
フランスに出てみたい、という話が社内で出た。最初に名前が挙がったのは、パリのジャパンエキスポだった。けれど調べるほど、会場は広く、出展者は千を超え、費用も準備も大きい。いきなりあの規模に飛び込んで、何も残らなかったらどうしよう。もう少し小さな場で、まず一度、現地の方の反応を見てみたい。ところが、フランスの地方の催しは情報がフランス語でばらばらに散らばっていて、どこで、いつ、誰が開いているのかがつかめない。そんな手詰まりのまま、時間だけが過ぎていませんか。
「フランスの地方で開かれるマンガの催しは、どこにあるのでしょうか」
フランスでは、日本のマンガやポップカルチャーの催しがパリだけでなく地方の町でも開かれています。その中に、同じ運営が町から町へ巡回する形の催しがあります。Japan Manga Wave(ジャパン・マンガ・ウェーブ)です。2027年は、1月のカンペールから、2月のサン=テティエンヌ、ミュルーズ、3月のラ・ロッシュ=シュル=フォロンへと、4つの町を週末ごとに回ると公式に告知されています。
以下、公式に分かっていること、地方の催しを知っておく理由、出る前に見ておく4つの点、前・中・後での考え方、弊社がフランスで重ねてきたこと、明日からできる3つ、の順に書きます。
1. Japan Manga Waveについて、公式に分かっていること
2026年11月3日の時点で、公式サイト(japanmangawave.com)から確かめられた事実を並べます。
- 日本のポップカルチャーの催しで、コスプレ、ゲーム、コンサート、作り手の展示販売、日本の食や文化の紹介などを1つの会場にまとめた形です。
- 2027年の予定は次のとおりです。カンペール(ブルターニュ)2027年1月16日・17日、会場はQuimper Parc Expo。サン=テティエンヌ 2月6日・7日、Parc Expo Saint-Étienne。ミュルーズ(アルザス)2月20日・21日、Mulhouse Parc Expo。ラ・ロッシュ=シュル=フォロン(オート=サヴォワ)3月13日・14日、Rochexpo。トゥールーズは「日程は確認中」とされています。
- サン=テティエンヌの回は、公式のページに「12,000人の来場見込み」と書かれています。開場は土曜10時30分から18時30分、日曜10時30分から18時です。
- 出展の受付は4つの分野に分かれています。作家と作り手、店舗とブランド、食と日本の味、団体と体験。
- 申し込みは3段階です。出る回を選び、自社に合う料金区分(「出展者」か「作家・イラストレーター・若手の作り手」)を選び、オンラインで支払う。その後、運営から参加に必要な連絡が届くと案内されています。
- 申し込みはすべて審査されます。公式の言葉では、会場の空き、企画の一貫性、それぞれの回の必要に応じて検討する、とされています。
- 出展料と入場料の金額は、公式サイトのトップには掲示されていません。入場料は町ごとに違うと書かれています。
つまり、日程と会場は早くから出ているのに、金額は申し込みの画面まで進まないと分からない催しです。そして、払えば必ず出られるわけではなく、審査があります。
2. なぜ、地方の催しを知っておくのか
代表の松山が執筆を担当したデジタルコンテンツ白書(2013年版)のフランスの章には、当時すでに、日本のマンガや大衆文化の催しがパリ中心からフランス全土へ広がり、クレルモン=フェランのように日本の大衆文化が比較的少ない地域でも開かれるようになった、と記録されています。2012年度には大小あわせて年間58件の催しがありました(白書の出典はNautiljon。当時の数字です)。
パリのジャパンエキスポは、2026年に主催者の発表で222,048人が訪れた大きな催しです。一方で、Japan Manga Waveのサン=テティエンヌの回の見込みは12,000人です。どちらが良いかではありません。会える相手が違います。その地方に取引先の候補や、学校、自治体、日本文化の団体があるなら、大きな会場で埋もれるより、町の催しのほうが顔を覚えていただけることがあります。
もう1つ、巡回型には特長があります。同じ運営が、同じ形で、いくつもの町を回ることです。これは弊社の見立てですが、1つの町で試し、伝わらなかったところを直して、次の町で確かめる、という使い方ができます。1回で判断せず、続けながら形を整えていく出方に向いています。
3. 出る前に見ておく4つの点
- 会いたい相手が、その地域にいるか。カンペールはブルターニュ、ミュルーズはドイツとスイスに接するアルザス、ラ・ロッシュ=シュル=フォロンはスイスのジュネーヴに近いオート=サヴォワです。町の名前より先に、会いたい相手の住所を地図に置いてみてください。
- どの区分で出るか。企業であれば「店舗とブランド」や「団体と体験」の分野が近くなります。区分によって料金も変わるため、申し込みの前に、自社が何を見せ、何をしてもらう出展なのかを1行で決めておきます。
- 準備の期間が足りるか。きょうから数えて、カンペールまでは約2か月半、ラ・ロッシュ=シュル=フォロンまでは約4か月です。品物の持ち込み、社内の稟議、現地への連絡を考えると、初めてなら後ろの回のほうが無理がありません。
- 支払いが先に来ることを、社内で通しておけるか。申し込みの流れの中にオンラインでの支払いがあり、そのあとで運営から連絡が届きます。国内の展示会で慣れた「見積り、稟議、申し込み」の順とは違うため、経理の方に先に話しておきます。
