
給与を少し上げた。求人サイトをもう1つ増やした。求人票の文章も、写真も入れ替えた。掲載期間を延ばして、ハローワークにも出し直した。それでも、届いた応募は先月と同じ1件か2件。打てる手は全部打ったつもりなのに、何が足りないのか分からない。「これ以上、何を変えれば応募は増えるのでしょうか」。そんなふうに、求人の管理画面を眺めておられませんか。
「求人の応募を増やすには、何から変えればいいですか」
変えるのは、求人票の中身より先に、御社の名前を知っている人の数です。応募の数は、御社を知っている人の数と、その中で応募に踏み出す人の割合の掛け算で決まります。条件・媒体・求人票の書き直しは、どれも「いま求人を探している人」の中で割合を上げる手です。いま探していない地元の方が、御社を知る回数を増やす手を、もう1本足してください。そのうえで、知った方が踏み出せない理由(入ったあとの不安)を、先に取り除いておきます。
以下、応募を増やそうとしてよく打たれる4つの手と、それが効く範囲、応募の数を決める2つの掛け算、知っている人を増やす方法、踏み出す割合を上げる方法、応募ゼロから2期目へ続いている例、前・中・後で回す運用、明日からできる3つ、の順に書きます。
1. 応募を増やそうとして、よく打たれる4つの手
応募が足りないとき、多くの会社が次の4つを順に試されます。どれも間違いではありません。
- 条件を上げる。給与・休日・手当を見直します。比べられたときに負けない土俵を作る手です。
- 媒体を増やす。求人サイトを2つ、3つと増やし、ハローワークや求人誌にも出します。目に触れる場所を広げる手です。
- 求人票を書き直す。仕事内容を具体的にし、写真を入れ替え、職場の雰囲氣を書き足します。開いた方に伝わる量を増やす手です。
- 掲載期間を延ばす、上位に表示させる。検索結果の中で見つけてもらう回数を増やす手です。
ただ、4つには共通点があります。どれも、いま求人サイトやハローワークで仕事を探している人の画面の中で、御社が選ばれる割合を上げる手だということです。その画面の中には、条件で上回る大きな会社も、広告に予算をかける会社も並んでいます。中小の会社がいちばん勝ちにくい場所で、割合だけを上げようとしている。だから、手を打つたびに費用は増え、応募は思ったほど増えません。求人広告を止めた月に応募がゼロに戻る理由は求人広告を止めた月に、応募もゼロに戻るのはなぜに書きました。
2. 応募の数は、2つの掛け算で決まります
応募の数を分解すると、次の2つになります。
- 御社を知っている人の数。求人を開く前に、どこかで御社の名前や仕事の様子を見聞きしたことのある人です。
- その中で、応募に踏み出す人の割合。知ってはいるけれど、「自分にできるだろうか」「入ってから困らないだろうか」と迷っている人が、実際に連絡をくださる割合です。
1つ目の数が小さいままでは、2つ目の割合をいくら上げても、応募は増えません。そして、1つ目の数は、求人を出している期間だけの話ではありません。求人サイトに載っていない日にも、地域の中で少しずつ増やしていけるものです。弊社が採用の仕事でいちばんお伝えしたいのは、この1つ目です。地元の人は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった。応募が来ない会社の多くは、この機会を一度も作っていません。
応募が来ない理由を「届かない・選ばれない・踏み出せない」の3つに分けた見方は求人に応募が来ない理由は、何ですかに書きました。この記事は、その先の「では、何から増やすか」の話です。
3. 知っている人を増やすのは、求人の外です
求人は、いま仕事を探している人にしか届きません。けれども、通える範囲に住んでいて、いまは探していないけれど、半年後や来年に転職を考えるかもしれない方は、地域の中にたくさんおられます。その方々の日常に、求人より先に御社の名前と働く様子を置いておくことが、1つ目の数を増やす手です。
公表されている調査にも、手がかりがあります。マイナビの2027年卒の学生を対象とした調査(回答2,800名・2026年3月20日から4月5日)では、地元(Uターンを含む)で働きたいと答えた学生が58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加しました。同じ調査で、将来は地元で働きたいと考えている層が、高校生までに地元の企業を知った機会として最も多く挙げたのは「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で、44.0%でした。求人を見た、ではありません。暮らしの中で、働いている人の話を聞いた、です。
