
夏の終わりの会議で、社長から「来年はフランスのジャパンエキスポに出てみよう」と言われた。担当を任されたものの、フランスの催しに出たことのある社員はいない。公式サイトを開いても、出展料の表が見当たらない。申し込みの締め切りも書いていない。言葉はどうするのか、品物はどう運ぶのか、何を社内の稟議に書けばよいのか。そして何より、高い費用をかけて1回出て、何も残らなかったらどうしよう。そんな不安を抱えたまま、秋が深まっていませんか。
「ジャパンエキスポ2027に出るなら、いつから何をすればよいのでしょうか」
いまから始めて間に合います。ただし、最初の1か月にやるのは申し込みではなく、現地で誰に会いに行くかを決めることです。そのうえで、年内に公式の窓口へ問い合わせ、年明けに見積りと稟議、会期の半年前から品物の手続、春に現地へ先に届ける物の用意、7月の会期、そして帰ってから続きを渡す8月以降、という順で動きます。会期は2027年7月8日(木)から11日(日)。きょうから数えて約8か月です。
以下、2027年の開催について公式に分かっていること、いま動き始める理由、月ごとの段取り(前)、会期の4日間(中)、帰ってから(後)、弊社がフランスで重ねてきたこと、明日からできる3つ、の順に書きます。
1. 2027年の開催について、公式に分かっていること
2026年10月30日の時点で、公式サイト(paris.japan-expo.com)から確かめられた事実と、弊社がこれまでの記事で確かめてきた事実を並べます。
- 会期は2027年7月8日(木)から11日(日)の4日間。第26回の開催です。開場は9時45分から18時30分と告知されています。
- 会場は、2026年まではパリ北郊のパリ・ノール ヴィルパント(Paris-Nord Villepinte)でした。2027年の会場の表記は、申し込みの際に公式で確かめてください。
- 出展の対象は、公式の案内で「アジアと関わりのある企業・専門団体・非営利団体・ファンジン」とされています。業種や企業規模の条件は書かれていません。
- 出展の申し込みは、公式サイトの問い合わせフォームで種別に出展者(Exposant)を選び、連絡先と自社の活動を書いて送る形です。
- 出展料の表と申し込みの締め切りは、公式サイトに掲示されていません。金額は、問い合わせのやりとりの中で示されます。
- 2026年(第25回)は、主催者の発表として、来場者222,048人、出展者1,016と報じられています。
つまり、日付は決まっているのに、料金と締め切りは自分から聞きに行かないと分からない催しです。ここが、国内の展示会と段取りがいちばん違うところです。
2. なぜ、いまから動き始めるのか
理由は2つあります。
1つ目は、待っていても知らせが届かないことです。フランスの日本文化の催しは、日程は1年ほど前に出ても、料金や出展の条件はあとから更新される運営が少なくありません。ナンシーのアニメスト(Anim’Est)では、2026年8月末の時点で、表紙は次の回に更新されているのに、よくある質問のページは前の回の記述のままでした。掲示を待っていると、受付が始まったことに氣づけません。
2つ目は、社内の手続のほうが時間を食うことです。見積りが届いてから稟議を回し、予算が付き、品物の手続に入る。国内の展示会なら数か月で回る流れも、言葉と時差と通関が挟まると、同じ月数では収まりません。会期から逆に数えると、年内に問い合わせを済ませておくのが、無理のない線です。
3. 月ごとの段取り(前)
ここからは、弊社がフランスの催しへの出展と、そのお手伝いを重ねてきた中で、無理なく回った順番です。月は目安です。
- 11月 会いに行く相手を10社書き出します。フランスの出版社、小売、学校、自治体、日本文化の団体。名前が出てこなければ、まだ申し込む時期ではなく、調べる時期です。あわせて、2年続ける前提で予算を考えるか、社内で一度だけ話しておきます。
- 12月 公式の問い合わせフォームから、出展者として名乗ります。フォームに書く「自社が何をしている会社か」の一文は、事実上の自己紹介です。11月に書き出した相手に向けた一文にします。
- 1月 届いた見積りで稟議を回します。規模の欄は「主催者発表・延べ・年」を添え、「4日間で延べ20万から22万人規模(2026年222,048人)」のように幅で書くと、数字を聞かれても困りません。展示品がある場合は、この時期に日本商事仲裁協会へATAカルネの利用登録をしておきます。登録は無料です。
- 2月から3月 ブースで何が起きるかを決めます。来場者の方が足を止める場面を1つ選び、言葉が通じなくても、その場面だけで何の会社か伝わる形にします。配る物と持ち帰る物を、2つの一覧に分けておきます。
- 4月から5月 ATAカルネを申請します。協会の案内では、利用登録から発給まで営業日で最短1週間ほど、発給手数料は18,000円からです。あわせて、11月に書き出した相手へ、会期の前に「7月に会場でお会いできませんか」と便りを届けます。
- 6月 社内で当日の役割を決めます。誰が足を止めた方に最初の一言をかけ、誰が記録を取るか。言葉に自信のない社員の方でも、渡す物と最初の一言が決まっていれば、ブースに立てます。
なお、EU27か国・イギリス・スイス・ノルウェーの計30か国では、2026年6月1日から電子カルネ(e-ATA)の運用が始まっています。日本から出す品物がいつ電子に切り替わるかは、申し込みの時点で協会に確かめてください。
4. 会期の4日間(中)
7月8日から11日の4日間で、やることは3つに絞ります。
- 会期の前に便りを送った相手と、実際に会う。会えた方、会えなかった方を、その日のうちに書き留めます。
- 足を止めた方が、どの場面で止まったかを記録する。何を見て、何を聞いてきたか。名刺の枚数より、こちらのほうが翌年に効きます。
- 伝わらなかったことを書く。言葉の壁で止まった場面、説明が長くなった場面。これが2年目の設計図になります。
