
社長から「来年の展示会に、うちも出てみよう」と言われた。出展の申し込みは済んだものの、社内に経験者はいない。小間の広さ、パネル、配る物、当日の人の割り振り。決めることが多すぎて、何から手を付ければいいのか分からない。出費は小さくないのに、終わってから「何も残らなかった」と言われたらどうしよう。そんな思いで、出展の手引きを何度も読み返していませんか。
「初めて展示会に出展するとき、何から決めればいいでしょうか」
最初に決めるのは、ブースの見た目でも配る物でもありません。この1回目を、2回目の出展へどうつなぐかです。初出展を「試しに1回」と考えると、準備はすべて当日の3日間に集まり、会期が終われば手元に名刺の束だけが残ります。2回目へつなぐ前提で組むと、決める順番そのものが変わります。
以下、初出展でよく起きる4つのつまずき、担当の方が抱える不安、決める順番、2回目へつなぐ前・中・後の組み立て、弊社のやり方、今月できる3つ、の順に書きます。
1. 初出展で、よく起きる4つのつまずき
初めての出展には、決まって同じつまずきがあります。
- ブースの見た目から決め始める。施工会社の見本を見ながら色や形を選ぶうちに、「誰に、何の話をするブースか」が後回しになります。見た目が先に決まると、話す中身をそこへ合わせることになります。
- 製品を全部並べようとする。せっかく出るのだからと、カタログの製品を一通り置きます。来場者の方は、1日に何十ものブースの前を通ります。何でも置いてあるブースは、通路から見ると何の会社か分かりません。
- 名刺の枚数が、いつのまにか目標になる。数えやすいので、会期中の会話は「何枚集まったか」になりがちです。リスト集めがゴールになると、会期のあとにメールや電話で追いかければ商談になる、と思い込んでしまいます。けれども、データだけ取られても、現場で盛り上がっていなければ、後追いの連絡は読まれません。
- 会期のあとのことを、会期のあとに考える。片付けを終えて会社に戻ってから、集まった名刺をどうするかを話し合います。そのころには、ブースで話した中身を誰も覚えていません。
4つとも、準備の量が足りないから起きるのではありません。準備の順番が、当日から逆向きに組まれていないから起きます。
2. 担当の方が、ひそかに抱えている不安
初出展の担当を任された方の胸の内は、段取りの多さだけではありません。
- 出展の費用に見合う結果を、社内に説明できるだろうか。
- ブースに立っても、誰にも足を止めてもらえなかったらどうしよう。
- 慣れていない社員が、来場者の方にうまく話せるだろうか。
- 隣に同業の大きな会社が並んだら、見劣りしないだろうか。
- 「1回出てみたけれど、意味がなかった」で終わってしまわないだろうか。
どれも、出展したことのある会社なら一度は通る不安です。そして5つ目の不安は、実際によく起きます。初出展の会社の多くが、1回目の結果だけを見て、2回目を見送ります。1回目は、相手に御社の名前を覚えていただく回です。商談の多くは、2回目、3回目に会ったときに始まります。
3. 決める順番は「会期のあと」から逆にたどります
初出展で迷わないためには、決める順番を逆にします。
- 会期のあと、誰と、どんな話を続けたいかを1行で決める。業種、相手の部署、相手が抱えている悩みの場面まで書きます。決め方は、展示会の出展目的は、何にすればいいかに詳しく書きました。
- その方が、ブースの前で「うちのことだ」と足を止める場面を1つ選ぶ。製品の性能ではなく、相手の現場で起きている困りごとの場面です。
- その場面を、通路から見える1か所に大きく置く。製品を全部並べる代わりに、その場面に関わる物だけを選びます。小間が小さくても、ここは同じです(小さい小間では、目立てないのか)。
- 足を止めた方への最初の一言と、聞きたいことを2つ決める。それを、立つ社員全員で同じにしておきます。
- 最後に、ブースの色や形、配る物を決める。ここまで決まっていれば、施工会社との打ち合わせは短く済みます。
展示会では「3秒以内に印象に残らないと素通りされる」とよく言われます。秒数の真偽はさておき、通路を歩く方が一瞬で見て取れるのは、場面1つ分だけです。その1つを、会期のあとの話から逆にたどって選ぶのが、初出展の一番の近道です。
4. 1回目を、2回目へつなぐ前・中・後
初出展を1回の催しとして考えると、力は当日の3日間に集まります。けれども、2回目につながるかどうかを決めるのは、当日の前と後です。
前(2〜3か月前から) 来てほしい方に、先に場面を届ける
出展を決めたら、取引先や、話を続けたい業種の方に、ブースに置く場面を先にお見せします。「この場面の続きを、会場でお話しします」と添えておくと、会場で探して来てくださる方が生まれます。準備の段取りは、展示会の準備はいつから始めれば間に合うかにまとめています。
中(会期中) 話の中身を、その日のうちに残す
会期中は、名刺の枚数ではなく、来場者の方が口にした言葉を残します。どの場面で足が止まり、どんな悩みを話されたか。毎晩、立った社員の皆さまで5分だけ振り返ると、翌日の最初の一言が良くなります。この言葉が、2回目の出展の一番の材料になります。