※ マイナビ「2027年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」(2026年5月発表)。大学生・大学院生が対象の新卒調査であり、44.0%は将来的に地元就職を希望する層に限った値です。中途採用にそのまま当てはめることはできませんが、会社を知る経路が求人の外にあるという点は、地元で人を探す会社に共通する手がかりです。
地元の暮らしの中で御社を知っていただく経路は、たとえば次の3つです。
- ポストに届く紙。求人チラシではなく、働く人の顔と場面が描かれた、読み物としての紙です。チラシを撒いて反応が無かった経験のある会社ほど、中身を変える価値があります。読まれる紙の作り方はポスティングチラシの反応率を上げるにはに書きました。
- 社員の方のご家族と近所。社員の方が家で「うちの会社はこんな所」と話せる物を、会社が渡しているかどうかです。
- 地域の行事や、通勤路で目に入る場所。求人票ではなく、働く人の物語が、日常の視界に入る形で置かれているかどうかです。詳しくは地元の人に会社を知ってもらうにはに書きました。
4. 踏み出す割合は、不安を先に見せると上がります
御社を知った方が、すぐに応募してくださるとは限りません。知ってから応募までのあいだで、多くの方が口に出さずに迷っています。迷いの中身は、だいたい決まっています。未経験でも、ちゃんと教えてもらえるのか。説明に無かったことが起きたら、どうなるのか。納期で追い立てられないか。慣れないうちに、きつく当たられないか。すぐに結果が出なかったとき、見放されないか。
この不安は、求人票に「未経験歓迎」「アットホームな職場です」と書いても消えません。どの会社の求人票にも同じ言葉が並んでいるからです。消えるのは、その場面が実際にどう扱われたかを、物語で先に見たときです。良い日の話ではなく、うまくいかない日の話です。
大阪市港区で大型金属の精密切削加工をされている前田機械さまの採用マンガは、最初からこの形で組まれています。表紙の帯は「異業種・未経験歓迎!」。誰に読んでいただく紙かが、1行目で決まっています。第1話は、初日に遅刻した新人に「まあ来たんやからええわ」と声がかかり、工具の場所を「左の棚、3段目やで」と教わる場面。第2話は「説明と全然ちがう」という戸惑いを「一緒に考えようや」で受ける話。第3話は、失敗を自分から申し出た新人に「ええ判断や。隠すより100倍マシや」と返す話です。読んだ方は、入ってから困ったときに何が起きるかを、応募の前に知ることができます。
入る前にうまくいかない日を見せておくことは、応募を増やすだけでなく、入ったあとの「聞いていた話と違う」も防ぎます。この点は採用のミスマッチは、どうすれば防げますかに書きました。
5. 応募ゼロから、2期目へ続いている例
前田機械さまは、求人サイトに掲載しても応募がゼロの状態から始まりました。条件や媒体を足す前に、先ほどのマンガをポスティングの紙として地域へ配布し、あわせてハローワークにも展開しました。配布から10日で見学の応募が入り、採用に至りました。採用されたのは30代の方です。いまは採用マンガの第2弾を、一緒に継続して運用しています。
ここで起きたのは、求人票の書き直しではありません。求人サイトを見ていなかった地元の方の家に、働く人の物語が先に届き(知っている人の数)、そこで入ってからの不安が扱われる場面を見た方が、見学へ踏み出した(踏み出す割合)。2つの掛け算が、両方とも動いたということです。
説明会でも、同じことが起きます。弊社がご一緒したアイケイケイさまでは、5名の参加を見込んでいた説明会に28名が参加されました。告知の量を増やしたのではなく、説明会の前に、参加する方が会社の物語に触れていたかどうかの違いです。
6. 前・中・後で回すと、応募は毎年積み上がります
ここまでを、1枚の紙を作って配る話として読まれたのであれば、半分です。紙を1回配っただけでは、知っている人の数は、翌年にはまた減っていきます。弊社が担うのは、作ることではなく、採用の前・中・後を設計して、回し続けることです。
前。社員の方と一緒に、入って最初の年に困った場面を選びます。選ぶのは弊社ではなく、社員の方ご自身です。先輩の方が「自分はここで戸惑った」と語った場面が、そのまま物語の1話になります。この時間に、社員の方は自分の言葉で会社を語れるようになります。
中。物語を、いま探していない地元の方の日常へ置きます。ポストへ、社員の方のご家庭へ、地域の行事へ。見学や面接では、物語の続きを社員の方が自分の口で話します。来てくださった方は聞くだけでなく、「自分ならこの場面でどうするか」を考え、質問を返してくださいます。
