
7月1日に求人票を出した。地元の高校も、例年どおり回った。それなのに、9月5日を過ぎても応募書類が届かない。10月の終わりに進路指導の先生へ電話をすると、「今年は生徒が少なくて」と申し訳なさそうに言われる。同じ町の、名前の知られた会社には何人も応募があったと耳にする。来年も同じことになるのではないか。いつまで、現場の高齢化を見ているしかないのか。そんな思いで、秋を迎えていませんか。
「高卒採用で、応募が来ないのはなぜでしょうか」
多くの場合、求人票の中身が悪いからではありません。生徒も、先生も、保護者も、求人票を見る前に御社を知る機会がなかったからです。地元の人は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった。高卒採用では、この「知る機会」の差が、そのまま応募の差になって表れます。
以下、高卒採用の1年の流れ、応募が来ない3つの場面、生徒が入る前に抱えている不安、知る機会を前・中・後で作る方法、弊社のやり方、今週できる3つ、の順に書きます。
1. 高卒採用の1年は、日付で決まっています
高校生の採用は、国と学校と経済団体の申し合わせで、全国一律の日程が決まっています。厚生労働省が2026年2月16日に公表した、2027年3月に卒業する高校生の日程は次のとおりです。
- 6月1日 ハローワークが、高校生向けの求人申込書の受付を始めます。求人の内容はハローワークが確認したうえで学校へ届きます。
- 7月1日 企業から学校への求人申込と、学校訪問が始まります。
- 9月5日 学校から企業へ、生徒の応募書類の提出が始まります(沖縄県は8月30日)。
- 9月16日 企業による選考と、採用内定が始まります。
もう1つ、大学生の採用と大きく違う点があります。選考の始まりから一定の期間は、生徒1人が応募する会社を1社に絞る、いわゆる「一人一社制」の慣行です。全国で決めているのは選考開始日などで、複数の会社へ応募できるようになる時期は、都道府県ごとの会議が地域の事情に合わせて申し合わせています。御社の地域の取り扱いは、労働局やハローワークで確かめてください。
そして、相手の数です。厚生労働省のまとめでは、2026年3月に卒業した高校生の求人倍率は、3月末の時点で4.12倍でした。就職を希望する生徒1人に、4件を超える求人があった計算です。生徒が1社しか選べない時期に、4社以上の中から選ばれる。高卒採用は、そういう場です。
2. 応募が来ないのは、この3つの場面です
応募が来ない会社には、決まって同じ場面があります。
- 先生が、御社の仕事を生徒に話せない。進路指導の先生は、何百枚もの求人票を前に、生徒1人ひとりに合う会社を一緒に探します。そのとき、先生自身が働く様子を思い浮かべられる会社の名前が、先に口から出ます。
- 生徒が、7月に初めて御社の名前を見る。求人票に並ぶのは、仕事の名前、給与、休日、勤務地です。条件を比べれば、名前の知られた会社や、給与の高い会社が目に留まります。初めて見た名前の会社を、1社しか選べない枠に入れるのは、17歳には勇氣が要ります。
- 家で、名前が出ない。高校生の就職は、保護者と相談して決まります。食卓で「その会社、どんなところ?」と聞かれて、生徒が答えられなければ、話はそこで止まります。
どの場面も、求人票を書き直すだけでは変わりません。求人票は「いま選んでいる人」にしか届かないからです。
3. 生徒は、入る前にこんなことを怖がっています
応募をためらう生徒の胸の内は、条件の比べ合いだけではありません。入ったあとの一日が、想像できないことへの不安です。
- 初めての機械や道具を、誰が、どこまで教えてくれるのか。
- 説明に無かったことが起きたとき、聞いてよい人はいるのか。
- 失敗したとき、きつく当たられないか。
- 大人ばかりの職場で、昼休みに一人にならないか。
- すぐに上手くできなかったら、居づらくならないか。
大人には小さく見える不安でも、初めて働く生徒にとっては、応募をやめる十分な理由になります。この不安に、入る前に答えている会社が選ばれます。入る前に、うまくいかない日を見せておくことは、入社後に辞めないことにもつながります。
4. 学校の側も「知る機会」を求めています
京都府高等学校就職問題検討会議のワーキングチームは、2021年12月の報告で、府内の高校ではすでに応募前の職場見学を行うよう指導していると書いています。そのうえで、生徒が地元の中小企業の良さを理解し、企業の知名度や賃金の額以外に、就職後の暮らしや歩みを考えて会社を選べるようにすることが大切だ、という趣旨をまとめています。
学校も、知名度と給与だけで選ばせたいわけではありません。働く姿を伝える材料があれば、先生はそれを生徒に渡せます。逆に、材料のない会社は、どれほど良い職場でも、先生の口から名前が出にくいのです。
5. 知る機会は、前・中・後で作ります
高卒採用は日付で決まっているぶん、逆算がしやすい採用です。7月の求人票を出発点にせず、その前から1年を通して設計します。
前(11月から6月) 名前を、求人票より先に届ける
