
会期が終わって2週間。机の引き出しには輪ゴムでまとめた名刺の束があり、お礼メールの返事は数通だけ。来年の予算の会議で「今年の展示会で何件の商談になったか」と聞かれて、数字が出てこない。出展費を払い、3日間ブースに立ったのに、社内で説明できる成果が見当たらない。この記事は、そんな状態から抜け出すための点検表です。
展示会の名刺を商談につなげるには、出展の「前」・会期の「中」・会期の「後」の3段に分けて、自社がどの段で切れているかを先に見つけることです。前は成功の定義と準備、中は足を止める入口と濃さの仕分け、後は会期後30日までの順番がそろって、はじめて名刺は商談になります。誠幸運輸倉庫さまの出展では、マンガに描いた悩みと重なる回答41件からは前向きなご意向が22件、重ならない30件からは0件でした。
まず、下の点検項目に「はい・いいえ」で答えてみてください。「いいえ」が集まった段が、いま詰まっている段です。考え方の背景は展示会に意味がないと言われるときにも書いています。
なぜ、名刺は商談にならないのか
実機のデモ、ノベルティ、名刺集めは、どれもやっていいことです。問題は、それだけで終わると、通路から見たときにどのブースも同じに見えることです。主催者が集めるのは「会場まで」の人で、自分のブースの前で何が起きるかは各社任せです。3秒以内に印象に残らないと素通りされるとも言われます。
アペルザの調査(n=413)では、来場者は平均17社のブースを訪ね、持ち帰られた資料の94.9%は保管されません。
Sansan(2025)によると、名刺交換のあと日常的にフォローメールを送る営業担当者は4人に1人です。
名刺を集めることは決まっていても、その先の一手(電話・メール・メルマガ)が決まっていない。ここが、名刺が眠る原因です。この構造は集めるところで止まっている展示会でくわしく書いています。
前の点検 出展の前に決まっているか
- 点検1 会期後に何が起きていたら成功かを、名刺の枚数以外の言葉で1文にしているか。
- 点検2 その1文を、通路を歩く人が3歩で読み取れる形(絵と一言)にしているか。
- 点検3 どの展示会に出るか、何を配るか、会期前に誰へ知らせるかを、その1文から逆算して決めているか。
要点は3つです。成功の定義を先に決めること。その定義を見た目に落とすこと。会場選び・配布物・事前の告知を、すべてその1文につなげることです。
「いいえ」があった方は、目標を何の数字に置くか、どの展示会に出るかの選び方、何を配ればよいか、会期の前に来場者を集める方法から読んでください。
中の点検 会期中に、入口と仕分けがあるか
2026年5月27日から29日まで、インテックス大阪で開かれた第2回鉄道技術展・大阪2026。床面サインの美華道さまのブースで、スーツ姿の来場者がキャラクターの前でふと足を止めます。マンガを受け取り、アンケートに答えるうちに、ご自分の現場の悩みを語り始めました。
- 点検4 対話の入口が、製品説明のほかにもう1つあるか。
- 点検5 見込みの濃さを仕分ける基準を会期前に決め、当日その場で記入しているか。
- 点検6 毎夕ふり返り、翌朝に立ち位置や声のかけ方を直す流れがあるか。
要点は3つです。説明の手前に、来場者がご自分の悩みに氣づく入口を置くこと。名刺の束でなく、濃さで仕分けた一覧を会期中につくること。3日間を同じやり方で通さず、毎日直すことです。
実機のデモがある会社も、デモに物語を足すと入口が1つ増えます。名刺の一枚一枚が商談になる会期中の作り方は、展示会の名刺が商談にならない理由にまとめています。「いいえ」があった方は、体験型ブースのつくり方、同業が並ぶ会場での見せ方、実機のデモの見せ方、アンケートで何を聞くかも手がかりになります。
後の点検 会期後の順番が、出展前に決まっているか
- 点検7 会期後の何日目に、誰が、何を送るかを、出展前に決めているか。
- 点検8 返事のない方、今すぐでない方への2通目以降の接点を用意しているか。
- 点検9 成果を名刺の枚数でなく、商談に進んだ件数と次の一手で社内に報告できるか。
要点は3つです。会期後の順番を、会期の後でなく前に決めること。今すぐでない方を切り捨てず、思い出していただける接点を続けること。成果の物差しを、来年の判断に使える形にしておくことです。
「いいえ」があった方は、会期後のフォローの進め方、商談化率の考え方、会期後に忘れられないために、来年も出るかの決め方へ進んでください。
9つの点検で「いいえ」が付いた方は、作戦会議(無料・30分)にお持ちください。前回の名刺やアンケートを見ながら、御社用の会期後30日の表を1枚、一緒に作ります。次の出展が来月でも間に合います。