展示の品物を持ち込む場合の手続はATAカルネでの持ち込みに、一覧に載っている催しが今も開かれているかの確かめ方はフランスの日本文化イベント一覧の使い方に書きました。
4. 前・中・後で考える
地方の小さな催しでも、出展は2日間で終わりません。
- 前 会いたい相手に、会期の前に便りを届けます。「この週末、この町の会場にいます」と伝えるだけで、当日に足を運んでくださる方が出てきます。
- 中 足を止めた方が、どの場面で止まったかを記録します。言葉が通じなかった場面も書き留めます。これが次の町での直しの材料になります。
- 後 会えた方に、会場での場面の続きを届けます。巡回型なら、次の町の日程もあわせてお伝えできます。そして、1年目の記録から2年目に出る町を選び直します。
5. 弊社がフランスで重ねてきたこと
弊社は、ジャパンエキスポをはじめとするフランスのマンガ関連の催しに、2006年から2015年までに計11回出展してきました。2015年のジャパンエキスポでは、弁当のブースで5,000食をお出ししました。
正直に書きます。初回の出展で成果が出た年は、弊社にもありませんでした。前半は、出ること自体が目的になっていました。白書で取材した山陰国際観光協議会の記録(2012年から2013年)にも、1回の出展で成果が出ずにあきらめる、担当者が代わって情熱が続かない、という2つの理由が残っています。費用の高さより、1回で判断してしまうことのほうが、続かない理由になっていました。
そこで弊社がご一緒しているのは、御社のブースの前で来場者の方が足を止める理由を、社員の方ご自身が語れる物語にして、会場へ持っていくことです。御社の製品が使われる場面を1つ選び、マンガにして会期の前に現地へ届け、会場で手渡し、帰ってから続きを渡します。マンガはきっかけで、社員の方も、現地の来場者の方も、その先の相手も巻き込んで、みんなが主体的に動く形を作ります。弊社はこれを「マンガ×体験価値」と呼んでいます。
そして、この前・中・後を1つの流れとして設計し、1つ目の町の記録から次の町、2年目、3年目の出展を組み立てます。作って納めて終わる制作会社としてではなく、この流れを一緒に回すプロジェクトの運用者としてご一緒しています。お付き合いは1回の出展で終わらず、何年も続いていくことを前提に組んでいます。
パリの大きな催しの段取りはジャパンエキスポ2027に出るなら、いつから何をするかに、出る場所の決め方は海外の見本市は何から決めればよいかに書きました。
6. 明日からできる3つ
- 会いたい相手を3社書き出し、その所在地をフランスの地図に置きます。カンペール、サン=テティエンヌ、ミュルーズ、ラ・ロッシュ=シュル=フォロンのどこに近いかが見えてきます。
- 公式サイトの出展の画面で、自社に合う区分と料金を確かめます。金額が分かれば、社内で話を始められます。
- 社内で「1つ目の町で何を確かめ、2つ目の町で何を直すか」を1行で決めておきます。この1行があると、1回で終わらずに済みます。
よくあるご質問
Q1. フランス語ができる社員がいなくても出られますか。
出られます。大事なのは流暢に話すことより、言葉に頼らずに何の会社か伝わる場面を用意しておくことです。絵や物で伝わる部分を増やすほど、最初の一言は短くて済みます。
Q2. 出展料はいくらですか。
公式サイトのトップには金額が掲示されていません。申し込みの画面で区分を選ぶと示される形です。区分と回によって変わるため、弊社から相場としてお伝えできる数字はありません。
Q3. 申し込めば必ず出られますか。
いいえ。公式に、会場の空き、企画の一貫性、それぞれの回の必要に応じて検討すると書かれています。何を見せ、来場者の方に何をしていただくのかを、申し込みの段階で伝えられるようにしておきます。
Q4. 小さな催しに出る意味はありますか。
会いたい相手がその地域にいるなら、あります。来場者の数ではなく、会えた方の顔と、足を止めた場面の記録で判断してください。大きな会場では埋もれてしまう会社でも、町の催しなら覚えていただけることがあります。
Q5. ほかの地方の催しも知りたいのですが。
フランスと近隣国の日本文化の催しを月の順に並べたフランスの日本文化イベントの暦も参考にしてください。開催の有無や日程は変わることがあるため、申し込みの前に必ず公式サイトで確かめてください。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社が会いたいフランスの相手は、どの町の近くにいらっしゃいますか。
町が浮かぶなら、その近くの催しの日程を手帳に書き込んでください。浮かばないなら、出る場所より先に、その相手を探すところから始めてみてください。
会いたい相手を決めるところから、会期の前に届ける便り、会場で足を止めていただく場面、帰ってから渡す続き、次の町や2年目の出展へのつなぎまでを、プロジェクトとして運用しています。国際マンガプロジェクトを見る
検討されている町や催しの名前と、御社の海外のお客さまのことをお持ちいただければ、御社の場合はどこで誰に会うとよいか、その場で一緒に見当をお出しします。30分の面談を予約する
参考ブログ
参考ブログ
フランスのマンガの催しは、パリだけではありません。巡回型のJapan Manga Waveは、2027年1月から3月にカンペール、サン=テティエンヌ、ミュルーズ、ラ・ロッシュ=シュル=フォロンを回ります。町を選ぶ前に、会いたい相手を決めてください。そこから前・中・後を1つの流れにし、1つ目の町の記録を次の町へつないでください。