後。見学に来てくださった方が、どこで御社を知ったか、どの場面が心に残ったかをうかがい、次の1話を決めます。1期目の物語が、2期目の入口になります。前田機械さまのように第2弾、第3弾と続けていく中で、地域の中に御社の名前を聞いたことのある方が、少しずつ増えていきます。これが、応募が毎年ゼロから始まらない状態です。毎年ゼロから始めてしまう形の話は中小企業の採用で、毎年苦戦するのはなぜですかに書きました。
弊社はこの流れを、1年以上、できれば何年も続くプロジェクトとしてご一緒しています。社員の方が場面を選び、ご家族や地域の方が話題にし、読んだ方が自分ならどうするかを考えて質問をくださる。マンガをきっかけに、関わる人が自分で動く形です。弊社はこれを、マンガと体験価値の組み合わせと呼んでいます。作って納めて終わりの制作ではなく、プロジェクト運用者として、2期目、3期目へ一緒に歩きます。
7. 明日からできる3つ
- この1年に応募してくださった方に、御社の名前を初めて知ったのはどこだったかをうかがってください。求人サイトと答える方と、それ以外と答える方の比率が、いまの1つ目の掛け算の姿です。
- 入社3年目までの社員の方に「入って最初の年に、いちばん困った日はいつでしたか。そのとき、誰が何と言いましたか」と聞いてください。出てきた場面が、求人票の「未経験歓迎」の1行を、本当に信じていただける物語に変える種です。
- 求人を出していない月に、地元の方の目に御社の名前が触れる場所が1つでもあるかを書き出してください。1つも無ければ、そこが応募を増やす最初の1手です。
よくあるご質問
Q1. 給与や休日の条件を上げるのは、意味が無いのでしょうか。
意味はあります。比べられたときに大きく負けていれば、知っていただいても選ばれにくくなります。ただ、条件を上げる手が効くのは、すでに御社を知って比べている方に対してです。比べる候補に入っていない方には、条件の欄そのものが見られていません。条件の見直しと、知っていただく機会づくりは、両方を並べて打つ手です。
Q2. 求人サイトを増やせば、知っている人の数も増えるのではありませんか。
増えるのは、いま探している方の画面に御社が出る回数です。いま探していない方の数は、求人サイトをいくつ増やしても変わりません。地元で転職を考えはじめる方の多くは、探しはじめる前に名前を聞いたことのある会社から見ていきます。その名前を先に届けておくのは、求人サイトの外の仕事です。
Q3. ポスティングを試しましたが、反応がありませんでした。
反応が無かった紙の多くは、求人票をそのまま紙にした物です。ポストを開けた方は、いま仕事を探していないので、条件の一覧は読まれずに捨てられます。読まれるのは、働く人の顔と場面がある、読み物としての紙です。前田機械さまが配布したのは、求人チラシではなく、入って最初の年の不安を描いたマンガでした。
Q4. 応募が増えても、合わない方ばかり来ては困ります。
うまくいかない日を先に見せておくと、その場面を読んで「自分には合わない」と感じた方は応募されません。反対に、「この会社なら困ったときに聞ける」と感じた方が応募してくださいます。応募の数だけでなく、合う方の割合も上がるのが、不安を先に見せる形の特長です。
Q5. どのくらいで応募が増えますか。
前田機械さまでは、配布から10日で見学の応募が入りました。ただ、地域の中に御社の名前を聞いたことのある方が十分に増えるのは、2期目、3期目にかけてです。だから1回で終わらせず、1期目の反応から次の1話を決める運用にしています。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
求人を出していない月に、地元の方が御社の名前を目にする場所は、いくつありますか。
その数が、来年の応募の数の土台です。
社員の方と一緒に、入って最初の年のうまくいかない日を物語にして、いま探していない地元の方の日常へ先に置き、前・中・後を回して2期目・3期目へつないでいくところまで運用しています。採用マンガプロジェクトを見る
この1年の応募の数と、応募してくださった方がどこで御社を知ったかをお持ちいただければ、どちらの掛け算から動かすとよいか、その場で一緒に見当をお出しします。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考ブログ
応募の数は、御社を知っている人の数と、踏み出す人の割合で決まります。求人票を直す前に、いま探していない地元の方の日常へ、御社の名前と、うまくいかない日の物語を先に置いてください。