今の時期から春までが、いちばん手を打てる時期です。2年生の職場体験やインターンシップ、地域の催し、学校の進路説明の場に、働く姿を伝える読み物を持って行きます。先生が生徒に手渡せるもの、生徒が家に持ち帰って保護者に見せられるものにしておくのが要です。
中(7月から9月) 見学の1日を、思い出せる1日にする
求人票を出したら、職場見学が勝負です。見学は「設備の案内」で終わらせず、春に読んでもらった場面の続きを、本物の現場で確かめていただく1日にします。工場見学が効くのは、見学の前に知る機会を作った会社です。
後(10月から翌年) 入った人と一緒に、次の年の物語を作る
採用できた年は、入社した方の最初の1年を、次の年の生徒に渡す物語にします。採用できなかった年も、なぜ選ばれなかったのかを先生に率直にうかがい、次の年の材料にします。毎年ゼロから始めないことが、2年目、3年目の差になります。
6. 弊社がしていること
弊社は、マンガで「働く一日」を見える形にし、それを1年を通して届け続けるプロジェクトを運用しています。
マンガを使うのは、条件では伝わらない場面が伝わるからです。初日に先輩が隣で手本を見せる場面、失敗した日に声をかけてもらう場面、昼休みの何氣ない会話。生徒はその場面の中に自分を置いて、働く姿を想像します。作る過程では、社員の皆さまに自分の仕事を語っていただきます。社内の皆さまも、読む生徒も、主体的に関わる形になるので、伝わる言葉に実感がこもります。
そして、作って終わりにしません。どの学校の、どの先生に、いつ渡すか。見学の日にどこを見ていただくか。入社した方の声をどう次の年につなぐか。前・中・後を設計して、何年も続けて回します。
高卒採用の例ではありませんが、大阪市港区で大型金属の精密切削を手がける前田機械さまは、求人サイトに掲載しても応募がゼロの状態から、採用マンガをポスティングチラシとして地域に配布されました。配布から10日で見学の応募が入り、採用に至っています。現在は第2弾を、一緒に続けて運用しています。探していなかった地元の方に、先に届いた例です(前田機械さまの事例)。
7. 今週できる3つ
- 今年応募のなかった学校の先生に、理由を1つだけうかがいます。「御社の仕事を、生徒にどう説明されましたか」と聞くと、先生の手元に足りなかった材料が分かります。
- 入社1年目から3年目の社員の方に、「入る前に一番怖かったこと」を聞いて、3つ書き出します。それが、次の年の生徒の不安です。
- 来年6月1日から逆に数えて、冬と春に生徒や先生と会える場を、カレンダーに2つ書き込みます。
よくあるご質問
Q1. 求人票の書き方を変えれば、応募は増えますか。
書き方を整えることは大切です。ただ、求人票は生徒が選ぶ時期にしか読まれません。読まれる前に名前を知っていただいているかどうかで、同じ求人票でも目の留まり方が変わります。
Q2. 給与や休日で、大きな会社に勝てません。
条件で比べられる場に立つ前に、別の物差しを渡しておくことです。誰に教わり、どんな一日を過ごし、何年後にどうなっていけるのか。生徒と保護者が想像できる材料は、会社の大きさに関係なく作れます。
Q3. 学校訪問は、7月1日より前にしてもよいのですか。
求人申込と、それに伴う学校訪問は7月1日からと決められています。それより前は、求人の話ではなく、職場体験や地域の催しなど、学校や地域が設けている場で接点を作ります。具体的な取り扱いは、ハローワークや学校にご確認ください。
Q4. 小さな会社でも、職場見学で選ばれますか。
選ばれます。見学で生徒が見ているのは設備の新しさより、そこで働く人の様子です。先輩が声をかけてくれるか、質問しやすいか。その1日を、前から読んでいた場面の続きにできれば、小さな会社ほど人の顔が伝わります。
Q5. 1年で結果が出なかったら、やめるべきでしょうか。
高卒採用は、先生との関係も、生徒の間の評判も、年をまたいで積み上がります。1年目に応募がなくても、先生が御社を生徒に話せるようになっていれば、それが2年目の土台です。続けて何が変わったかを、毎年確かめながら進めてください。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
地元の高校の進路指導の先生は、御社の仕事を、生徒にどんな言葉で話してくださっているでしょうか。
すぐに浮かばないなら、来年の求人票より先に、先生に手渡せる「働く一日」を用意するところから始めてみてください。
先生や生徒に知っていただく場面づくりから、見学の1日、入社した方の声を次の年へつなぐところまでを、プロジェクトとして運用しています。採用マンガプロジェクトを見る
地元の高校とのこれまでのやりとりをお聞かせいただければ、御社の場合は何から始めるとよいか、ご一緒に考えます。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考ブログ
高卒採用は、7月1日の求人票から始まるように見えて、実はその前の1年で決まっています。地元の生徒は、御社を知らないのではなく、知る機会がなかっただけです。先生と生徒と保護者に、求人票より先に「働く一日」を届け、見学の1日、入社した方の声へと、前・中・後を毎年つなげていってください。


