
カテゴリ:国際(総まとめ/ピラー記事)
「海外ですか。うちには早いですよ」——応接室でそう笑った社長の机には、前年より薄くなった国内の受注表がありました。値下げ要請は年々きつくなり、取引先の数は少しずつ減っていく。それでも海外は、言葉も商習慣も分からない「別世界」に見える。多くの中小企業が、この応接室と同じ場所に立っています。
内需が細るのは、努力不足ではない
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、2020年に1億2,615万人だった日本の人口は、2070年に約8,700万人まで減ると見込まれています。お客さまの数そのものが減っていく市場で、シェアの奪い合いだけを続ければ消耗するのは当然で、それは経営者の力量の問題ではありません。
一方で、世界の側は日本を求めています。日本動画協会「アニメ産業レポート」によれば、アニメ産業の海外市場は2兆1,702億円と、国内市場(1兆6,705億円)をすでに上回りました。マンガ・アニメという「言葉の壁を越える伝え方」を、世界のほうが先に選び始めているのです。
パリの会場で見た、逆転の光景
私たちアンシャントマンは、フランス最大級の日本文化イベント「JAPAN EXPO」に累計11回出展してきました。そこで毎回起きるのは、日本の応接室とは正反対の光景です。日本の中小企業のブースに、フランスの若者が列を作る。翻訳されていないマンガを胸に抱え、キャラクターと写真を撮り、「この会社の商品はどこで買えるのか」と聞いてくる。
売り込んだからではありません。フランスでは、政治的な規制と激しい批判を乗り越えて、大衆が自らマンガを選んできた歴史があります。代表の松山はこの過程を神戸大学大学院で研究し、経済産業省デジタルコンテンツ白書(フランス編)を3か年執筆しました。マンガは押し付けない。だから国境を越える——これは感想ではなく、研究と11回の現場で確かめてきたことです。
それでも、痛みはある
正直に書けば、海外は一度の出展で花開く市場ではありません。言葉の壁より厚いのは「継続の壁」で、単発で出て、名刺を配って、それきりになった日本企業を私たちは何度も見てきました。だからこそ私たちは、フランスのほかタイでも5回の出展を重ね、フランス・ヴァルドワーズ県の日仏友好事業の運営やアルジェリアでの講演まで、行政・現地との回路を少しずつ太くしてきました。遠回りに見えて、これが最短距離でした。
中小企業が世界へ出る、現実的な手順
- 単独で背負わない——海外展開は一社では重い。プロジェクトベースで関連企業と組み、費用も知見も分け合います。
- 公的な入口を使う——たとえばJETROの海外見本市ジャパンブースには、中小企業向けに一般料金の半額となる区分があります。最初の一歩は、思っているより低い段差です。
- 言葉より先に、物語を渡す——製品説明の翻訳より先に、キャラクターとマンガで「何者か」を伝える。現地の人が自分から手に取る形にします。
- 単発にしない——出展を点で終わらせず、現地の反応を次の物語に編み込んで、接点を続けます。
危機と好機は、同じ速さで進んでいる
人口減少は止まりません。いま動かない会社の魅力は、細る内需と一緒に、伝えられないまましぼんでいく——その一方で、世界の日本文化人氣は膨らみ続けています。この非対称が続いている「いま」が、実は追い風の吹いている時間です。
あなたの会社の技術や商品も、マンガという通訳を得たとき、翻訳を待たずに海の向こうの誰かの手に取られます。パリの会場で列を作るのは、次はあなたの会社のブースかもしれません。
内需のシェア争いから、世界の入口へ。
国際マンガプロジェクトの全体像はこちら。→ 国際マンガプロジェクトを見る
その好機を、先につかんだ会社があります。
次回(水曜7時)は、海外で「覚えられる会社」になるブランディングの物語をお届けします。


