
「求人広告を出している月は、少ないながらも応募があります。ところが予算の都合で出稿を止めると、その月から応募がぴたりとゼロに戻ります。出し続けないと採用できないのでしょうか」
求人広告は、出稿している期間だけ「いま転職先を探している人」に届く道具です。止めれば接点が消えるので、応募もゼロに戻ります。壊れているのではなく、そういう作りの道具です。
先に、人に話したくなる事実をひとつ置きます。求人広告を止めた月に応募がゼロへ戻るのは、効果が切れたからではありません。そもそも、貯まっていなかったからです。
この1年の求人広告費の明細を開いて、月ごとの応募数を横に並べてください。出した月と、止めた月。その2行だけを見ます。線がつながっていなければ、届いていたのは、いま探している人だけです。
以下、広告で届く相手と届かない相手を分けたうえで、公表されている調査と、弊社が伴走した現場の記録を並べます。
1. 止めた月にゼロへ戻るのは、失敗ではなく仕様です
求人広告の接点は、求職者が求人サイトやハローワークの端末を開いた、その瞬間にだけ発生します。開いていない人の前には、広告は1度も現れません。
ですから出稿を止めると、翌月からの応募は減るのではなく、消えます。効果が薄かったのではありません。効果が続かない作りになっています。この2つは、同じ「応募ゼロ」でも打つ手がまったく違います。
効果が薄いのであれば、原稿を書き直す、掲載枠を上げる、条件を良くする、という手当てが効きます。効果が続かないのであれば、原稿をいくら直しても、止めた月にはやはりゼロへ戻ります。直す場所が原稿ではないからです。
採用に予算をつけた月だけ応募があり、つけなかった月はゼロ。この形が数年続いているとしたら、それは広告の出来の問題ではありません。御社と地元の人とのあいだに、広告以外の接点が1本もない、という状態です。
2. 「いま探している人」は、通勤圏では常に少数です
求人広告が届く相手は、いま探している人だけです。そして地元の通勤圏に限れば、その人数は常に少数にとどまります。全国から人を集める前提の会社でなければ、母数はもともと小さいままです。
ここで、探していない人のほうに目を向けます。マイナビの新卒調査(2027年卒対象、有効回答2,800名、2026年3月20日から4月5日に実施)では、地元での就職を希望する学生が58.7パーセントでした。前年から2.3ポイント増え、4年ぶりの増加です。地元で働きたいと考えている人は、減ってはいません。
同じ調査には、もう1つ大事な結果があります。地元企業を知ったきっかけとして最も多かったのは「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で、44.0パーセントでした。求人広告ではありません。人づてです。
この調査は新卒の学生を対象としたものですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。それでも、地元で働きたい人がいて、その人たちが会社を知る経路は求人広告の外側にある、という構図は、弊社が中途採用の現場で見てきた景色と重なります。
弊社がいちばん申し上げたいのは、ここです。地元の人は、御社を知らないのではありません。知る機会がなかっただけです。求人広告は、いま探している人にしか届きません。探していない時期の人の日常には、1度も現れていません。
だから、探し始めた瞬間に思い出してもらえる会社が1社もない、という状態が生まれます。ハローワークに求人を出しても応募が来ないという話も、たどると同じ場所に着きます。
3. 出稿を止めても消えない接点は、3つあります
広告と違って、止めても残るものを挙げます。どれも、探していない時期の人の日常に置けるものです。
- 家に残る紙。配布物は、読まれた日ではなく、捨てられるまでのあいだ効いています。冷蔵庫に貼られた1枚は、半年後に転職を考え始めた日にもそこにあります
- 人が話すときの手がかり。社員のご家族や取引先の方が、御社を人に説明できる言葉を持っているかどうかです。前項の調査で1位だった「知り合いの勤務先の話」は、この手がかりがある会社でしか起きません
- 検索されたときに出るもの。名前を聞いた人が後から調べます。そのとき出てくるのが求人票だけだと、条件しか分かりません。働く姿が載っている場所が要ります
3つに共通しているのは、出稿を止めても消えないことと、探していない人に先に届けられることです。求人広告にはこの2つがありません。逆に、この3つには「いま探している人にすぐ届く」という広告の長所がありません。役割が違います。
