
来年のジャパンエキスポに出るかどうかを決める会議が、来週に迫っている。稟議の1行目に「来場者数」を書こうとして、手が止まる。ある記事は25万人、別の記事は23万人、主催者の発表は22万人台。どれを書いても「本当にそうなのか」と聞かれそうで、結局「大規模」とだけ書いて、数字の欄を空けたままにしている。
「ジャパンエキスポの来場者数は、どう推移していますか」
2026年(第25回・7月9日から12日)は、主催者の発表で延べ222,048人です。歴代最高は2023年の255,259人で、2024年に200,716人へ落ち、2025年と2026年は22万人台で止まっています。稟議には「4日間で延べ20万から25万人規模」と書き、単年の数字を出すときは必ず年を添えてください。数字が記事ごとに違うのは、速報値と、第三者の測定値と、主催者が会期前に見込んだ数の3つが、区別されずに流れているからです。
以下、1999年から2027年までの年表、数字が食い違う理由、伸びた時期と止まった時期、2026年の中身、2027年の予定、そして規模の数字を稟議にどう書くか、の順に書きます。
1. 1999年から2027年までの年表
来場者数は、いずれも主催者または第三者機関の発表による延べ人数です。1999年から2024年までは仏語版Wikipediaの各回の記述(2007年以降はInfora社の認証値と注記)、2023年から2025年の測定値はagoris.ioの出展者向けの解説(Infora社の数値を引用)、2026年はLivres Hebdo(2026年7月27日)、2027年は公式サイトで確認しました。空欄は、確認できる数字が無い年です。
| 年 | 回 | 開催日 | 会場 | 来場者(延べ) | 出展者 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1999 | 公式の回数には数えない | 6月12日 | パリ市内の学校 | 2,400 | 30 |
| 2000 | 第1回 | 6月24日から25日 | EPITA(ル・クレムラン・ビセートル) | 3,200 | 62 |
| 2000 | 第2回 | 12月8日から10日 | エスパス・シャンペレ(パリ) | 8,000 | 49 |
| 2001 | 第3回 | 6月29日から7月1日 | エスパス・オステルリッツ(パリ) | 12,000 | 54 |
| 2002 | 第4回 | 7月5日から7日 | CNIT(ラ・デファンス) | 21,000 | 69 |
| 2003 | 第5回 | 7月4日から6日 | CNIT(ラ・デファンス) | 29,000 | |
| 2004 | 第6回 | 7月2日から4日 | CNIT(ラ・デファンス) | 41,000 | 131 |
| 2005 | 開催なし | 会場のCNITが手狭になり、開催を見送り | |||
| 2006 | 第7回 | 7月7日から9日 | パリ・ノール ヴィルパント | 56,000 | 216 |
| 2007 | 第8回 | 7月6日から8日 | パリ・ノール ヴィルパント | 80,727 | 263 |
| 2008 | 第9回 | 7月3日から6日 | パリ・ノール ヴィルパント | 134,467 | 381 |
| 2009 | 第10回 | 7月2日から5日 | パリ・ノール ヴィルパント | 165,501 | 501 |
| 2010 | 第11回 | 7月1日から4日 | パリ・ノール ヴィルパント | 173,680 | 567 |
| 2011 | 第12回 | 6月30日から7月3日 | パリ・ノール ヴィルパント | 192,000 | |
| 2012 | 第13回 | 7月5日から8日 | パリ・ノール ヴィルパント | 219,614 | 652 |
| 2013 | 第14回 | 7月4日から7日 | パリ・ノール ヴィルパント | 232,876 | 713 |
| 2014 | 第15回 | 7月2日から6日(5日間) | パリ・ノール ヴィルパント | 240,189 | |
| 2015 | 第16回 | 7月2日から5日 | パリ・ノール ヴィルパント | 247,473 | |
| 2016 | 第17回 | 7月7日から10日 | パリ・ノール ヴィルパント | 234,852 | |
| 2017 | 第18回 | 7月6日から9日 | パリ・ノール ヴィルパント | 238,241 | 687 |
| 2018 | 第19回 | 7月5日から8日 | パリ・ノール ヴィルパント | 247,919 | 900超 |
| 2019 | 第20回 | 7月4日から7日 | パリ・ノール ヴィルパント | 252,510 | |
| 2020・2021 | 開催なし | 新型コロナウイルスにより2022年へ延期 | |||
| 2022 | 第21回 | 7月14日から17日 | パリ・ノール ヴィルパント | 254,084 | 944 |
| 2023 | 第22回 | 7月13日から16日 | パリ・ノール ヴィルパント | 255,259(歴代最高) | |
