
「名刺は200枚集まった。でも、そのあとが続かない」
展示会が終わったあとに、最もよくうかがうお話です。結論から申し上げると、商談は会期後のフォローで生まれるのではなく、会期中にどこまで進んだかでほぼ決まります。名刺は成果ではなく、そのときの熱の記録に過ぎないからです。
名刺は「集めた枚数」ではなく「その後、残るか」で決まる
まず、厳しい前提から。Sansanの調査(n=1,272)では、交換した名刺の57.7%が管理されないままになっているという結果が出ています。配った側も同じで、アペルザの調査(n=413)では、展示会で配布された資料の94.9%は保管されないとされています。
こちらが渡したものは、ほとんど残らない。この前提に立たないと、「良い資料を作れば後から効く」という設計になり、会期後に何も起きません。
来場者は平均17社しか回らない。けれど入れば56.6%が動き出す
同じアペルザの調査では、来場者が1回の来場で実際に訪問するのは平均17社でした。数百のブースが並ぶ会場で、17社。大半のブースは、見られないまま終わることが前提になっています。
一方で、希望のある数字もあります。ブースを訪問したあと56.6%が検討を開始しているのです。つまり、中に入っていただけさえすれば半数以上が動く。勝負は「入っていただけるかどうか」に集中している、ということです。
会期中に商談が生まれるブースの3つの共通点
私たちが伴走してきた出展で、会期中に話が前に進んだブースには共通点がありました。
- 通路側の一枚目に、自社ではなく来場者の困りごとを置いている
社名・製品名・スペックは、通路を歩く人には読まれません。「うちの現場と同じだ」と氣づいた瞬間に、はじめて足が止まります。一枚目に自社名を出さない勇氣が要ります。 - 名刺交換をゴールにしていない
名刺をいただいた直後に「いつ頃、どんな場面でお困りですか」まで一歩踏み込む。ここで一言でも具体が出れば、それは名刺ではなく商談の入口です。担当者全員が同じ一言を持っているかどうかで、会期中の景色が変わります。 - 持ち帰る一枚を「読み物」にしている
94.9%が保管されない前提に立つなら、カタログの縮小版ではなく、読み切れる物語のほうが残ります。物語という形が記憶に効くことは、Bower & Clark(1969)の実験でも示されています(物語につなげて覚えた群の再生率93%に対し、バラバラに覚えた群は13%)。※言語記憶の実験であり、そのまま「受注できる」を意味するものではありません。
会期中に見積19件が動いた出展で、実際にやったこと
ある出展では、会期中に見積のご依頼が19件動きました。特別なことをしたわけではありません。通路から見える面をすべて「来場者の困りごと」に差し替え、説明を始める前にまず相手の話を聞く順番に変えた——それだけです。
正直に申し上げると、これは私たちが優れていたという話ではありません。話す順番を変えただけで、届く相手が変わりました。マンガは、その順番を強制してくれる道具でした。
よくある質問
Q1. 名刺の枚数は、目標にしないほうがよいのでしょうか。
枚数そのものが悪いわけではありません。ただ、枚数だけを追うと「まず名刺をいただく」動きになり、会期中に話が進みません。枚数と並べて「会期中に具体的なお困りごとをうかがえた件数」を数えていただくことをおすすめしています。
Q2. ブースが小間1つでも、できることはありますか。
あります。むしろ小間が小さいほど、通路側の一面に何を置くかがすべてになります。装飾を増やすより、一枚目を差し替えるほうが費用も時間もかかりません。
Q3. 技術が地味で、絵になりにくいのですが。
地味な商材ほど、お客さまの困りごとが具体的で物語にしやすい傾向があります。派手さではなく「その現場を知っている」と伝わるかどうかが分かれ目だと考えています。
Q4. 会期後のフォローは、何をすればよいですか。
会期中に具体の話が出た方から順に、その話の続きとして連絡することです。全員に同じ資料を送るより、届く確率が上がります。
まとめ
名刺が商談にならないのは、フォローの手間が足りないからではなく、会期中にまだ何も始まっていないからです。通路側の一枚目・名刺交換の一言・持ち帰る読み物。この3つは、小間の大きさに関係なく次の出展から変えられます。
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