置き場所を変える話は、地元の人に会社を知ってもらうにはで、もう少し具体的に書いています。
4. 求人サイトで応募ゼロだった会社が、配布から10日で動きました
大阪市港区の前田機械株式会社さまは、求人サイトに掲載しても応募がゼロという状態が続いていました。条件を書き直しても、掲載を続けても、動きがありませんでした。
弊社がご一緒したのは、採用マンガを作り、地域へ配布することでした。求人票の中身ではなく、置き場所を変えました。仕事の内容と、そこで働く人の一日を、探していない人の家に先に届けています。
配布から10日で、工場見学の申し込みが入りました。そのまま採用に至り、現在は第2弾を継続して運用されています。
正直に申し上げると、この1件だけで方法の優劣は決まりません。業種も、地域も、そのときの求人倍率も違えば、同じ結果にはなりません。それでも1つだけ確かなことがあります。会社は変わっていません。仕事も、条件も、募集人数も同じでした。変えたのは、誰の目に、いつ触れるかだけです。
弊社がマンガという形をとっているのも、絵が珍しいからではありません。条件表では伝わらない「ここで働く一日」を、探していない人が読み飛ばさない形で置けるからです。
5. 広告をやめてください、という話ではありません
誤解のないように申し添えます。求人広告は、いま探している人へ最短で届く手段です。これを止める理由はありません。
問題は、接点が広告1本しかない状態です。1本しかなければ、出稿を止めた瞬間にゼロへ戻ります。来年も再来年も、予算をつけた月だけ応募がある形が続きます。
ですから順番はこうなります。広告は続けたまま、止めても残るものを1つだけ足す。足したものは、その月には成果が出ません。半年後や1年後に、探し始めた人が御社の名前を思い出す形で返ってきます。
採用の費用を「今月の応募数で割る」考え方だと、この1つは永遠に足せません。広告費と、知られている状態をつくる費用は、別々に置いてください。前者は今月の数字で、後者は来年の応募がどこから来たかで測ります。
よくあるご質問
Q1. 予算が限られています。広告と配布物、どちらを先に削るべきですか。
削る前に、いまの応募がどちらから来ているかを数えてください。広告からしか来ていないのであれば、広告を削るとゼロになります。まず削るのではなく、広告の掲載枠を1段階下げて浮いた分で、止めても残るものを小さく始めることをお勧めします。
Q2. 半年後や1年後に効くと言われても、それまで人が採れません。
そのとおりです。ですから広告は続けてください。この記事は広告の代わりを提案するものではなく、広告を止めた月にゼロへ戻る構造そのものを、時間をかけて変える話です。急ぎの1名は広告で、来年の1名は別の経路で、と分けてお考えください。
Q3. 会社の知名度がないので、配っても読まれないのではありませんか。
知名度がないから読まれないのではなく、読む理由がないから読まれません。会社案内の体裁で配れば、知名度のあるなしにかかわらず捨てられます。読む理由になるのは、そこで働く人の一日です。読み物として成立していれば、社名を知らない方でも最後まで読まれます。
Q4. 社員の家族が会社を説明できるかどうかは、どうやって確かめますか。
社員の方に、ご家族から仕事の内容をどう聞かれるかを尋ねてみてください。「機械の会社」で止まっているのか、何を作っている会社かまで言えるのかで分かります。ここが止まっている状態では、人づてで伝わることはありません。
Q5. 採用の広告を出さずに人を採っている会社は、実際にありますか。
あります。ただし、そういう会社が何もしていないわけではありません。求人の外側で、地元に知られている状態を先につくっています。広告をやめられたのは結果であって、最初からやめていたわけではないという点は、正直に申し上げておきます。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
いま御社の名前を、地元で転職を考え始めた方が思い出せるとしたら、その手がかりはどこに置いてありますか。
思い当たるものが1つもなければ、それが今の状態です。ご相談のときに、いま配っているものを1枚お持ちください。一緒に見ます。
探していない人の日常に、働く姿を先に置いています。採用マンガプロジェクトを見る
広告は、いま探している人にしか届きません。地元の人は、御社を知らないのではなく、知る機会がなかっただけです。
では、止めても残るものは何か
応募ゼロから、何が変わったか


