランスで日本のマンガや文化の催しに出るなら、パリの7月。冬の間に動きたい会社は、どこへ行けばいいのだろう」
マルセイユです。パリのジャパンエキスポと同じ主催者(SEFA EVENT)が、南仏マルセイユで冬にもう1回開いています。直近の回は2026年2月27日から3月1日、会場はマルセイユ・シャノ(Parc Chanot)、16回目で350のブースが並びました。この記事は、2026年8月19日に主催者の公式サイト(japan-expo-sud.com)で確認できた事実だけを並べます。出展のお誘いはいたしません。
1. パリと同じ会社が、南仏でもう1回開いています
公式サイトのフッターには「SEFA EVENT」とあります。パリ北郊ヴィルパントで7月に開かれるジャパンエキスポと、同じ運営です。名称は長く「ジャパンエキスポ・シュッド(Japan Expo Sud、南のジャパンエキスポ)」でしたが、公式サイトの現在の表記は「Japan Expo Marseille」です。ドメインは japan-expo-sud.com のまま変わっていません。
これは出展を検討される方には、意外に大きい点です。申込の窓口も、会場の作りも、来場者の性格も、パリの回とひと続きだということです。リヨンのジャパンタッチは運営会社が別(ASIEXPO EVENTS/GL events)ですし、パリ近郊のエピタニメは30年以上ずっと学生団体の運営です。フランスの催しは、成り立ちがそれぞれ違います。
2. 公式が出している数字は、これだけです
2026年の回について、主催者が公式サイトの記事で挙げている数字は次の4つです。
- ブース 350
- 催しの本数 180
- 招待ゲスト 60名超
- 体験企画 約50
正直に申し上げます。来場者数は、公式サイトのどこにも出ていません。地元メディア(France 3 Provence-Alpes-Côte d’Azur)は、主催者が3日間で4万人の来場を見込んでいると伝えていますが、これは開幕前の見込みであって、終わったあとの実績ではありません。社内の稟議に数字を書かれるときは、この違いを落とさないでください。
比較の目安として、パリの回は2026年の第25回で222,048人、出展者1,016、うち企業642、面積154,000平方メートルと発表されています。マルセイユはその5分の1以下の規模です。小さいことは、必ずしも不利ではありません。会場が小さいほど、1つのブースの前に人が立ち止まっている時間は伸びます。
3. 会場は、見本市専用の施設です
会場のパルク・シャノは、マルセイユ市8区、旧港から南へ下ったプラド地区にある大型の見本市会場です。学校の校舎や市民会館を借りて開く催しとは、設備がまるで違います。什器を持ち込み、電源を引き、椅子を置いて商談する。その前提で作られた建物です。
会期中の時間は、通常のチケットで9時30分開場、17時30分最終入場、18時閉場。上位のチケットはこれより30分ほど早く入れます。1日あたり8時間半。3日間で25時間半が、御社のブースが人前にある時間の総量です。
4. 出展料と申込の入口は、問い合わせフォーム1本です
公式サイトの「出展者になる(Devenez exposant)」のページに書かれている手順は、驚くほど短いものです。
- 問い合わせフォームを開く。
- 「依頼の種類(Type de demande)」で「Exposant(出展者)」を選ぶ。
- 連絡先と、自社が何をしている会社かの説明を書いて送る。
対象として明記されているのは、「アジアと関わりのある企業、専門団体、協会、ファンジン」です。区画を先着で買う形ではありません。主催者が内容を見て、申込書類を送るかどうかを決める形です。
時間の目安も公式に書かれています。フォームへの返信は72時間以内(休暇期間を除く)。出展者の登録は、通常は開幕の1か月前に締め切られます。ただし区画が残っていれば、それ以降も受け付けると添えられています。
料金は、公式サイトに一切出ていません。パリの回も同じで、価格表を公開せず個別に案内する運営です。パリのジャパンエキスポの出展料を調べた記事でも同じ結論に行き着きました。ここに書けない数字を、推測で埋めることはいたしません。
5. 決めごとが細かいのは、安全のためです
出展者向けのFAQには、日本の展示会に慣れた方ほど見落としやすい条件が並んでいます。とくに3つ。
- 布は難燃認証(M1等級)が要る。来場者が触れられるテーブルクロス、布製品、装飾は、M1等級の認証を受けたものでなければなりません。日本から持ち込んだ暖簾やタペストリーが、そのままでは使えない可能性があります。
- 構造物は45日前までに承認。ブース内に高さのある造作を組む場合、開幕の45日前までに安全責任者の承認が必要です。
- 区分によっては電源が引けない。趣味系の区分(Loisirs)は技術サービスの対象外で、電源が使えません。出展者バッジも全体で6枚までです。
