
就職情報サイトに掲載し、合同説明会にも出て、会社説明会の日程も3回組んだ。それなのに、エントリーは数名。説明会の当日に来てくださったのは2名で、そのうち1名は選考の途中で連絡が途絶えた。隣のブースの会社には列ができていたのに、うちの前は通り過ぎられるばかり。「うちのような会社では、新卒は無理なのでしょうか」。そんなふうに、今年の採用を振り返っておられませんか。
「新卒採用で、学生が集まらないのはなぜですか」
集まらないのは、会社の大きさや給与の差ではなく、就活が始まる前に、学生が御社の名前を聞いた回数がゼロだからです。学生は、探し始めてから会社を知るのではありません。探し始める前に聞いたことのある会社の中から、探し始めます。名前を聞いたことのない会社は、比べる前に、候補の外にあります。だから、勝負は就職情報サイトの中ではなく、学生がまだ探していない日常の中で、先に始めておく必要があります。
以下、学生が集まらないまでに起きている3つの段階、公表されている調査で分かっていること、就活が始まる前の学生に名前が届く3つの経路、学生の不安を先に見せる物語の作り方、前・中・後で回して2年目へつなぐ運用、明日からできる3つ、の順に書きます。
1. 「集まらない」の前に、3つの段階があります
学生が来ないという結果の手前で、順に3つのことが起きています。
- 名前を聞いたことがない。就職情報サイトの検索画面には、業種と勤務地で数百社が並びます。学生は、そのすべてを開きません。開くのは、どこかで名前を聞いたことのある会社です。聞いたことのない会社は、条件が良くても、開かれる前に画面の下へ流れていきます。
- 比べる土俵に上がれない。合同説明会で学生が持っているのは、会場図に書かれた社名と業種だけです。知っている社名があればそこへ向かい、知らない社名の前では、通路を歩く数歩のあいだに立ち止まるかどうかを決めます。材料が社名しか無いのですから、知らない会社が飛ばされるのは、学生の冷たさではなく、順番の問題です。この構造は合同説明会でブースに学生が来ない理由に書きました。
- ご家族に聞かれて答えられない。ようやく説明会に来てくださった学生が、家に帰って「どんな会社なの」と聞かれたとき、答えられるのは社名と業種と所在地だけです。ご家族もその会社の名前を聞いたことがなければ、「もう少し大きい所を見たら」という一言で、選考は止まります。ご家族には、会社を知る機会が一度もありません。
3つとも、原因は同じです。会社の中身が悪いのではなく、学生とそのご家族が、御社の名前を聞く機会が、就活の前に一度も無かったのです。
2. 公表されている調査で分かっていること
学生がどこで会社を知るのかについて、公表されている調査があります。マイナビの2027年卒の学生を対象とした調査(回答2,800名・2026年3月20日から4月5日)では、地元(Uターンを含む)で働きたいと答えた学生が58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加しました。
同じ調査で、将来は地元で働きたいと考えている層に、高校生までのあいだに地元の企業を知った具体的な機会をたずねたところ、最も多かったのは「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で、44.0%でした。求人を見た、ではありません。家の食卓や、近所の付き合いの中で、働いている人の話を聞いた、です。
ここで申し上げたいのは、学生が会社を知る場所が、就職情報サイトの中ではなく、就活が始まるずっと前の日常の中にある、ということです。弊社が採用の仕事で繰り返し申し上げている一文があります。地元の人は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった。学生についても、同じです。
※ マイナビ「2027年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」(2026年5月発表)。大学生・大学院生が対象の調査であり、44.0%は将来的に地元就職を希望する層に限った値です。中途採用にそのまま当てはめることはできません。
