
「求人サイトの原稿を、今月も直しました。展示会の出展も、今年も申し込みました。どちらもやっているのに、応募も商談も増えません」
採用と展示会は、別々の悩みに見えます。担当も予算も別です。それでも、止まっている場所は同じでした。どちらも「集める」ところまでは設計されていて、その先が設計されていないのです。
集めた数を増やす工夫は、たくさんあります。原稿を直し、掲載媒体を増やし、ブースを広くし、飴を配る。どれも「集める」を強くする手です。
けれども、集めたあとに何が起きるかは、たいてい決まっていません。
1. 求人サイトを毎月直しても、応募が来ないとき
求人票の原稿を直すのは、正しい作業です。ただ、その作業が前提にしているのは「見た人のうち何人かが応募する」という考え方です。だから見た人を増やそうとします。掲載を増やし、広告を出し、条件を書き足します。
ところが、求職者の側から見ると景色が違います。同じ検索結果に、似た会社が何十社も並んでいます。「未経験歓迎」「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」。どれも同じに見えます。
前田機械さまの実績ページには、この状態がそのまま書かれています。「未経験歓迎」「やりがいのある仕事」と求人票に書いても、若者には他社と同じように見える、と。
ここで起きているのは、集めた数の不足ではありません。集まった人の中で、選ばれる理由がないことです。
2. 展示会で名刺を集めても、商談にならないとき
展示会でも、同じ構造が起きます。目標が「名刺◯枚」になっている出展は多いはずです。飴やノベルティを配り、通路の人に声をかけ、枚数を積み上げます。
集めた名刺の多くは、その後フォローしきれず活用されないと言われます。理由は単純で、その場で何を話したかが残っていないからです。会期後にリストを見ても、誰が何に困っていたのかが分かりません。だから全員に同じメールを送ることになります。
ここでも、足りないのは枚数ではありません。その場で相手の話が引き出せていないことです。
3. 2つに共通するのは「集める」で設計が終わっていること
採用と展示会で、同じ言葉が使われます。母集団形成、つまり数を集めることです。数が増えれば、そのうち何割かが動くという考え方です。
この考え方には、副作用があります。すぐ興味を示さない相手を、相手にしなくなることです。展示会の通路で「今すぐの案件はない」と言われた瞬間に会話が終わり、求人でも条件だけを見て去っていく人を追いません。効率としては正しく見えます。
けれども、買い手の調査を見ると、この前提は成り立ちません。労務担当者600人への調査では、92.8%が1年以内に発注しており、最も多いのは1か月から3か月未満でした(才流「【労務担当者編】BtoB商材の購買プロセスに関する実態調査」2024年11月・n=600)。検討が長いから追いかける、という話ではないのです。動くときは短期間で動きます。
では何が分かれ目になるのか。同じ調査で、一次選定の鍵として挙がっているのが第一想起です。困ったときに、最初に思い出される会社かどうか。別の調査では、新規取引先を検討から外す理由の第1位が「会社の知名度」でした(日経リサーチ「BtoB購買プロセス調査」2020年5月・n=2,132)。
数を集めても、思い出されなければ選ばれません。そして思い出されるかどうかは、集めた場所ではなく、その場でどれだけ盛り上がったかで決まります。
4. 集めた数ではなく、その場が決めていた
株式会社美華道さまが、第2回鉄道技術展・大阪2026(インテックス大阪)に出展されたときの記録があります。主力は鉄道現場の床面サイン特殊施工「スマートシグナル」です。技術としては優れていますが、同じような技術を掲げる会社が並ぶ会場では埋もれます。
美華道さまがされたのは、枚数を増やすことではありませんでした。自社マスコット「シグナ・ミカ」の立看板で足を止め、QRコード付きのアンケートで、その場で悩みと確度を聞き出す設計です。
ノベルティを受け取りながら、来場者が自分の現場の話を始める。その場で見積の話に進む。
3日間のアンケートは459件で、前回出展された関西物流展の約12.8倍でした。前向きな反応は164件、全体の35.7%です。会期中にその場で獲得した見積は19件、すぐ商談に進める見込客は86件でした(すべて美華道さまの実績ページに掲載)。
注目したいのは、その前向き率です。初日30%、2日目37%、最終日42%と、日を追うごとに上がっていきました。
