
金曜の夕方、事務所のパソコンで求人サイトの管理画面を開く。今週の応募、ゼロ。掲載料は毎月出ていくのに、画面の数字だけが動かない。「うちみたいな町工場に、来たい人なんておらんのやろか」——そうつぶやいた社長を、私たちは何人も知っています。
結論から申し上げます。応募が来ないのは、御社の規模や知名度のせいではありません。求人という場所が、すでに探しはじめた方にしか開かれていないからです。まだ探しておられない方の日常に、働く姿を先に置いた会社から順に、応募が動きはじめています。
応募が来ないのは、あなたの会社のせいではない
まず、構造の話をさせてください。求人サイトの中で目立てる枠は限られていて、上位表示には広告費が要ります。登録した求職者にはスカウトメールが洪水のように届き、その必死さに求職者のほうが嫌氣を差していく。そして給与や休日といった条件の勝負になった瞬間、体力のある大手が有利になります。
心理学者ハーズバーグは、著書『The Motivation to Work』(1959年)で、給与や労働条件を「衛生要因」と呼びました。足りなければ不満になるが、増やしても満足や意欲にはつながりにくい要因です。上げた給与は翌日から当たり前になる。条件の消耗戦に出口が無いのは、理論のうえでも裏づけがあります。
ある鉄工所の転機
大阪の鉄工所、前田機械さまも、その渦中にいました。求人サイトに掲載しても応募はゼロ。現場スタッフ2名と営業1名を採りたいのに、入口にすら人が立たない状態が続いていました。
選んだのは、条件を書き換えることではありませんでした。工場の中の日常——どんな人が働き、新人がどう教わり、どんな瞬間に誇りを感じるのか——を採用マンガにして、求人サイトの中ではなく、通える距離に住む人の郵便受けへ、ポスティングで直接届けたのです。あわせてハローワークにも展開しました。
「チラシで人が来るんか」という戸惑いは、社内にもありました。それでも配布に踏み切って10日。工場見学の申し込みという形で、最初の応募が届きました。その方は、そのまま採用に至っています。
なぜ「働く姿が見えること」が効くのか
応募の決め手は、その会社で働く自分の姿をありありと想像できることだと私たちは考えています。求職者が本当に知りたいのは、遅刻したときどう扱われるのか、趣味の理由でも有給は取れるのか、上司は親切に教えてくれるのか——つまり会社の「中身」です。ところが中身は、求人票にもホームページにも載っておらず、各社ブラックボックスのまま。面接はお互いに品定めの場ですから、本音は出てきません。
だから、面接の前に中身を見せた会社が選ばれます。手順にすると、次の4つです。
- 条件(衛生要因)と中身(動機づけ要因)を仕分ける——見せるべきは後者です
- 働く日常を物語にする——看板社員の美談ではなく、新人がつまずいて教わる等身大の場面を
- 地元へ直接届ける——全国区で埋もれるより、通える人に深く届くほうが、労使とも長続きします
- 一度きりで終えず、息長く続ける——浸透には時間がかかります。連載や第2弾で接点を保ち続けます
地元の方は、御社を知らないのではありません
マイナビの2027年卒を対象とした調査(調査期間2026年3月20日から4月5日、有効回答2,800名)では、地元での就職を希望する方の割合は58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加に転じています。同じ調査で、地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。求人媒体ではありません。これは新卒の方を対象とした調査ですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、知られ方の入口が求人媒体の外にあるという点は、中途採用の現場で見聞きすることとも重なります。
つまり、地元の方は御社を知らないのではありません。知る機会が、まだ無かっただけです。求人を出しておられなかったからでもありません。求人は、探しておられる方にしか届かないからです。
つまずきの形ごとに、詳しく書いた記事があります
いま御社で起きていることに近いものから、お読みください。
- 求人サイトに出しても意味がないとお感じのとき
- ハローワークに出した求人が埋もれているとき
- Indeedに掲載しても応募が来ないとき
- 地方だから難しいとお感じのとき
- 若い方からの応募が無いとき
- 中途採用が止まっているとき
- 工場見学を採用に使えないかとお考えのとき
- 求人広告を止めた月に応募がゼロへ戻るとき
- 人手不足だから採用できないとお考えのとき
危機は、まだ終わっていない
前田機械さまはいま、採用マンガ第2弾を運用中です。一度の成功で採用難が消えるわけではありません。働き手はこれからも減り続け、条件競争に留まる会社から順に、応募のない金曜日が積み重なっていく——その構造は、いまも進行しています。
あなたの会社の日常も、外から見ればブラックボックスです。その扉を開けて、働く姿を物語として見せたとき——マンガを手にした近所の誰かが、「ここでなら働けるかもしれない」と最初の一歩を想像し始めます。
Q1. 採用マンガを配れば、すぐに応募が来ますか。
すぐに来ることもありますが、それは早いほうの例です。前田機械さまの場合は配布から10日で最初の工場見学のお申し込みがありました。届いた方がご自分で探しはじめる日まで待つ性質のものですので、求人広告を止めずに並行して持っていただくことをおすすめします。
Q2. 何部くらい、どこへ配ればよいのでしょうか。
全国ではなく、御社まで通える範囲です。市町村の境ではなく、通勤時間で区切ってください。その範囲は数えられる世帯数ですので、繰り返し届けることができます。範囲を広げるより、同じ範囲へ二度届けるほうが残ります。
Q3. 求人広告は止めたほうがよいですか。
止めないでください。いま探しておられる方に届く経路は、そこにしかありません。止めるのではなく、手元に残る側を1つ作ってから、効き具合を見て配分を移す順序をおすすめします。順番を逆にすると応募が途切れます。
Q4. うちには、マンガにできるような出来事がありません。
看板社員の美談は要りません。新人の方がつまずいて教わる場面、朝の集まり、失敗したときの扱われ方、有給の取り方。求人票に書きにくいことほど、読み手が知りたいと思っておられることです。
Q5. 一度作れば、ずっと使えますか。
会社案内としては使えます。ただ、知っていただくという目的では、一度で足りることはまずありません。浸透には時間がかかりますので、第2弾や連載で接点を保ち続ける形にしてください。
条件でなく、働く姿で選ばれる採用へ。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
いま出している求人票を思い浮かべてください。条件の話ではない行は、何行ありますか。
その行が少ないほど、大手と同じ土俵で戦っていることになります。求人票を1枚お持ちください。どこが条件の話だけで終わっているかを一緒に見ます。
採用マンガプロジェクトの全体像はこちら。→ 採用マンガプロジェクトを見る
同じ危機から、応募が動き出した現場があります。
前田機械さまでお作りしたのは、初日に遅刻した新人の話、説明どおりに行かなかった日の話、納期に追われた日の話の3話です。第3話では、失敗を申し出た新人に先輩がこう返します。「ええ判断や。隠すより100倍マシや」。求職者の方が知りたいのは、制度があるかどうかではなく、そのとき自分がどう扱われるかです。不安はひとつではありませんので、物語をつないでお届けします。
御社の場合はどの不安から描くとよいか、ご相談に乗ります。30分ほどお時間をいただければ、その場で1話目の見当までお出しします。相談してみる
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