会期後30日の流れ(日数の目安)
当日の夜から翌日 その日のアンケートや名刺を濃さで仕分ける。濃い順に、担当者を割り振る。
3日以内 見積・試験・訪問を希望された方へ、担当者からご連絡する。会期中に伺った悩みに触れる一文を必ず入れる。
7日目まで 検討段階の方へ、ブースで渡した物語の続きや、悩みに関わる情報を1通届ける。
14日目前後 返事のない方へ、角度を変えた2通目を送る。社内向けに、ここまでの動きを1枚にまとめる。
30日目 商談に進んだ件数と、まだ時期でない件数を分けて数える。来年の出展を判断する材料として残し、時期でない方には接点を続ける。
この日程は一般的な目安です。日数そのものより、「誰が」「何を」までを出展前に決めておくことが効きます。次の出展が来月でも、この表と、中の段の仕分けの基準は今から決められます。
実録 前・中・後がつながった2社
床面サインの美華道さまは、キャラクター「シグナ・ミカ」とマンガで出展しました。前は、ブースの主役を製品パネルから物語へ。中は、来場者が悩みを語りながら答えるアンケートで、その場で濃さを仕分ける。後は、見積を希望された方にはすぐ提出、試験施工や訪問を求める方には会期直後の訪問、検討段階の方にはマンガで関係を育てる、という順番です。アンケートは459件(前回の関西物流展の約12.8倍)、前向きなご意向164件、会期中の見積19件、すぐ商談可能なS級・A級86件となりました。人を引きつけるブースで、会期中に見積19件です。くわしくは鉄道技術展・大阪2026の実績をご覧ください。
物流の誠幸運輸倉庫さまは、ものづくりワールド大阪2026に、マスコットと展示会マンガで出展しました。前は、マンガと同じ悩みの言葉でアンケートをそろえる。中は、毎夕の日報から翌朝に立ち位置と声のかけ方を直す。3日間のアンケートは71件、ご依頼は15件(21%)でした。冒頭の「悩みと重なる回答ほど前向き」という結果は、この設計から出た物です。会期初日の様子はものづくりワールド大阪の初日、全体は実績ページにあります。
2社とも、物語は来場者が悩みに氣づく入口で、選ばれた決め手はそれぞれのサービスそのものでした。
申込書に判を押す前に決める5つ
1 会期後に何が起きていたら成功かを、名刺の枚数以外の言葉で1文にする。
2 その1文を、通路を歩く人が3歩で読み取れる形(絵と一言)にする。
3 対話の入口を、製品説明のほかにもう1つ用意する。
4 会期中に濃さを仕分ける基準を決め、当日その場で記入する。
5 会期後の何日目に、誰が、何を送るかを、出展前に決める。
上の点検9項目は、この5つを会期の流れに沿って分けた物です。次の申込書を出す前に、5つのうち決まっている物に印を付けてみてください。
よくあるご質問
Q1. どの段から直せばよいですか。
点検で「いいえ」が多かった段からです。迷ったら、後の点検7(会期後の何日目に誰が何を送るか)から決めると、前と中で何を集めればよいかが逆算できます。
Q2. 次の出展が来月です。今からでも間に合いますか。
間に合います。会期後30日の表(誰が、何日目に、何を送るか)と、会期中に濃さを仕分ける基準は、ブースの装飾や配布物が決まっていなくても今から決められます。
Q3. 会期後のフォローは、いつまでに何をすればよいですか。
見積や訪問を希望された方には3日以内、検討段階の方には7日目まで、返事のない方には14日目前後に2通目が目安です。30日目に件数を分けて数えます。
Q4. 来年の予算を社内で説明するには、何を数えればよいですか。
名刺の枚数でなく、濃さで仕分けた件数、商談に進んだ件数、時期でない方への次の一手の3つです。くわしくは成果をどう報告するかをご覧ください。
Q5. 社内で止まって、フォローが進みません。
会期後の担当と順番が決まっていないことが多い原因です。出展前に「誰が、何日目に」を決めておくと動きやすくなります。社内で止まってしまうときにも書いています。
あなたの展示会は、どの段で切れていますか
前回の会期の後、最初の1通を送ったのは何日目で、誰でしたか。
その答えがすぐに出てこないなら、切れているのは「後」かもしれません。出てくるのに商談にならないなら、「前」か「中」に手がかりがあります。
作戦会議(無料・30分)では、前回の名刺やアンケートを見ながら、御社用の会期後30日の表を1枚、一緒に作ります。次の出展が来月でも間に合います。
次の出展の前に、見ておきたい現場があります。
参考実績
参考ブログ
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