後(会期の翌日から) 続きを、相手が選べる形で届ける
会期のあとは、会場で話した場面の続きからご連絡します。資料をもう一度送る、現場を見に来ていただく、次の展示会でまたお会いする。どれにするかは、相手に選んでいただきます。そして、1回目に話した方の言葉を、2回目のブースの場面に生かします。2回目に同じ方が来られたとき、「去年の続きですね」から会話が始まります。
5. 弊社がしていること
弊社は、ブースに置く場面をマンガで見える形にし、それを会期の前・中・後に届け続けるプロジェクトを運用しています。
マンガを使うのは、製品の説明では伝わらない、相手の現場の場面が伝わるからです。場面を選ぶのは、出展される会社の社員の皆さまです。来場者の方は、その場面の中にご自分の会社を重ね、「うちのことだ」と足を止めます。社員の皆さまも、来場者の方も、主体的に関わる形になるので、ブースで交わす言葉にも実感がこもります。弊社はこれを、マンガと体験価値の組み合わせと呼んでいます。
床面に貼るサインの特殊施工をされている株式会社美華道さまとは、関西物流展から2026年5月の第2回鉄道技術展・大阪へと、出展をまたいでご一緒しています。鉄道技術展では、会期中の来場者アンケートが459件で前回の出展の約12.8倍、会期中の見積が19件でした。特別なことをしたわけではありません。前の展示会で始まった話を、次の展示会へ持ち越した結果です。
弊社は出展の物を作って納めて終わりにはしません。プロジェクト運用者として、1年以上、できれば何年も続くお付き合いの中で、1回目から2回目、3回目の出展へ一緒に歩きます。2回目に出るかどうかの決め方は、来年も同じ展示会に出るべきかに書きました。
6. 今月できる3つ
- 会期のあと、話を続けたい相手を1行で書きます。業種と部署と、相手が困っている場面まで書いてください。
- その相手が「うちのことだ」と思う場面を、営業の方に3つ挙げていただきます。お客さまから実際に聞いた言葉があれば、それが一番の候補です。
- 2回目の出展を、1回目の前に社内で話しておきます。「今回は名前を覚えていただく回、次回は話の続きをする回」と決めておくだけで、1回目の結果の見え方が変わります。
よくあるご質問
Q1. 初出展は、小さい小間からのほうがよいですか。
多くの場合、小さい小間からで十分です。小間の広さより、通路から見える場面が1つに絞れているかで、足の止まり方は変わります。2回目に広げるかどうかは、1回目に話の続きが生まれた数を見てから決めても遅くありません。
Q2. 何の展示会に出ればよいか分かりません。
会期のあとに話を続けたい相手が、来場者の中にいるかどうかで選びます。主催者が出している過去の来場者の業種や役職の内訳を見て、その相手が多く来る展示会を選んでください。規模の大きさだけで選ぶと、話を続けたい方に会えないことがあります。
Q3. 社内に、ブースに立てる人が2〜3名しかいません。
人数が少ないほど、話す場面と最初の一言を1つに絞ってください。全員が同じ場面から話を始められれば、2名でも十分に回ります。立つ方の決め方は、交代の時間も含めて事前に決めておくと、当日に慌てません。
Q4. 1回目で成果が出なかったら、どう社内に説明すればよいですか。
出展の前に、「1回目は名前を覚えていただく回」と社内で決めておくことをおすすめします。そのうえで、名刺の枚数ではなく、来場者の方が話された悩みの言葉と、会期のあとに話が続いた件数を報告します。2回目に何を変えるかが具体的に書ける報告は、次の出展の後押しになります。
Q5. ブースのデザインは、専門の会社に任せてよいですか。
任せてよいと思います。ただ、誰に、どの場面を見せるブースかは、御社で決めてからお願いしてください。そこが決まっていれば、施工会社の方も、色や形の提案をその場面に合わせてくださいます。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
初めての展示会が終わった翌日、御社は誰に、どんな話の続きをご連絡しているでしょうか。
すぐに浮かばないなら、ブースの見た目を決めるより先に、その1行を書くところから始めてみてください。
ブースに置く場面を社員の皆さまと選ぶところから、会期の前・中・後、そして2回目、3回目の出展へつなぐところまでを、プロジェクトとして運用しています。展示会マンガプロジェクトを見る
出展される展示会の名前と、会期のあとに話を続けたい相手を教えていただければ、御社の場合は何から決めるとよいか、ご一緒に考えます。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考ブログ
初めての展示会で最初に決めるのは、ブースの見た目ではなく、会期のあとに誰とどんな話を続けるかです。1回目は名前を覚えていただく回、2回目は話の続きをする回。初出展を、続いていく出展の1回目として組んでいってください。


