
SNSを始めた。会社紹介の動画も撮った。インターンも、工場見学も、社員紹介の制度も試した。どれも最初の数か月は手応えがあったのに、翌年になると反応が薄れ、また次の手法を探している。今年は何をやればいいのか。若手の採用担当を任されて、そんな堂々めぐりの中にいませんか。
「若手の採用には、どの手法を選べばいいのでしょうか」
答えは、手法の選び方そのものより、手法を毎年替えていることにあります。どの手法も、1年目は「知っていただく機会」を作るところで終わります。若い方が御社を選ぶのは、その機会が2年目、3年目と積み重なり、働く姿がありありと想像できるようになってからです。地元の若い方は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった。手法は、その機会を続けて届けるための道具です。
以下、若手採用でよく使われる手法と止まりやすいところ、若い方が抱えている不安、手法を2年目へ続ける考え方、弊社のやり方、今週できる3つ、の順に書きます。
1. 若手採用でよく使われる手法と、止まりやすいところ
手法そのものに優劣はありません。止まるところが、それぞれ決まっています。
- 求人サイト・求人広告。いま仕事を探している方には届きます。ただ、掲載を止めた月に反応も止まり、毎年同じ費用で買い直すことになります。
- SNS。まだ探していない方にも届くのが強みです。一方で、投稿が日々の告知だけになると、半年ほどで書くことがなくなり、更新が止まります。
- 会社紹介の動画。設備や社屋はよく伝わります。けれども、入ってからの一日、とくにうまくいかない日のことは映りにくく、見た方の不安は残ったままです。
- インターン・職場体験・工場見学。来ていただいた方には深く伝わります。ただ、来ていただく前に御社を知っていることが前提で、最初の入口にはなりにくい手法です。
- 社員紹介(リファラル)。定着しやすい方に出会えます。とはいえ、社員の方が「うちの会社はこういうところだ」と語れる言葉を持っていないと、紹介は広がりません。
どの手法も、1年で区切ると「入口を作った」ところで終わります。止まりやすいのは手法ではなく、翌年につなぐ仕掛けが無いことです。
2. 若い方は、こんなことを怖がっています
若い方が会社を選ぶとき、給与や休日の比べ合いの手前に、言葉にしにくい不安があります。
- 入ってすぐ、分からないことだらけの現場に放り込まれないか。研修で、ちゃんと教えてもらえるのか。
- 説明に無かったことが起きたとき、誰に聞けばいいのか。
- 失敗した日に、きつく当たられないか。
- すぐに結果が出なかったとき、居づらくならないか。
- 何年か経ったとき、自分はどんな仕事を任されているのか。
この5つは、条件の表にも、きれいな会社紹介にも書かれていません。若い方が知りたいのは良い日のことではなく、うまくいかない日の受け止め方です。どの手法を使っても、この不安に答える中身が無ければ、見ていただいても選ばれません。
マイナビの2027年卒の新卒調査(2026年3月20日〜4月5日・2,800名)では、地元で働きたいと答えた学生が58.7%で、4年ぶりに増えました。新卒の方を対象にした調査で、中途の方にそのまま当てはまるものではありませんが、近くの会社で働きたい若い方は、確かにいらっしゃいます。足りないのは、その方々が御社の働く一日に触れる機会です。
3. 手法は「毎年替える」より「2年目へ続ける」
手法を選ぶ前に、1つだけ決めておくことがあります。毎年、何を積み上げていくかです。
おすすめするのは、御社の「働く一日」を、物語として1本持つことです。初日に先輩が隣で手本を見せる場面、失敗した日に声をかけてもらう場面、3年目に後輩を迎える場面。この物語が1本あれば、手法は替えても中身は続きます。
- 1年目 物語を作り、地域の暮らしの中に置く。求人を探していない方、そのご家族、学校の先生の目に触れる場所です。SNSや見学会の告知にも、同じ場面を使います。
- 2年目 1年目に入社された方の一年を、続きの話にする。「読んで入った人が、その後どうなったか」は、若い方がいちばん知りたいことです。社員紹介も、この続きの話があると広がります。
- 3年目 入社された方が、次の方を迎える側に回る。見学会や説明会で、物語の登場人物と同じ立場の社員の方が話をします。社内の皆さまが自分の会社を語る言葉も、ここで育っています。
こうしておくと、手法を替えても去年の積み上げが消えません。毎年ゼロから始める採用と、去年の物語を次の年に積み上げる採用の差は、3年目にははっきり表れます。
4. 前・中・後で、1年を設計します
1年の中でも、手法を単発の催しにしません。
前 まだ探していない方に、働く一日を先に届ける