| 2024 | 第23回 | 7月11日から14日 | パリ・ノール ヴィルパント | 200,716 | |
| 2025 | 第24回 | 7月3日から6日 | パリ・ノール ヴィルパント | 222,016(測定値) 速報は約230,000 |
800超 |
| 2026 | 第25回 | 7月9日から12日 | パリ・ノール ヴィルパント | 222,048 | 1,016 |
| 2027 | 第26回(予定) | 7月8日から11日 | パリ・ノール ヴィルパント | ||
※ 1999年の来場者は2,400人と3,000人の2説があります。2003年の出展者数は資料により数字が異なるため空欄にしました。2025年の出展者数は主催者の「800社超」の表記のままです。
2. 数字が、記事ごとに違う理由
同じ年の来場者数が、記事によって2万人も3万人も違って見える理由は3つです。
- 速報値と測定値が別にある。2025年は、会期直後に主催者が「約23万人」と発表し、その後に第三者機関Infora社の測定値として222,016人が出ています。会期直後の記事は速報値を、後から書かれた資料は測定値を載せているので、同じ年でも数字が揃いません。
- 主催者が会期前に見込んだ数が、実績のように流れる。2026年は、主催者が会期前に25万人を見込んでいましたが、実績は222,048人でした。「25万人規模」という表現の多くは、この見込みか、2023年の最高記録から来ています。
- 延べ人数である。4日間の通し券で毎日来た方は、4人分として数えられます。実際に会場へ足を運んだ人数(実人数)は、公表されていません。
加えて、第三者の認証が始まったのは2007年からです。それ以前の数字は主催者の発表値で、2026年の222,048人も、報道各社が主催者の発表文を引用したものです。第三者の監査を経た数字かどうかは、本記事の執筆時点では確認できていません。
ほかのイベントと横に並べるのも、お勧めしません。日本のコミックマーケットや米国のAnime Expoは数え方がそれぞれ違い、延べと実人数、有料入場と無料入場が混ざります。並べると、比べていないものを比べたことになります。
3. 伸びた時期と、止まった時期
年表を区切ると、4つの時期に分かれます。
- 1999年から2004年。パリ市内の学校の催しから始まり、5年でCNIT(ラ・デファンス)の41,000人まで伸びました。会場が手狭になり、2005年は開催を見送っています。
- 2006年から2015年。パリ・ノール ヴィルパントへ移って56,000人、2008年に4日間へ広げて134,467人、2012年に20万人台に乗りました。弊社がジャパンエキスポをはじめフランスの催しへ出展していたのは、この時期(2006年から2015年までの11回)です。
- 2016年から2023年。2016年に初めて前年を下回り、以後は23万から25万人の間で動いています。2020年と2021年は開催がなく、再開した2022年に254,084人、2023年に255,259人と、歴代最高を更新しました。
- 2024年から2026年。2024年は、2週間後にパリ五輪の開幕を控えた日程で200,716人へ落ちました。2025年は222,016人、2026年は222,048人と、22万人台で横ばいです。2019年の252,510人と比べると、まだ12%ほど下にいます。
出展を検討される方に関係が深いのは、来場者が横ばいの間も、出展者の数は増えていることです。2022年の944から2026年の1,016へ、4年で72増えました。来場者数を出展者数で単純に割ると、2022年は1出展者あたり約269人、2026年は約219人です。1つのブースの前を通る方が、以前より少なくなっています。通路を歩く方の時間は変わらないのに、見るブースは増えている。足を止めてもらう理由が、年々要るようになっています。
4. 2026年の中身(第25回)
Livres Hebdoが主催者の発表文として伝えた、2026年の数字です。
- 会場面積 154,000㎡。ホールを1つ増やしました。
- 出展者 1,016。
- 登録したプロフェッショナル 3,089名(うち国外から860名)。企業 642社。報道・コンテンツ制作者 647名。
- 招待アーティストとゲスト 853名。催し 701本を27のステージと会場で、590時間。
- コンサート・ショーケース97本、武道・スポーツの実演124本、講演57本、ライブドローイング17本、マスタークラス26本、展示5つ(1,700㎡)、日本の職人120名による工芸のエリア。
- 会期中は熱波に当たりましたが、主催者はホール内の温度を保てたとしています。
来場者層については、agoris.ioがInfora社の数値として「2008年以降、15歳から25歳の層でフランス最大の催し」と書いており、主催者が中心に置く層は15歳から35歳です。経営者や購買担当者が多い国内の産業展示会とは、通路を歩く方の年齢も、来た理由も違います。
5. 2027年の予定(第26回)
公式サイトでは、2027年7月8日(木)から11日(日)、9時45分から18時30分、会場はパリ・ノール ヴィルパントと告知されています。招待作家は『キャプテン翼』の高橋陽一氏で、2026年の閉幕時に発表されました。フランスでは『オリーブとトム』の題名で放送された作品で、30代から40代の来場者が子どもの頃に見ていた世代です。
