
「通勤圏内に住んでいる人を採用しました。条件も合っていました。それなのに半年ほどで辞めてしまいます。これが何度も続きます」
辞めた理由は、たいてい入社後に起きたことではありません。入る前に、その人が御社で働く姿を一度も見ていないことが原因です。見ていないまま入ると、初日から毎日が答え合わせになります。想像と違ったところが1つ出るたびに、辞める理由が1つ増えていきます。
以下、なぜそうなるのかと、入る前に見せるために何ができるのかを順に書きます。
1. 定着しないのは、入社後だけの話ではありません
早期に辞める方が出ると、原因は入社後に探されます。教育が足りなかった。先輩との相性が悪かった。仕事がきつかった。どれも本当に起きていることです。
ただ、同じことが起きても辞めない方がいます。違いは、覚悟の量ではありません。入る前に、それが起きると分かっていたかどうかです。
暑い現場だと知って入った方は、暑い日に「聞いていない」とは思いません。3年目までは同じ作業が続くと知って入った方は、2年目に「話が違う」とは思いません。分かって入った人は、起きたことを予定として受け取ります。分からずに入った人は、同じことを裏切りとして受け取ります。
ですから、定着の勝負は入社日より前についています。
2. 条件で来た人は、条件で去ります
給料、休日数、通勤時間。この3つは、あって当たり前と受け取られ、他社と並べたときの差だけが見られます。仕事に対する満足を生むのではなく、不足していると不満を生むものです。労働の研究では衛生要因と呼ばれます。
一方で、仕事そのものの中身、任される範囲、認められること、伸びていく実感。ここが人を動かす側で、動機づけ要因と呼ばれます。
ここから導かれることは1つです。条件だけを見て入った方は、条件がより良い会社が見つかった時点で去ります。御社が悪かったのではありません。最初から、比較の土俵が条件しかなかったのです。
そして条件の土俵では、規模の大きい会社が勝ちます。同じ土俵に乗るほど、御社は不利になります。
3. 地元の人は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった
いちばん申し上げたいのは、ここです。
近くに住んでいる方は、御社に興味がないのではありません。知る機会が一度もなかっただけです。作業場は道路から中が見えません。看板には社名しか書いていません。取引は法人同士で完結します。地域の暮らしの中に、御社の働く姿が出てくる場面が、そもそもありません。
求人票は、いま探している人の画面にしか出ません。しかも、探している方が求人票を見るのは、応募を決める数日前です。その数日で、働く姿を思い浮かべられるようになる方はいません。
つまり御社は、知られていないのではなく、知る機会を作っていないだけです。ここは直せます。
4. 近くから採るほうが良い、という手ごたえには裏づけがあります
マイナビの新卒調査では、2027年卒の学生のうち地元での就職を希望する方が58.7%でした。前年より2.3ポイント増え、4年ぶりの増加です。調査は2026年3月20日から4月5日、回答は2,800名です。
同じ調査で、地元の企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。求人サイトでも合同説明会でもありません。人づてです。
この2つは新卒の学生を対象にした調査ですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、知るきっかけが人づてに寄っているという構造は、地域の中途採用でも同じように見えます。近所の方が働いている会社は、条件を見る前から中身が伝わっています。
5. 入る前に働く姿を見せるために、できること
やることは1つです。探していない人の日常の中に、働く姿を先に置くことです。順番に書きます。
- 働く場面を選ぶ。新人がどう教わるか、1日の始まりと終わり、失敗したときに何が起きるか。良いところだけを選ばない
- 読まなくても筋が追える形にする。文章で書くと、読む氣のある人にしか届きません
- 探している人の画面ではなく、暮らしの中へ置く。地域の家庭へ配る、取引先の待合に置く、地域の催しで配る
- 1回で終わらせない。1回配っただけでは「何か入っていた」以上のものは残りません
- 入社前にもう一度渡す。内定から入社までの間が、いちばん想像が揺れる時期です
大阪市港区の前田機械さまでは、求人サイトに掲載しても応募がゼロという状態が続いていました。採用マンガを作り、地域へ配布したところ、配布から10日で見学の応募が入り、そのまま採用に至りました。現在は第2弾を継続して運用されています。
ここで大事なのは、応募が来たことより、見学から入られたことのほうです。見てから入った方は、初日に驚くことが減ります。
よくあるご質問
Q1. 職場見学をすでにやっています。それでも辞めます。
見学の中身をご確認ください。整えた日の、整えた場所だけをご覧いただいていないでしょうか。見学で辞めにくくなるのは、いちばん大変な時間帯と、その時間帯に先輩がどう動いているかを見たときです。
Q2. 悪いところを見せたら、来なくなりませんか。
来る人数は減ります。ただ、減るのは、それを知っていたら来なかった方です。その方は入っても半年で辞めます。採用にかかる費用は、入って辞めた1人のほうがはるかに大きくなります。
Q3. 給料を上げるのは意味がないということですか。
そうではありません。低すぎれば辞めます。ただ、上げても入る理由にはなりにくく、上げ続けなければ効かなくなります。上げたうえで、中身を見せてください。
Q4. 中途採用でも同じですか。
同じです。むしろ中途のほうが、前職との比較が具体的なぶん、想像との差が早く表に出ます。ご家族の意向も強く働きます。ご本人だけでなく、ご家族にも中身が伝わっているかをご確認ください。
Q5. どのくらいで効きますか。
前田機械さまでは、配布から10日で見学の応募がありました。ただ、これを標準の日数としてお約束することはできません。地域の世帯数、業種、時期で変わります。定着の側の変化は、それより遅れて出ます。1年は見てください。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
直近で辞めた方は、入社前に御社の現場を何時間ご覧になっていましたか。
その時間数を書いた紙を1枚、ご相談のときにお持ちください。ゼロと書かれることが、いちばん多くあります。
探していない人の日常に、働く姿を先に置いています。採用マンガプロジェクトを見る
分かって入った人は、起きたことを予定として受け取ります。知らずに入った人は、同じことを裏切りとして受け取ります。
参考実績
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