
会期初日の朝。設営を終えたブースに立ち、通路を見る。人は流れている。目が合う前に、視線は次のブースへ移っていく。昼を過ぎ、声をかけた数だけ名刺は増えていくのに、手応えだけがない——出展を任された担当者なら、覚えのある光景だと思います。
素通りされるのは、ブースが悪いからではありません
結論から申し上げます。足が止まらない理由は、小間の立地でも装飾の予算でもありません。来場者は「見て回っている」のではなく「探しに来ている」からです。探している人は、自分の課題の話をしていない場所を、無意識のうちに選から外していきます。
来場者の一日は、思っているより短い
アペルザの来場者調査(n=413)では、来場者が一日に訪問するブースは平均17社とされます。何百と並ぶ会場の中の、17です。そのうえ、その場で受け取った資料の94.9%は保管されない。名刺の側も似ていて、Sansanの調査(n=1,272)では交換した名刺の57.7%が個人の手元で未管理のまま眠っています。
配った量も、交換した枚数も、そのままでは翌週には残りません。残るのは「何の会社だったか」を思い出せる会社だけです。
問いを変えた会社に、起きたこと
床面サインの美華道さまは、出展の問いを「何枚集めるか」から「何社が、自分の課題に氣づいて帰るか」に変えました。ブースの主役を製品パネルから物語とキャラクターに置き換え、アンケートを「対話のきっかけ」として設計し直す。社内に戸惑いがなかったといえば嘘になります。それでも会期3日間で回収したアンケートは459件、前回出展の約12.8倍。枚数ではなく、一件一件に相手の課題の言葉が残っていました。この3日間の記録は美華道さまの実績ページにまとめています。
足を止めてもらう設計は、3つに分かれます
- 入口——自社の技術名ではなく、相手の困りごとを一言で掲げる。「何をしている会社か」を正確に書くほど、通路を歩く人には自分の話に聞こえません。掲げるべきは、相手が現場で口にしている困りごとの言葉です。
- 中——説明ではなく対話にする。用意した説明を最後まで話しきると、相手の状況は分からないままです。相手の現場の困りごとを言葉にしてもらえば、その場で見込みの濃さまで仕分けられます。
- 後——検討が始まっているうちに届ける。同じアペルザの調査では、来場者の56.6%がブース訪問後に製品・サービスの検討を始めたとされます。整った提案書を一週間かけて作るより、熱の残っているうちに一報を入れるほうが届きます。
マンガが働くのは、この3つの接ぎ目です
入口で足を止め、会期中の対話を生み、後日「あの会社だ」と思い出してもらう。この3つを別々の施策でやろうとすると、来場者の中ではつながりません。あなたの会社の物語とキャラクターを一つ通しておくと、通路で目に入った絵と、ブースで交わした会話と、後日届いた一報が、相手の記憶の中で同じ一本の線になります。
それでも、来年も同じ会場に同じ顔ぶれが並びます
才流の調査(n=300)では、出展企業の9割超が出展を継続すると答えています。展示会はいまも有効な商談の場だからです。だからこそ、素通りは今年も来年も起き続けます。設計を変えない限り、増えるのは名刺の枚数と、翌月の精算書の数字だけです。
よくあるご質問
Q1. 小さな小間でも足は止まりますか。
止まります。通路を歩く人が見ているのは面積ではなく、自分の課題の言葉があるかどうかです。小間が小さいほど、掲げる一言を絞り込む効果は大きくなります。
Q2. ノベルティを配るのは無駄でしょうか。
無駄ではありませんが、それ単体では思い出してもらえません。資料の94.9%が保管されないという数字は、配る行為そのものではなく「思い出す手がかりが無いこと」の結果です。
Q3. 準備はいつから始めるべきですか。
掲げる一言と当日の対話の流れを決めるところからなので、会期の2〜3か月前が目安です。ブースの装飾を決める前に、この2つを先に決めてください。
Q4. 後追いは何日以内が良いですか。
検討が始まっているうちが原則です。会期直後の数日で一報を入れ、整った提案はその後で構いません。
名刺の枚数から、思い出される出展へ。
展示会の前・中・後の設計は総まとめでどうぞ。→ 展示会総まとめを読む
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社のブースの前を歩く方は、3歩のあいだに何を読めますか。
社名だけなら、足は止まりません。前回のブース写真を1枚お持ちください。
前回の展示会記事:その出展費用、回収できていますか?
その〈素通り〉を、実際に変えた会社があります。
参考実績
参考ブログ
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