
「1回出てみた。反応は無かった。海外は、うちには向いていないのだろう」
一度では伝わりません。弊社はフランス・JAPAN EXPO等に11回出展してきましたが、初回で成果が出た年はありませんでした。そしてこれは、弊社だけの話ではありません。デジタルコンテンツ協会の白書には、日本の公的機関が同じ壁に当たった記録が残っています。何が足りなかったのかを、順に並べます。
1. 白書に残っている、山陰の連続出展
弊社代表の松山は、デジタルコンテンツ協会の白書でフランスのマンガ事情を担当し、現地取材を重ねてきました。2013年版で扱ったもののひとつが、山陰国際観光協議会の連続出展です。
- 出展先 ジャパンエキスポ(パリ北郊ヴィルパント)
- 時期 2012年から2013年にかけての連続出展
- 主体 山陰国際観光協議会(島根県・鳥取県および各市で構成)
- 記録 白書2013 第6章フランス(現地取材)
白書がこの事例を取り上げたのは、うまくいった話としてではありません。日本の公的機関の海外出展が、なぜ続かないのかを書くためでした。
2. 白書が書いた、続けられない2つの理由
白書には、出展する側にとって耳の痛い2つの理由が書かれています。
- 1回の出展で成果が出ず、あきらめてしまう
- 担当者が代わって、情熱が失われる
この2つは、自治体だけの話ではありません。中小企業の海外出展でも、そのまま起きます。1年目の予算は通ったが2年目が通らない。動いていた人が異動して、名刺の束だけが残る。どちらも、現場でよく聞く話です。
逆に言えば、この2つを設計で潰せば続けられます。成果の見方を初年度から変えておくこと。人が代わっても続くように、会社の側に資産を残しておくこと。この2つです。
3. 出展は、前と、中と、後の3つで1つの仕事です
弊社が11回のあいだに固めた考え方は、単純です。出展は、行く前と、会場と、帰ってからの3つで1つの仕事です。1つでも抜けると、費用だけが残ります。
- 前 誰に会いたいのかを決め、その相手に見せるものを日本で作っておく
- 中 会場で覚えてもらう。名刺ではなく、絵と場面で覚えてもらう
- 後 帰ってから、続きを渡す。1回きりの礼状で終わらせない
展示会は、リストを集めることがゴールになってしまいがちです。集めたあとで連絡をすれば何とかなる、と考えてしまいます。ところが、現場で盛り上がっていない相手に後から連絡をしても、話は進みません。データだけが手元に残ります。国内の展示会でもよく聞くことですが、海外では距離と時差が加わるぶん、もっとはっきり出ます。
4. 初年度の成果を「商談数」に置かない
1回目で商談が取れなかったから失敗、という見方をやめることが、続けるための最初の条件です。初年度に本当に取れるものは、次の3つです。
- 現地の反応が、想像とどう違ったかという記録
- 2年目に会いたい相手の名前
- 自社の何が伝わり、何が伝わらなかったかという手応え
この3つは、社内の稟議に書けます。書けるようにしておけば、2年目の予算が通ります。逆にこれを持ち帰らずに「反応は上々でした」とだけ報告すると、次の年に説明する材料がありません。白書が書いた「1回であきらめる」は、多くの場合、成果が無かったのではなく、成果の書き方を決めずに出たことから始まっています。
5. 人が代わっても続くように、会社の側に残す
担当者が代わると情熱が失われる、と白書は書いています。これは人の問題ではなく、引き継げる形になっていないという問題です。
引き継げる形とは、説明が人の頭の中ではなく、目に見えるものになっている状態です。弊社がマンガをお勧めするのは、まさにここです。誰が説明しても同じ順番で伝わり、担当が代わっても同じものが使えます。言葉の壁を越えるからというより、引き継げるからです。
引き継げる形にしておくと、2年目の担当者は前の年の続きから始められます。ゼロから説明を作り直さなくてよくなります。
6. 大きい会場から始めなくてよい
続けることを前提にするなら、初年度から最大規模の会場に出る必要はありません。フランスには、規模の違う催しが各地にあります。
- 7月・パリ北郊ヴィルパント ジャパンエキスポ。規模が最大で、出展者は800社を超える
- 2月から3月・マルセイユ ジャパンエキスポ・シュッド
- 4月・トゥーロン マング・アジュール
- 10月・ボルドー アニマジア
- 11月・リヨン ジャパンタッチ、ナント アート・トゥ・プレイ
白書2013は、それまでパリ中心だった催しがフランス全土へ広がったことを記録しています。日本の大衆文化があまり多くなかった地域でも開かれるようになった、という趣旨です。同じ白書に、2012年度のフランスではマンガ関連の催しが年間58件あったという記録もあります(出典はNautiljon)。これは2012年度の数字であって、現在も58件という意味ではありません。
3年続けることを先に決めて、3年ぶんの費用を割ってから会場を選ぶ。初年度に全部を乗せない。これが、山陰の記録から学べることです。
よくあるご質問
Q1. 何年続ければ成果が出ますか。
弊社の11回では、初回で成果が出た年はありませんでした。年数を断言することはできません。ただ、声がかかったのは決まって、同じ場所に続けて立っていることが相手に伝わったあとでした。
Q2. 1回目で何を持ち帰ればいいですか。
商談数ではなく、現地の反応が想像とどう違ったかという記録、2年目に会いたい相手の名前、自社の何が伝わらなかったかという手応えの3つです。この3つは社内の稟議に書けます。
Q3. 担当者が代わっても続けるには、何をしておけばいいですか。
説明を人の頭の中に置かないことです。誰が説明しても同じ順番で伝わるものを、会社の側に残しておきます。前任者の熱意ではなく、目に見えるものを引き継ぎます。
Q4. 費用はどれくらい見ておけばいいですか。
会場によって大きく違い、出展料を公開していない催しも多いため、この記事では相場を書きません。推測の金額は独り歩きします。考え方としては、3年ぶんに割ってから初年度の会場を選ぶことをお勧めします。
Q5. フランス語が話せません。
弊社が11回出展して分かったのは、最初に足を止めるのは言葉ではなく絵だ、ということです。絵で立ち止まってもらってから、簡単な言葉で足りる状態にしておく。順番はこちらです。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社がもう一度だけ海外に出るとしたら、1年目に持ち帰るものを、何と決めておかれますか。
決めてから出るのと、決めずに出るのとでは、同じ費用でも残るものが変わります。いま海外向けにお使いの資料を1点、ご相談のときにお持ちください。
海外向けマンガの実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
1回で全部を取りにいかない。それが11回で分かったことです。
参考ブログ
参考実績
シェアいただけたら嬉しいです🌹


