
カテゴリ:展示会(総まとめ/ピラー記事)
撤収日の夜、段ボールに残ったチラシの束をガムテープで閉じる。3日間、声を張り続けた喉は痛いのに、手元に残ったのは名刺の束と「検討します」の記憶だけ。翌週から始めたお礼メールには、返信がほとんど戻ってこない——展示会に出たことのある会社なら、一度は通る夜だと思います。
素通りされるのは、製品が悪いからではない
来場者は限られた時間で会場を回り、多くのブースを見比べます。アペルザの調査(n=413)では、来場者は平均で17社のブースを訪問し、持ち帰られた資料の94.9%は保管されないという結果が出ています。つまり、素通りも、忘れられるのも、製品力の問題ではなく「記憶に残る設計」がブースに無いという構造の問題です。同規格の白いブースが並ぶ会場で、パネルと説明文だけの装飾は風景に溶けてしまいます。
ある床面サイン会社の転機
剥がれない床面サインの技術を持つ美華道さまも、技術力だけでは足を止めてもらえない壁に向き合っていました。転機になったのは、第2回鉄道技術展・大阪2026への出展です。ブースの主役を製品パネルから物語に置き換え、自社キャラクター「魔法戦士シグナ・ミカ」とマンガでブース全体を設計し直しました。
「お堅い鉄道業界にキャラクター?」という不安は、当然ありました。それでも当日、キャラクターの前で足が止まり、マンガが手に取られ、対話が生まれる。「コミケみたい」という声が上がり、翌日には同僚を連れた再来場まで起きました。3日間のアンケート回収は459件、前回出展の約12.8倍。見積や試験施工のご希望も相次ぎました。
成果を分けるのは「前・中・後」の設計
展示会の成果は、会期3日間だけでは決まりません。私たちは必ず「前・中・後」で設計します。
- 前(約2ヶ月)——キャラクターと物語の設計、事前の告知、アンケートやくじ引きといった「来場者が参加する体験」の準備。ブースの主役を「説明」から「体験」へ移します。
- 中(会期)——足を止めてもらう入口づくりと、「現場でこんなことありませんか」という対話。名刺の枚数ではなく、相手が自分の課題に氣づいて帰ることをゴールにします。その場で見込みの濃さを仕分け、日報で翌日の動きを改善します。
- 後(受注まで)——熱が冷める前の即フォローと、マンガレターなどでの息の長い接点づくり。Sansanの調査(n=1,272)では名刺の57.7%が管理されずに眠るとされます。リストは放置した瞬間から冷え始めます。
危機は、次の出展でも待っている
一度成果が出ても、次の展示会ではまた新しい来場者が、同じように何十のブースを素通りしていきます。記憶に残る設計を続けない限り、出展費用だけが積み上がっていく——この構造は、いまも全国の会場で進行中です。
あなたの会社のブースに足を止めた人が、帰り道に「あの、○○の会社」と物語で呼んでくれる——そんな一枚のマンガが、名刺の束を商談に変える入口になります。
名刺の枚数から、「氣づいて帰る人の数」へ。
展示会マンガプロジェクトの全体像はこちら。→ 展示会マンガプロジェクトを見る
次の出展の前に、見ておきたい現場があります。
次回(金曜7時)は「その出展費用、回収できていますか」をお届けします。


