
実は、若い方が応募の前にいちばん知りたいのは、給与でも休日でもないのをご存じですか。
「若手を採りたいのに、若い人が来ません。来ても続きません。求人票に研修制度も書きましたし、先輩が丁寧に教えるとも書きました。若手の採用課題は、いったいどこにあるのでしょうか」
若手の採用課題は、応募の手前にあります。若い方は、入ったあとの「うまくいかない日」に何が起きるのかを知りたがっています。ところが、どの会社の求人票にも、そこだけが書かれていません。書かれていないことは、悪いほうへ想像されます。
以下、若い方が応募の前に抱える不安を具体的な場面で並べ、それにどう先回りして答えるかまでを書きます。
1. 若い方は、良い日ではなく悪い日を想像しています
若い方、とくに社会に出て数年の方や、未経験の仕事へ移ろうとしておられる方を思い浮かべてください。その方が求人を見ながら考えているのは、うまくいった日のことではありません。
初日に失敗したらどうなるのか。教わったことと違うことが起きたら、誰に聞けばよいのか。経験が浅いことで、きつく当たられないか。前の職場で一度そういう思いをした方ほど、ここを真っ先に考えます。
求人票に並んでいるのは、たいてい良い日の話です。やりがい、成長、風通しの良さ。どれも間違いではありません。ただ、若い方が知りたいことの答えにはなっていません。
2. 応募をためらわせる5つの場面
不安は抽象的な言葉ではなく、場面として頭の中にあります。よく挙がるのは次の5つです。
- 説明されていないことが起きた場面。言われた手順どおりにやったのに、目の前の物がそうなっていない。そのとき手を止めてよいのか、自分で何とかすべきなのか。
- 教わる場面。研修制度があると書いてあっても、実際に誰が、どのくらいの間、横についてくれるのかは分かりません。
- 納期に追われる場面。時間が足りないとき、新人ひとりが責めを負うのか、周りが手を貸すのか。
- 経験の浅さを突かれる場面。分からないことを聞いたとき、ため息をつかれないか。
- すぐに結果が出ない場面。1か月たっても一人前に程遠いとき、見放されないか。
5つとも、制度の説明では消えません。消えるのは、その場面で先輩が実際に何と言うかを知ったときです。
3. 求人票で答えられない理由
求人票は、条件を並べる紙です。そこに「失敗しても大丈夫です」と書いても、書いた側の言い分として読まれます。どの会社も同じことを書けるからです。
もうひとつ、置き場所の問題があります。求人票は、いま仕事を探しておられる方にしか届きません。若い方の多くは、今の職場に小さな不満を抱えながらも、まだ探し始めていません。その方の頭の中に、御社の名前はありません。若い方が応募してこないのは、選択肢に入る前に終わっているからです。
だから必要なのは、不安の場面に先に答えることと、それを探しておられない方の日常へ置くこと。この2つです。
4. 不安に先回りして答えたマンガ
大阪市港区の前田機械株式会社さまは、大型金属の精密切削機械加工をされています。求人サイトに掲載しても応募がゼロ、という状態からのご相談でした。
一緒に作った採用マンガは、最初から「うまくいかない日」を描いています。第1話は、初日に遅刻した新人の話です。工具の場所が分からず立ち尽くす新人に、先輩が棚の場所を声で教えます。第2話は「説明と全然ちがう」という場面から始まり、先輩は叱るのではなく、どこで詰まったのかを聞きます。第3話は納期と精度に追われる話で、正直に申し出た新人に、先輩は隠すよりずっと良い判断だと返します。
描いたのは制度ではなく、そのとき先輩が何と言うか、です。求職者が知りたいのは制度の有無ではなく、自分が困ったときに掛けられる言葉だからです。帯には「異業種・未経験歓迎」と入れ、誰に向けた紙かを1行目で決めました。
このマンガをポスティングチラシとして地域へ配布し、あわせてハローワークにも展開しました。配布から10日で見学のお申し込みが入り、その後、採用に至っています。現在は第2弾を継続して運用しておられます。不安はひとつではないので、1話で終わらせず、話をつないで答え続けています。
5. 社員の方と一緒に「悪い日」を集める
弊社がお手伝いしているのは、マンガを1冊作ることではありません。まず社員の方に、入ったころに困ったこと、そのとき誰に何と言われたかをうかがいます。社員の方ご自身が、自分の会社の良さを言葉にし直す場になります。
集めた場面をマンガにし、配る前・配っている間・配った後までを一緒に運用します。見学に来られた方が、マンガで読んだ先輩に実際に会う。そこまでつないで、はじめて不安が安心に変わります。1枚作って終わりではなく、2期目・3期目と、答える不安を増やしていく形です。
Q1. 失敗の場面を見せると、かえって応募が減りませんか。
減るのは、失敗の場面だけを見せて終わる場合です。見せるのは失敗そのものではなく、失敗したときの周りの返し方です。そこまで描けば、安心の材料になります。良いことだけを並べるほうが、入ってからの落差で辞める理由になります。
Q2. うちの先輩は口下手で、優しい言葉が出てきません。
優しい言葉である必要はありません。短くても、ぶっきらぼうでも、相手を放っておかない一言であれば伝わります。むしろ飾らない言い方のほうが、作り話ではないと受け取られます。
Q3. 研修制度が整っていません。書けることがありません。
制度がなくても、先輩が横について教えた場面は必ずあるはずです。制度の名前より、誰が、どう教えたかのほうが若い方には伝わります。整っていないことを隠す必要はありません。
Q4. 若手向けと中途向けで、分けて作るべきですか。
多くの場合、分けなくて大丈夫です。転職を考える方は、前の職場で何かに困っておられます。その不安の中身は、未経験の若い方とよく似ています。まずは共通の場面から始め、必要に応じて話を足していきます。
Q5. 何から手をつければよいですか。
入社して2〜3年の方おひとりに、「入ったころ、いちばん困ったのはどんなときでしたか」と聞いてみてください。その答えと、そのとき誰に何と言われたかが、最初の1話の材料になります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社の若い社員の方が初めて失敗した日、先輩は何と声を掛けられましたか。
その一言を、応募を迷っておられる方はまだ知りません。そこが、若手の採用課題の在りかです。
若い方の不安に先回りして答えるマンガを、社員の方と一緒に作り、地域へ届けるところまで運用しています。採用マンガプロジェクトを見る
御社の場合はどうか、一度お話をうかがうこともできます。30分の面談を予約する
若手の採用課題は、条件で負けていることではありません。うまくいかない日に何が起きるのかを、誰も先に伝えていないことです。