ここで起きたのは、集める力が12.8倍になったことではありません。その場で盛り上がったから、悩みが出てきて、確度がその場で分かったということです。だから会期後に、誰に何を届けるかで迷いませんでした。
5. 採用でも、同じことが起きています
前田機械株式会社さまは、求人サイトとハローワークで応募がゼロの状態から始まりました。そこで打ったのが、採用マンガをチラシにして地元へポスティングする手でした。求人サイトの中で他社と並ぶのをやめて、探していない人の郵便受けに置いたのです。
結果は、開始から1か月10日で初めての応募と採用でした。その後も続き、第2弾ではポスティングが効く地元採用、第3弾では30代男性からの応募獲得に至っています(いずれも前田機械さまの実績ページに掲載)。
この3話は、条件を書き換えた記録ではありません。一人の若者が技術を身につけ、自信をつけ、人生を立て直していく物語を描いた記録です。読み手は説明を読むのではなく、主人公に自分を重ねます。マンガがここで担っているのは、宣伝ではなく、その場で心が動く時間をつくることです。
6. では、何を変えるのか
変えるのは、集める工程ではありません。集めたあとに何が起きるかを、先に決めることです。
展示会なら、ブースで何を話してもらうかを決めます。カタログを配って待つのではなく、来場者が自分の現場の話を始める仕掛けを置きます。話した内容が残れば、会期後に誰へ何を届けるかが決まります。
採用なら、求人票の外に働く姿を置きます。探している人だけに見せるのではなく、いま探していない人の日常に先に置きます。そこで「この会社なら」と思ってもらえれば、その人が動く番が来たときに、最初に思い出されます。
どちらも、やっていることは同じです。集めるのをやめるのではなく、集めた先を設計する。それだけです。
よくあるご質問
Q1. 母集団形成そのものが間違っているということですか。
いいえ。数を集めること自体は必要です。問題は、集めた数を成果の指標にしてしまうと、その先の設計が抜け落ちることです。名刺の枚数と応募者数は途中の数字であって、成果ではありません。
Q2. うちは予算が限られています。それでもできますか。
できます。むしろ予算が限られているときほど、集める量では勝てません。美華道さまが増やしたのは出展費ではなく、その場で悩みを引き出す設計でした。前田機械さまも、掲載媒体を増やさずに置き場所を変えています。
Q3. すぐに結果が出ますか。
案件によります。前田機械さまは開始から1か月10日で初応募でしたが、これはポスティングという届け方が地域とかみ合った例です。展示会は会期という締切があるため、前・中・後の設計をいつ始めるかで結果が変わります。
Q4. マンガでなくてもよいのではないですか。
その場で心が動けば、手段は問いません。マンガを使うのは、説明を読ませずに状況を伝えられるからです。技術や条件の説明を増やすほど伝わりにくくなる場面で、物語は先に感情を動かします。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
前回の展示会で集めた名刺の中から、いま名前を挙げられる方は何人いらっしゃいますか?
その方と、ブースで何を話したかを覚えていらっしゃるなら、そこが御社の勝ち筋です。ご相談のときに、その一人の話をお聞かせください。
集めた先を設計するところから、ご一緒します。展示会マンガプロジェクトを見る/採用マンガプロジェクトを見る
集めた数は途中の数字です。決めているのは、その場で何を話したかです。
前田機械さまでお作りしたのは、初日に遅刻した新人の話、説明どおりに行かなかった日の話、納期に追われた日の話の3話です。第3話では、失敗を申し出た新人に先輩がこう返します。「ええ判断や。隠すより100倍マシや」。求職者の方が知りたいのは、制度があるかどうかではなく、そのとき自分がどう扱われるかです。不安はひとつではありませんので、物語をつないでお届けします。
御社の場合はどの不安から描くとよいか、ご相談に乗ります。30分ほどお時間をいただければ、その場で1話目の見当までお出しします。相談してみる
参考実績
【鉄道技術展・大阪2026】堅い大企業が自ら見積を求めた3日間|株式会社美華道さま
3日間で459件、会期中の見積19件までの設計を公開しています。
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【工場】製造業の採用マンガ事例|応募ゼロから1ヶ月10日で応募獲得!
求人サイトの外に置くと何が変わるかの記録です。
