
「来期、海外の見本市に出てみようという話が社内で出ています。ジェトロの一覧を見ているのですが、どれを選べばよいのか分かりません。まず何から決めればよいのでしょうか」
出る見本市を選ぶのは、いちばん最後にしてください。先に決めるのは、現地で誰に会いに行くかです。会いたい相手が決まっていない状態で会場を選ぶと、出た後に何が起きても、それが良かったのか悪かったのか判断できなくなります。
先に、判断の助けになる数字をひとつ置きます。日本政策金融公庫総合研究所が2023年3月に中小企業3,790社へ行った調査では、海外展開を行っている企業は18.0パーセントでした。行っておらず関心もない企業が71.3パーセントです。つまり、出展を検討している時点で、御社はすでに少数の側にいます。競争相手が多いのではなく、前例が少ないという状態です。
以下、弊社が2006年から2015年までにフランスの催しへ11回出展して分かったことを、順にお示しします。
1. 海外見本市は、国内展示会と決める順番が違います
国内の展示会であれば、出る展示会を先に決めても取り返しがつきます。会場が近く、費用も限られ、次の回が半年後に来るからです。うまくいかなければ次で直せます。
海外の見本市は、この前提が成り立ちません。渡航と輸送と現地対応が入るため、一度の出展にかかる時間と費用の桁が変わります。次の回まで1年空きます。結果として、1回目の出展が最後の出展になる会社が出てきます。
だから順番を逆にします。会いたい相手を先に決め、その相手がいる場所として見本市を選びます。
2. 先に決めるのは、現地で誰に会いに行くかです
ここで決めるのは、国名でも業界名でもありません。会場でブースの前に立っていただきたい方が、どういう立場で、何に困っていて、何を持ち帰れば社内で話が進むのか。そこまでを言葉にします。
弊社がこれを申し上げるのは、海外では相手の前提が国内と違うからです。御社の社名も、業界での位置づけも、相手はご存じありません。国内の展示会で通じていた説明が、そのままでは通じません。誰に会うかを決めていないと、通じないことに現地で初めて氣づくことになります。
3. 出る見本市は、その相手がいる場所から選びます
会いたい相手が決まると、選ぶ基準が来場者数ではなくなります。見るのは、その相手が来ている場所かどうかです。
来場者数の大きい催しほど良い、とは限りません。弊社が2015年に出展したジャパンエキスポは、2022年に25万4,084人が来場した大きな催しですが、来場されるのは日本文化を好む一般の方が中心です。事業者どうしの商談を目的に出るのであれば、規模の小さい専門の見本市のほうが合う場合があります。どちらが良いかではなく、誰に会いに行くかで決まります。
ジェトロが出展を支援する見本市の一覧は、この段階で見てください。相手が決まった後であれば、一覧は選択肢の表として機能します。相手が決まる前に見ると、ただの候補の羅列になります。
4. ブースの前で何が起きるかを、出る前に決めておきます
海外の見本市では、言葉が通じにくい分、その場で何が起きたかが後に残る唯一の材料になります。名刺やリストだけを持ち帰っても、会期中に何も起きていなければ、帰国後の連絡で動く相手はほとんどいません。
弊社が国内で伴走した例を1つ挙げます。株式会社美華道さまの第2回鉄道技術展・大阪2026では、ブースで体験していただいた後にアンケートをお書きいただく形にしました。結果はアンケート459件、見積19件、すぐ商談に進める方が86件でした。数えるための作業を別に足したのではなく、その場で起きたことがそのまま記録として残る形にしています。
これは国内の事例です。ただし、その場で相手に何が起きるかを出る前に設計しておくという考え方は、海外でも同じです。むしろ言葉の壁がある分、絵や体験で伝わる形を用意しておく必要が高くなります。
5. 会期後にやることも、出る前に決めておきます
会期が終わってから何をするか考え始めると、時差と言語と繁忙期が重なって、たいてい止まります。出発前に、帰国後の2週間で誰に何を送るかまで決めておいてください。
ここで送るものは、会期中にその方と話した中身に触れているものにします。全員に同じ案内を送る形にすると、海外では特に開かれません。
6. 弊社がフランスで11回出展して分かったこと
弊社は2006年から2015年までに、ジャパンエキスポをはじめとするフランスのマンガ関連の催しへ11回出展しました。ジャパンエキスポ本体への出展はこのうち3回です。2015年には日本食のブースで5,000食を提供しました。
この11回で分かったのは、現地で強いのは説明ではなく、見て分かるものだということです。言葉が通じない相手に対して、絵は説明を省略します。弊社がマンガとキャラクターを軸にしているのは、この経験が元になっています。
だから弊社は、海外の見本市を1回の出展の準備としてではなく、前・中・後を回すプロジェクトとしてお受けしています。出る前に会う相手を決め、会期中にその方と何が起きるかを用意し、帰国後にその続きを届けます。そして、1回目で会えた方に2回目の出展でもう一度お会いするところまでを、最初の設計に入れておきます。
1回で結果を判断しないのは、分野が違っても同じです。採用の分野では、前田機械さまと第2弾の運用を続けています。1年目に分かったことを2年目の設計に入れる。海外の見本市も、そうして毎年少しずつ前へ進めるものだと考えています。
よくあるご質問
Q1.英語やフランス語ができる社員がいません。出られますか
出られます。ただし通訳を手配すれば済む、とは考えないでください。通訳が訳せるのは言葉であって、御社が何の会社かという前提ではありません。前提を絵や現物で伝える用意をしておくほうが、結果に効きます。
Q2.まず1回出てみて、様子を見るのでは駄目でしょうか
様子を見るために出ること自体は構いません。ただし、様子を見るという目的のままだと、何が分かれば成功なのかが決まりません。1回目でも、会いたい相手と、その方に何が起きれば次に進むのかは決めておいてください。
Q3.ジェトロの支援を使えば、準備はしてもらえますか
ジェトロの支援事業は、出展の枠や現地での手配を支える仕組みです。誰に会いに行くかという中身は、御社が決めるところです。弊社はこの中身のほうを伴走しています。
Q4.費用はどのくらい見ておけばよいですか
見本市によって幅が大きいため、弊社から相場として申し上げられる数字はありません。主催者の出展料は公表されていることが多いので、そこは一次情報をご確認ください。渡航・輸送・現地対応がその外側に乗ります。
Q5.マンガやキャラクターは、海外のどこに効くのですか
通路を歩いている方に足を止めていただくところと、言葉を介さずに何の会社かを伝えるところです。会期後に配る資料としてマンガを足しても、誰に会うかが決まっていなければ結果は変わりません。
その見本市で、御社はどなたに会いに行かれますか。
海外の見本市の前・中・後をどう組み立てるかは、国際マンガプロジェクトのページにまとめています。
ここでお伝えした国内の数字の出どころは、第2回鉄道技術展・大阪2026 株式会社美華道さまの実績ページにまとめています。
出る見本市を選ぶ前に、会いに行く相手を決めてください。順番を逆にすると、1回で終わります。
1回で終わらせないために
出る場所の選び方


