
カテゴリ:全体(アンシャントマンの物語/ピラー記事)
パリ郊外の展示会場。日本から運んだマンガを、フランスの若者が胸に抱えて列に並んでいました。日本語のまま、翻訳もされていないページを、一コマずつ確かめるように真剣にめくる。売り込みの言葉は、ひとつも要りませんでした。
この光景が、株式会社アンシャントマンの原点です。
「マンガは遊びだろう」と言われ続けた
2006年の創業から、私たちは「マンガで会社の魅力を伝える」仕事を続けてきました。けれど長いあいだ、企業の発信といえばカタログと条件表。「マンガ? うちはお堅い業界だから」と、入口で断られるのが日常でした。
それは経営者のせいではありません。「伝える道具」が説明ばかりだったから、説明で伝わらないもの——人柄、日常、想い——を伝える方法が、そもそも選択肢に無かったのです。
転機は、フランスの大衆が教えてくれた
代表の松山は神戸大学大学院で、フランスにおける日本マンガの受容を研究していました。フランスでは、日本側が売り込んだわけでもないのに、政治的な規制と激しい批判を乗り越えて、大衆が自らマンガを選び続けた歴史があります。マンガは何も押し付けない。読み手が物語に自分を重ね、自らの意思で選び取る——この確信が、経済産業省デジタルコンテンツ白書(フランス編)の3か年の執筆や、JAPAN EXPOへの11回の出展につながっていきました。
それでも、順風ではなかった
「マンガの会社です」と名乗るほど、「制作代行ですか。1ページいくらですか」と値段で比べられました。描いて納品して終わり、の仕事では、ブースの前を素通りされる会社も、応募が来ない会社も、何も変わらない。悔しさの中で私たちがたどり着いたのは、制作ではなく「運用」を売る——物語を社内に根づかせ、息長く届け続けるプロジェクトという形でした。
物語は、なぜ人を動かすのか
心理学の古典的な実験があります。Bower & Clark(1969年、Psychonomic Science誌)では、無関係な単語のリストを覚えるとき、単に暗記した群の再生率が13%だったのに対し、単語を物語に編んで覚えた群は93%を記憶していました。物語は、バラバラの情報を「忘れられない一続きの体験」に変えます。会社の強み・沿革・条件も同じです。列挙すれば忘れられ、物語になれば残ります。
私たちの仕事は、この原理を企業活動に翻訳することです。手順はいつも同じです。
- 会社の中に眠る魅力を棚卸しする(本人たちには「当たり前」に見えています)
- それを、読み手が自分を重ねられる物語とキャラクターにする
- 一度きりの広告ではなく、連載として息長く届け続ける
20年目の現在地と、終わっていない危機
2026年8月、アンシャントマンは創業20周年を迎えます。大阪国際マンガグランプリの主催、フランス・ヴァルドワーズ県の日仏友好事業の運営、アルジェリアでの講演——マンガが国境を越える瞬間に、何度も立ち会ってきました。
しかし、危機はいま進行中です。日本の人口は減り続け、内需は細っていく。世界は日本の文化を求めているのに、日本の会社の多くはまだ動いていない。このままでは、伝えられないまま失われる魅力が、日本中の会社に眠ったままになる——私たちはそう考えて、今日も物語をつくっています。
3つの物語の入口
アンシャントマンの仕事は、3つの現場に分かれます。それぞれの総まとめはこちらからどうぞ。
どの入口から読んでも、行き先は同じです。
あなたの会社にも、まだ言葉になっていない物語が眠っているはずです。その物語をマンガという形で目に見えるようにしたとき、社員が、求職者が、来場者が、最初のページをめくり始めます。
物語づくりが、人と組織を動かす。
アンシャントマンの歩みと体制はこちらでご紹介しています。→ 会社概要を見る
次回は、採用の現場の物語「求人を出しても応募が来ない中小製造業の物語」をお届けします。