3. 就活が始まる前の学生に、名前が届く経路は3つです
就職情報サイトの掲載順を上げることや、合同説明会のブースを大きくすることは、いま探している学生の画面の中で競う手です。そこは、大きな会社がいちばん強い場所です。中小の会社が勝負できるのは、学生がまだ探していない時期に、その日常へ名前を先に置く所です。経路は3つあります。
- ご家族と近所。44.0%の学生が会社を知った経路です。社員の方のご家庭で、ご家族が「お父さんの会社はこんな所」と話せる物を、会社が渡しているかどうか。渡していなければ、話は「忙しそう」で終わります。
- 地元の暮らしの中。通勤路、商店街、地域の行事、ポストに届く紙。求人票ではなく、働く人の顔と場面が、日常の視界に入る形で置かれているかどうかです。詳しくは地元の人に会社を知ってもらうにはに書きました。
- 先輩社員の語り。学生がいちばん信じるのは、採用担当の説明ではなく、入社3年目の先輩が自分の言葉で話す「入って最初の年に困ったこと」です。それを語れる社員の方が何人いるかで、説明会の空氣は変わります。
3つに共通するのは、会社が一方的に発信する形ではなく、社員の方とそのご家族、地域の方が、自分の言葉で会社のことを話せる状態を先に作る、という点です。
4. 学生の不安を、入る前に見せておきます
名前が届いたあと、学生が知りたいのは、良い日の話ではありません。就職情報サイトにも採用サイトにも「先輩の一日」の欄はあり、どの会社も良い日が並んでいます。学生が本当に知りたいのは、うまくいかない日に何が起きるか、です。
学生が口に出さずに抱えている不安は、だいたい決まっています。ちゃんと教えてもらえるのか。説明に無かったことが起きたとき、どうなるのか。納期で追い立てられないか。経験が無いことを理由に、きつく当たられないか。すぐに結果が出なかったとき、見放されないか。この不安は、説明会で「アットホームな職場です」と言っても消えません。消えるのは、その場面が実際にどう扱われたかを、物語で先に見たときです。
大阪市港区で大型金属の精密切削加工をされている前田機械さまの採用マンガは、最初からこの形で組まれています。第1話は、初日に遅刻した新人に「まあ来たんやからええわ」と声がかかる場面から始まります。第2話は「説明と全然ちがう」という戸惑いを「一緒に考えようや」で受ける話。第3話は、失敗を自分から申し出た新人に「ええ判断や。隠すより100倍マシや」と返す話です。良い日ではなく、うまくいかない日を先に見せています。
前田機械さまは、求人サイトに掲載しても応募がゼロの状態から始まりました。このマンガを地域へ配布したところ、配布から10日で見学の応募が入り、採用に至りました。採用されたのは30代の方で、新卒ではありません。ただ、入る前に不安が扱われる場面を見た人が、応募に踏み出すという順番は、新卒でも同じです。前田機械さまとは、現在は第2弾を継続して運用しています。
説明会でも、同じことが起きます。弊社がご一緒したアイケイケイさまでは、5名の参加を見込んでいた説明会に28名が参加されました。増えたのは、説明会の告知の量ではなく、説明会の前に学生が御社の物語に触れていたかどうかです。
5. 前・中・後で回し、2年目の採用へつなぎます
ここまでを、1枚のマンガを作る話として読まれたのであれば、半分です。弊社が担うのは、作ることではなく、採用の前・中・後を設計して、回し続けることです。
前。社員の方と一緒に、入って最初の年に困った場面を選びます。選ぶのは弊社ではなく、社員の方ご自身です。先輩社員の方が「自分はここで戸惑った」と語った場面が、そのまま物語の1話になります。この時間に、社員の方は自分の言葉で会社を語れるようになります。
中。物語を、学生がまだ探していない日常へ置きます。社員の方のご家庭へ、地域の暮らしの中へ、学校との接点へ。説明会では、物語の続きを先輩社員の方が自分の口で話します。学生は聞くだけでなく、「自分ならこの場面でどうするか」を考え、質問を返してきます。