募集を始める前の数か月に、物語を地域に届けます。ポスティング、学校や地域の催し、SNS。「この会社の仕事は、こういう一日なのか」と思い出していただける状態を、募集より先に作っておきます。
中 見学・説明会で、物語の続きを確かめていただく
見学や説明会は、最初に会う場ではなく「2回目に会う場」にします。読んでいただいた場面の現場を見ていただき、物語に出てきた立場の社員の方が、入る前に怖かったこととその後を話します。
後 入社された方の一年を、次の年の物語にする
入社された方には、一年経ったところで「入る前に怖かったこと」と「実際どうだったか」を聞かせていただきます。それが、2年目の物語の種になります。
5. 弊社がしていること
弊社は、マンガで「働く一日」を見える形にし、それを前・中・後に届け続けるプロジェクトを運用しています。
マンガを使うのは、条件では伝わらない場面が伝わるからです。読む方はその場面の中に自分を置き、そこで働く自分の姿を想像します。作る過程では、社員の皆さまに自分の仕事を語っていただきます。社内の皆さまも、読む若い方も、主体的に関わる形になるので、納得して選んでいただけます。
大阪市港区で大型金属の精密切削を手がける前田機械さまは、求人サイトに掲載しても応募がゼロの状態から、採用マンガをポスティングチラシとして地域に配布されました。配布から10日で見学の応募が入り、採用に至っています。1回で終わらせず、現在は第2弾を一緒に続けて運用しています(前田機械さまの事例)。
アイケイケイさまでは、5名ほどの参加を見込んでいた説明会に、28名の方が参加されました。前と後を比べた倍率ではなく、事前の見込みと、実際に来られた数の差です。
どちらも、手法を新しくしたことが理由ではありません。働く姿を知っていただく機会を、続けて作ったことが違いでした。
6. 今週できる3つ
- この3年間に試した採用の手法を、紙に書き出します。その横に「翌年に何が残ったか」を1行ずつ書いてください。何も残っていない手法が、続ける仕掛けの足りないところです。
- 入社1年目から3年目の若手社員の方に、「入る前に一番怖かったこと」を1つだけうかがいます。それが、物語の最初の場面になります。
- 来年の募集を始める月を決め、その3か月前に、まだ探していない方へ何を届けるかを1つだけ決めます。
よくあるご質問
Q1. 若手の採用には、SNSと動画のどちらが効きますか。
どちらも、まだ探していない方に届く手法です。どちらを選ぶかより、何を載せ続けるかが大切です。働く一日の物語を1本持っていれば、SNSにも動画にも同じ場面を使え、更新が止まりにくくなります。
Q2. 手法を1年で替えるのは、悪いことですか。
悪いことではありません。替えてよいのは届け方で、替えないほうがよいのは中身です。中身まで毎年新しくすると、去年知っていただいた方とのつながりが切れてしまいます。
Q3. 小さな会社でも、若手を採用できますか。
できます。若い方が見ているのは会社の大きさより、入ってからの一日を想像できるかどうかです。先輩が隣で教えてくれる場面、失敗した日に声をかけてもらう場面は、会社の大きさに関係なく描けます。
Q4. 成果が出るまで、どのくらいかかりますか。
最初の反応が早く出ることもあります。ただ、若手の採用を安定させるには、2年目、3年目と続けることを前提にしてください。1年目に入社された方の話が、2年目の採用をいちばん助けます。
Q5. 採用の担当が1人しかいません。続けられますか。
続けられる形にするのが、最初の設計です。担当の方が1人で背負わず、社員の皆さまが自分の仕事を語る形にしておくと、手法が替わっても、担当の方が替わっても、積み上げが残ります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
去年の採用で知っていただいた若い方に、今年の御社は、何を続きとしてお届けできるでしょうか。
すぐに浮かばないなら、新しい手法を探すより先に、毎年積み上げていける「働く一日」の物語を1本持つところから始めてみてください。
働く一日の物語づくりから、地域への届け方、入社された方の一年を次の年へつなぐところまでを、プロジェクトとして運用しています。採用マンガプロジェクトを見る
これまでに試された手法をお聞かせいただければ、御社の場合は何を続けるとよいか、ご一緒に考えます。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考ブログ
若手の採用は、手法を選んだ年に決まるのではなく、続けた年に決まります。地元の若い方は、御社を知らないのではなく、知る機会がなかっただけです。働く一日の物語を1本持ち、2年目、3年目へ積み上げていってください。