来場者の方の多くは、自分でチケットを買い、日程を空けて会場に来ています。2026年の一般の4日通し券は107ユーロでした。たまたま通りがかった人ではない、という前提で、当日の一言を用意してください。
5. 帰ってから(後)
出展は、4日間で終わりません。帰ってからの3か月で、1年目の出展に意味があったかどうかが決まります。
- 8月 会場で会えた方に、会期中の場面の続きを届けます。お礼の一文だけで終えず、「あのときブースでお見せした場面には、続きがあります」と渡せる物を用意しておきます。
- 9月 社内へ報告します。現地の反応の記録、2年目に会いたい相手の名前、伝わったことと伝わらなかったこと。この3つが書ければ、2年目の稟議の土台になります。
- 10月 2028年の出展を決めます。1年目の記録から、会いに行く相手と、ブースで起こす場面を組み直します。
6. 弊社がフランスで重ねてきたこと
弊社は、ジャパンエキスポをはじめとするフランスのマンガ関連の催しに、2006年から2015年までに計11回出展してきました。2015年のジャパンエキスポでは、弁当のブースで5,000食をお出ししました。
正直に書きます。初回の出展で成果が出た年は、弊社にもありませんでした。前半は、出ること自体が目的になっていました。代表の松山がデジタルコンテンツ白書のフランスの章で取材した山陰国際観光協議会の記録(2012年から2013年)にも、1回の出展で成果が出ずにあきらめる、担当者が代わって情熱が続かない、という2つの理由が残っています。費用の高さより、1回で判断してしまうことのほうが、続かない理由になっていました。
そこで弊社がご一緒しているのは、御社のブースの前で来場者の方が足を止める理由を、社員の方ご自身が語れる物語にして、会場へ持っていくことです。御社の製品が使われる場面を1つ選び、マンガにして会期の前に現地へ届け、会場で手渡し、帰ってから続きを渡します。マンガはきっかけで、社員の方も、現地の来場者の方も、その先の相手も巻き込んで、みんなが主体的に動く形を作ります。弊社はこれを「マンガ×体験価値」と呼んでいます。
そして、この前・中・後を1つの流れとして設計し、1年目の記録から2年目、3年目の出展を組み立てます。作って納めて終わる制作会社としてではなく、この流れを一緒に回すプロジェクトの運用者としてご一緒しています。お付き合いは1回の出展で終わらず、何年も続いていくことを前提に組んでいます。
出展料の考え方はジャパンエキスポの出展料はいくらかに、品物の運び方はATAカルネでの持ち込みに、来場者数の推移はジャパンエキスポの来場者数の推移に、出る場所の決め方は海外の見本市は何から決めればよいかに書きました。
7. 明日からできる3つ
- 手帳の2027年7月8日から11日に印を付け、その日から逆に、12月の問い合わせ、1月の稟議、4月のカルネ申請の3つの日付を書き込みます。
- 会いに行きたい相手を、きょう3社だけ書き出します。10社に届かなくても構いません。名前が出ない分野が、調べる先です。
- 社内で「2年続けるなら、1年目は何で報告するか」を1行で決めておきます。この1行があると、1回で終わらずに済みます。
よくあるご質問
Q1. いまから申し込んで、2027年に間に合いますか。
公式に締め切りは示されていないため、確実なことは問い合わせてみるまで分かりません。だからこそ、年内に名乗っておくことをおすすめしています。名乗ってから見積りが届くまでにも、時間がかかります。
Q2. フランス語や英語ができる社員がいません。出られますか。
出られます。大事なのは流暢に話すことより、言葉に頼らずに何の会社か伝わる場面を用意しておくことです。絵や物で伝わる部分を増やすほど、最初の一言は短くて済みます。
Q3. 費用はどのくらい見ておけばよいですか。
出展料は公式に公開されておらず、区画の広さや位置で変わるため、弊社から相場としてお伝えできる数字はありません。御社の条件で見積りを取るのが唯一の確かな方法です。その外側に、渡航・輸送・現地での対応が乗ります。
Q4. 1回目は様子見で、小さく出るのでは駄目でしょうか。
小さく出ること自体は良い選択です。ただ、様子見のつもりで記録を取らないと、2年目に何を変えればよいかが残りません。小さく出るなら、会えた相手と止まった場面の記録だけは、必ず取ってください。
Q5. ジャパンエキスポ以外の催しも検討したほうがよいですか。
会いに行く相手によります。フランスでは、パリ以外の地方にも日本文化の催しが広がっています。相手がその地方にいるなら、大きな会場より小さな催しのほうが会えることもあります。フランスの日本文化イベントの暦も参考にしてください。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
2027年7月の会場で、御社はどなたに会いに行かれますか。
名前が浮かぶなら、年内に公式の窓口へ名乗ってください。浮かばないなら、申し込みより先に、その相手を探すところから始めてみてください。
会いに行く相手を決めるところから、会期の前に届ける便り、会場で足を止めていただく場面、帰ってから渡す続き、2年目の出展へのつなぎまでを、プロジェクトとして運用しています。国際マンガプロジェクトを見る
検討されている催しの名前と、御社の海外のお客さまのことをお持ちいただければ、御社の場合はどなたに会いに行くとよいか、その場で一緒に見当をお出しします。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考ブログ
ジャパンエキスポ2027は、2027年7月8日から11日。出展料も締め切りも、自分から聞きに行かないと分かりません。いま始めるのは申し込みではなく、会いに行く相手を決めることです。そこから年内の問い合わせ、年明けの稟議、春の準備、会期、帰ってからの続きへと、前・中・後を1つの流れにしてください。