後。説明会に来てくださった学生の反応と、ご家族に話したときの反応を社員の方からうかがい、来年の1話を決めます。1年目の物語が、2年目の入口になります。1回配って終わりにせず、前田機械さまのように第2弾、第3弾と続けていく中で、地域の中に御社の名前を聞いたことのある学生が、少しずつ増えていきます。
弊社はこの流れを、1年以上、できれば何年も続くプロジェクトとしてご一緒しています。社員の方が場面を選び、ご家族が話し、学生が考えて質問する。マンガをきっかけに、関わる人が自分で動く形です。弊社はこれを、マンガと体験価値の組み合わせと呼んでいます。作って納めて終わりの制作ではなく、プロジェクト運用者として、2年目、3年目へ一緒に歩きます。
6. 明日からできる3つ
- 今年の説明会に来てくださった学生に、どこで御社の名前を初めて聞いたかをうかがってください。就職情報サイトと答える方が何人、それ以外と答える方が何人か。その比率が、いまの御社の名前の届き方です。
- 入社3年目までの社員の方に「入って最初の年に、いちばん困った日はいつでしたか」と聞いてください。出てきた場面が、来年の1話の候補です。良い日の話は聞かなくて構いません。
- 社員の方のご家族が、御社のことを一言で説明できる物を、何か1つ渡してください。名刺でも、行事の写真でも構いません。「忙しそう」以外の言葉が家の中で生まれれば、44.0%の経路が動き始めます。
よくあるご質問
Q1. 新卒は大手に流れるので、中小は中途に絞ったほうがよいのではありませんか。
条件で比べられる土俵では、そのとおりです。ただ、マイナビの新卒調査では、地元で働きたい学生が58.7%と増えています。地元で探している学生にとって、通える範囲にある会社は、大手と並ぶ前に、まず知っているかどうかで決まります。絞る前に、知られているかを確かめる価値があります。
Q2. 就職情報サイトの掲載をやめてもよいのでしょうか。
やめる必要はありません。サイトは、いま探している学生が御社を確かめに来る場所です。ただ、名前を聞いたことのない学生は、そこへ来ません。サイトの外で先に名前が届いていて、初めてサイトの掲載が働きます。順番の問題です。
Q3. うまくいかない日を見せると、学生が怖がって引くのではありませんか。
引くのは、うまくいかない日を隠して入社したあとです。入る前に「失敗したらこう扱われる」が分かっている学生は、不安を持ったまま応募するのではなく、不安が扱われることを知って応募します。前田機械さまのマンガが応募につながったのは、良い日を描いたからではありません。
Q4. 学校との接点がありません。どこから始めればよいですか。
学校の前に、社員の方のご家庭と地域から始めます。マイナビの調査で最も多かった経路は、家族や知り合いの勤務先の話でした。社員の方が自分の言葉で会社を語れるようになることが、学校との接点より先です。
Q5. 1年で結果は出ますか。
説明会の参加人数は、1年目から変わることがあります。ただ、地域の中に名前を聞いたことのある学生が増えるのは、2年目、3年目にかけてです。だから、1回で終わらせず、1年目の反応から2年目の1話を決める運用にしています。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社の社員の方のご家族は、御社のことを、どんな言葉で話しておられますか。
その言葉が、学生が就活の前に御社の名前を聞く、最初の経路です。
社員の方と一緒に、入って最初の年のうまくいかない日を物語にして、学生がまだ探していない日常へ先に置き、前・中・後を回して2年目・3年目へつないでいくところまで運用しています。採用マンガプロジェクトを見る
今年の説明会の参加人数と、エントリーの数をお持ちいただければ、御社の場合はどの経路から名前を届けるとよいか、その場で一緒に見当をお出しします。30分の面談を予約する
参考ブログ
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学生は、探し始めてから会社を知るのではなく、探し始める前に聞いたことのある会社の中から探し始めます。就活の前の日常へ、御社の名前と、うまくいかない日の物語を先に置いてください。


