
「採用のためにも、展示会のためにも、うちの強みを書き出してみようとしたのです。ところが、何も出てきませんでした。特許があるわけでもなく、日本一の設備があるわけでもありません。同業さんと比べて、うちだけができることが思い当たらないのです。強みが無い会社は、どうすればよいのでしょうか」
強みが無いのではありません。比べる場所が違っています。同業他社と並べて勝てる一点を探すと、たいていの会社は何も出てきません。ところが、お客さまや働く方と並べて考えると、毎日あたりまえにやっておられる手順が、そのまま強みになります。
以下、採用でも展示会でも同じことが起きているので、順に並べます。
1. 書き出せないのは、比べる相手を間違えているからです
強みを探すとき、ほとんどの方が同業他社を思い浮かべます。設備、規模、技術、実績。この並べ方をすると、勝っている一点が見つかった会社だけが「強みのある会社」になります。それ以外は全部「強みが無い会社」になってしまいます。
けれども、御社を選ぶ方は同業他社の設備一覧を持っていません。選ぶ方が比べているのは、御社と、ご自身の困りごとです。そこに合っていれば選ばれますし、合っていなければ、どれだけ設備が立派でも選ばれません。
2. 相手が困っていることの隣に、答えがあります
比べる相手を、同業他社から「御社に来られる方」へ入れ替えます。すると出てくるものが変わります。
- お客さまが、最初にご相談なさるときの不安は何か。納期か、細かい相談ができるかどうかか、金額を先に教えてもらえるかどうかか。
- その不安に対して、御社では誰が、いつ、どうやって応じておられるか。
- それは、同業他社でも必ずやっていることか。
3番目で「たぶんやっていると思う」となっても、手を止めないでください。やっているかどうかではなく、見えているかどうかが問題だからです。同じことをしていても、見えている会社だけが選ばれます。
3. 探す場所は、毎日の手順の中です
強みは、特別な日の中にはありません。毎日のくり返しの中にあります。次の5つを見ていただくと、たいてい何かが出てきます。
- 朝いちばんに、誰が何をなさるか。段取りの決め方。
- 急ぎのご依頼が入ったとき、社内でどう回るか。
- 新しく入られた方に、最初の1か月で何を教えておられるか。
- 不具合が出たとき、どなたが、どこまでご自身で判断なさるか。
- お客さまから「助かった」と言われたのは、どんなときだったか。
この5つは、どれも社内では話題になりません。あたりまえだからです。あたりまえのことは、中にいる方ほど言葉にしにくくなります。強みが書き出せない本当の理由は、無いからではなく、近すぎて見えないからです。
4. 採用と展示会は、同じ材料から作れます
ここが、弊社がいちばん申し上げたいところです。
採用でお伝えするのは、働く方の一日です。展示会でお伝えするのは、お客さまの困りごとをどう解いたかです。別々のもののように見えますが、材料は同じです。どちらも、毎日の手順の中にあります。
採用の資料と展示会の資料を、別々の担当が、別々の外注先で、別々に作っておられる会社は少なくありません。そうすると、同じ会社のことなのに、二つの資料がまったく違う顔になります。求職者の方が展示会の資料を見ても、何も感じません。お客さまが採用のページを見ても、何も感じません。
ひとつの材料から、渡す相手ごとに編み方を変える。この形にすると、作る手間が減るうえに、どちらの説得力も上がります。条件で比べられる場所から抜けることが、両方に共通した出口です。
5. 応募がゼロだった鉄工所で、最初に出てきたもの
大阪市港区の前田機械株式会社さまは、大型金属の精密切削機械加工をされています。求人サイトに掲載しても応募がゼロ、という状態から始まりました。
最初の打ち合わせでも、やはり「うちには特別なものが無い」というお話から始まりました。そこで、毎日の手順のほうをうかがいました。出てきたのは、大きな部品を削るときの段取りと、若い方に最初に任せる仕事の順番でした。設備の性能ではありません。
それを採用マンガにして、ポスティングチラシとして地域へ配布し、あわせてハローワークにも展開しました。配布から10日で見学のお申し込みが入り、その後、採用に至っています。現在は第2弾を継続して運用しておられます。
強みが無かったのではなく、言葉になっていなかっただけでした。働く姿が見えることは、入っていただいた後にも効きます。
Q1. 社内で聞いても「特に無い」としか返ってきません。
「強みは何ですか」と聞くと、必ずそうなります。聞き方を変えてください。「先週、お客さまに感謝されたことはありますか」「新人さんに最初に教えることは何ですか」。出来事を聞くと出てきます。抽象的な質問には抽象的な答えしか返りません。
Q2. 同業他社も同じことをしていたら、強みになりませんか。
なります。全社がやっていても、伝えている会社はほとんどありません。あたりまえのことほど書かれないので、書いた会社だけが、その手順を持っている会社に見えます。嘘をつくわけではなく、見えていなかったものを見える形にするだけです。
Q3. 数字の実績が無いのですが、それでも伝わりますか。
数字が無いときほど、場面が効きます。人は数字より、具体的な場面のほうを覚えます。何時に、誰が、何をして、相手がどう反応したか。ここまで書ければ、数字がなくても伝わります。
Q4. 採用と展示会で、本当に同じ材料が使えるのでしょうか。
材料は同じで、見せる順番が違います。採用では働く方を先に、仕事の中身を後に。展示会ではお客さまの困りごとを先に、解いた手順を後に。同じ出来事から、入口を入れ替えるだけです。
Q5. どこから手をつければよいですか。
3番の5つの問いを、社内でお一人に聞いてみてください。全員に聞く必要はありません。お一人から出てきた具体的な出来事が、そのまま最初の材料になります。会議で一覧表を作るところから始めると、たいてい止まります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
先週、御社の中で「助かりました」と言われた場面は、どんな場面でしたか。
それがひとつ思い浮かんだのでしたら、御社には書けるものがあります。思い浮かばないようでしたら、そのことをご相談のときにお聞かせください。出来事のほうから、一緒に探します。
材料を見つけるところから、採用と展示会の両方へつないでいます。採用マンガプロジェクトを見る
強みが無いのではありません。あたりまえになりすぎて、言葉にする機会が無かっただけです。
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