読むと窮屈に思えますが、逆に言えば2月に申し込んで4月に慌てる類の失敗は、書いてある通りに動けば起きないということです。
6. パリの回と、どちらに出るか
この2つは、時季がきれいに離れています。
- マルセイユ 2月末から3月初めの3日間。
- パリ 7月の4日間。
ですから「どちらか」ではなく、同じ年度の中で2回、間隔を空けて出られるという読み方ができます。2月に小さく試して、7月に本番を組む。日本の年度で言えば、期末に試作を持って行き、期初に本腰を入れる形です。
なお2027年の回は17回目にあたり、2月から3月の開催が見込まれていますが、2026年8月19日の時点で、公式サイトに日程は出ていません。前年の日付で社内の予定を先に組まないほうが安全です。
7. いちばん多いのは「1回出て、やめる」です
私(松山)は、デジタルコンテンツ協会のデジタルコンテンツ白書でフランスの章を担当していました。白書2013には、2012年度のフランスで日本のマンガや大衆文化を扱う催しが年間58件あったと記録されています(出典はNautiljon)。これは2012年度の数字であって、現在の件数ではありません。同じ白書に、数年前まではパリ開催が大半だったが、フランス全土へ広がったとも書きました。マルセイユの回は、その流れのなかで大きく育った1つです。
その白書で私は、山陰国際観光協議会(島根県・鳥取県と各市で構成)が2012年から2013年にかけてジャパンエキスポへ連続出展した事例を現地で取材しました。そのとき書いたのは、成功の話だけではありません。地方公共団体の出展は、1回で成果が出ずにあきらめる。担当者が代わって情熱が失われる。続かない理由のほうを書きました。
海外の催しは、初回で名刺が集まる場所ではありません。2回目に「去年も来ていたね」と言われて、はじめて話が始まります。決めるべきは出るか出ないかではなく、2回目を誰が担当するのかです。
8. なぜ、持っていくものがマンガなのか
株式会社アンシャントマンは、フランスのJAPAN EXPO等のマンガ関連イベントに計11回出展してきました。持っていったのはパンフレットではなくマンガです。
理由は、現地の数字がそう言っているからです。フランスの日本マンガの販売部数は、2019年の1,900万部から2024年には3,590万部になりました(Journal du Japon)。映像産業振興機構の調査では、日本に興味を持ったきっかけの第1位がマンガ・アニメ・ゲームで、欧州では75%です。
つまりフランスでは、マンガは日本企業の説明を読ませるための工夫ではなく、相手がもともと好きなものです。会社案内は受け取っていただく努力が要りますが、マンガは向こうから手が伸びます。
350ブースの会場でも1,016ブースの会場でも、御社のブースの前を通る人数は、そう大きくは変わりません。変わるのは、通り過ぎた人が足を止めるかどうかだけです。
よくある質問
Q1. マルセイユの回とパリの回は、別の催しですか。
運営は同じSEFA EVENTです。開催地と時季と規模が違います。マルセイユは2月末から3月初めの3日間でブース350、パリは7月の4日間で2026年は出展者1,016でした。
Q2. 2027年の日程を教えてください。
2026年8月19日の時点で、公式サイトに2027年の日程は掲載されていません。17回目にあたり、例年どおりであれば2月から3月ですが、確定していないものを確定として社内資料に書かないほうが安全です。
Q3. 出展料はいくらですか。
公式サイトに公開されていません。問い合わせフォームから「Exposant」を選んで申請すると、主催者が内容を見たうえで案内する形です。推測の金額は、この記事には書きません。
Q4. 日本の会社でも出展できますか。
公式の記載は「アジアと関わりのある企業、専門団体、協会、ファンジン」で、国籍の制限は書かれていません。ただし申請制ですので、出展内容が催しの趣旨に合うかどうかは主催者が判断します。
Q5. 日本から持ち込んではいけないものはありますか。
持ち込み禁止品という形ではありませんが、来場者が触れられる布類はM1等級の難燃認証が必要と明記されています。暖簾、幕、テーブルクロスは、現地調達に切り替えるほうが確実な場合があります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社が海外の催しに出るとして、2回目に行く人の名前を、いま挙げられるでしょうか。
1回で終わる出展と、続く出展を分けるのはそこでした。いま海外向けにお使いの資料を1点お持ちください。それが人に付いているのか、仕組みに残っているのかを、一緒に読み解きます。
海外向けマンガの実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
出展先を決める前に、フランスに何種類の場があるのかを知っておく。
参考ブログ
参考実績
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