2027年の来場者数の見込みは、本記事の執筆時点で主催者から出ていません。過去3年の推移から、稟議には「4日間で延べ20万から25万人規模(2026年222,048人)」と書くのが、いちばん説明に困らない書き方です。
6. 規模の数字は、御社のブースの前で何が起きるかを教えてくれません
ここまでの数字で、稟議の規模の欄は埋まります。ただ、弊社が11回の出展で学んだのは、22万人という数字と、自社のブースの前で足を止める方の数は、別の話だということでした。初回の出展で成果が出た年は、弊社にもありませんでした。2年続けて出た自治体の記録にも、1回の出展で成果が出ずにあきらめる、担当者が代わって情熱が失われる、という2つの理由が残っています。
弊社がご一緒しているのは、御社のブースの前で来場者の方が足を止める理由を、社員の方ご自身が語れる物語にして、会場へ持っていくことです。御社の製品が使われている現場で、お客さまが困っていた場面を1つ選び、マンガにしてブースの入口に置きます。マンガはきっかけで、社員の方も、来場者の方も、その先の相手も巻き込んで、みんなが主体的に動く形を作ります。弊社はこれを「マンガ×体験価値」と呼んでいます。
そして、出展は会期の4日間だけでは終わりません。行く前に、会いたい相手を決めて見せるものを作る。会場で、絵と場面で覚えてもらう。帰ってから、続きを渡す。この前・中・後を1つの流れとして設計し、1年目の記録から2年目の出展を組み立てます。弊社は、作って納めて終わる制作会社としてではなく、この流れを一緒に回すプロジェクトの運用者としてご一緒しています。お付き合いは1回の出展で終わらず、2年目、3年目と続いていくことを前提に組んでいます。
出展料の考え方はジャパンエキスポの出展料はいくらかに、展示品の運び方はATAカルネでの持ち込みに、出る場所の決め方は海外の見本市は何から決めればよいかに書きました。
7. 明日からできる3つ
来年の出展に向けて、社内でできることを3つに絞ります。
- 稟議の規模の欄に「主催者発表・延べ・年」を添えて書きます。「4日間で延べ20万から25万人規模(2026年222,048人)」。これで、数字を聞かれても困りません。
- 22万人のうち、御社が会いたい相手を10社書き出します。フランスの出版社、小売、学校、自治体、日本文化の団体。名前が出てこなければ、まだ出る時期ではなく、調べる時期です。
- 2年続ける前提で予算を組み、1年目の成果を何で報告するかを、申し込む前に決めます。現地の反応の記録、2年目に会いたい相手の名前、伝わったことと伝わらなかったこと。この3つが書ければ、2年目の稟議が通ります。
よくあるご質問
Q1. 2027年の来場者数は、どれくらい見込めますか。
主催者の見込みは、本記事の執筆時点で発表されていません。2024年から2026年の実績は20万から22万人台で、2023年の最高記録には戻っていません。稟議には幅で書き、単年の数字には年を添えてください。
Q2. 来場者数は、第三者が数えていますか。
2007年からInfora社の認証値が使われています。2026年の222,048人は、報道各社が主催者の発表文を引用した数字で、第三者の監査を経たかどうかは確認できていません。稟議には「主催者発表」と添えるのが安全です。
Q3. 来場者の年齢層は、どのあたりですか。
Infora社の数値として、2008年以降は15歳から25歳の層でフランス最大の催しとされています。主催者が中心に置く層は15歳から35歳です。企業の購買担当者が歩く国内の産業展示会とは、来場者の年齢も来た理由も違います。
Q4. 出展者は何社ありますか。
2026年は1,016、2022年は944でした。来場者が22万人台で横ばいの間も、出展者は増えています。1つのブースの前を通る方は、以前より少なくなっています。
Q5. 来場者が多ければ、自社のブースにも人は来ますか。
来場者を会場まで集めるのは主催者の仕事で、御社のブースの前で足を止めていただくのは御社の仕事です。この2段の話は展示会の集客は何をすればいいかに書きました。22万人という数字は、2段目を保証しません。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
来年のジャパンエキスポで、御社が最初に会いたい相手は、どなたですか。
その方の顔が浮かべば、22万人という数字は、もう稟議の1行目ではなくなります。
社員の方と一緒に、来場者の方の現場の場面を物語にしてブースの入口に置き、前・中・後を回して2年目の出展へつないでいくところまで運用しています。国際マンガプロジェクトを見る
会いたい相手の候補を2つ3つお持ちいただければ、会場でその方に見せる場面の見当まで、その場で一緒に出せます。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考ブログ
ジャパンエキスポの来場者数は、4日間で延べ20万から25万人規模です。稟議には年を添えて書き、そのうえで、御社が会いたい相手の名前を先に決めてください。


