
店の入口に「アルバイト募集」の貼り紙を出した。求人サイトにも載せ、時給も近くのお店に合わせた。それでも応募が来ない。たまに来ても面接の日に連絡が途切れたり、入って1か月で辞めてしまったりする。春と秋のたびに同じ募集を出し直して、店長と「最近の若い人は、働く意欲が無いんやろか」と話しながら、また次のシフトを自分たちで埋める。そんな季節を、何度か繰り返しておられませんか。
「アルバイトの応募が来ない理由は、何ですか」
応募が来ないのは、若い方に働く意欲が無いからでも、時給が足りないからでもなく、そのお店で働く一日がどんなものか、外からまったく見えないからです。毎日来てくださるお客さまの中にも、近所の学生さんの中にも、働き手になりうる方はいます。ところがその方々は、売り場の向こう側の一日、つまり最初の1週間に何を教わり、失敗したら誰が助けてくれるのかを、知る機会がありません。そして、募集のたびにゼロから出し直していると、その機会はいつまでも育ちません。
以下、アルバイトを考える方が応募の手前で思い浮かべる不安、貼り紙と求人サイトだけでは届かない理由、続けて届けると何が変わるか、前・中・後の回し方、明日からできる3つ、の順に書きます。
1. アルバイトを考える方が、応募の手前で思い浮かべる5つの不安
学生さん、子育てが一段落した方、ほかの仕事と掛け持ちしたい方が、近所のお店の募集を見て頭に浮かべるのは、だいたい次の5つです。
- 初日に何をするのか分からない。いきなりレジに立たされたらどうしよう。
- 覚えることが多そうで、ついていけるか心配だ。
- 混んでいる時間に失敗したら、お客さまの前で叱られるのではないか。
- テストや家の用事でシフトを替えたいとき、言い出しにくいのではないか。
- もうできあがっている人の輪に、あとから入って浮かないか。
どれも、時給や勤務時間の欄には答えが書いてありません。そして、この5つのどれか1つでも残っていると、電話をかける手前で手が止まります。
2. 貼り紙と求人サイトだけでは、なぜ届かないのか
理由は2つあります。
- 届く相手が限られる 求人サイトを開くのは、いま仕事を探している方だけです。貼り紙も、その日たまたま目にした方にしか届きません。まだ探していない方には、どちらも届きません。
- 書いてあることがどこも同じ 「未経験歓迎」「シフト自由」「アットホームな職場」は、ほとんどの募集に書いてあります。同じ言葉が並ぶと、読む側は時給と場所だけで比べるしかなくなり、大きなチェーン店との比べ合いになります。
さらに、アルバイトは辞める方が出るたびに募集し直すので、毎回ゼロからの出し直しになりがちです。前回の募集で何が伝わり、何が伝わらなかったかが残らないまま、次の貼り紙を書くことになります。毎年同じところでつまずく話は、中小企業の採用で、毎年苦戦するのはなぜですかにも書きました。
3. お客さまの中に、次の仲間がいます
地元の人は、御社を知らないのではありません。知る機会がなかったのです。お店の場合、この「知らない」は少し独特です。お客さまとして毎週来てくださる方は、お店の名前も商品も知っています。知らないのは、カウンターの向こう側で働く一日のほうです。
参考になる数字があります。マイナビの2027年卒の学生を対象とした調査(回答2,800名・2026年3月20日から4月5日)では、将来地元で働きたいと考えている学生が、高校生までに地元の企業を知った機会として最も多く挙げたのは「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で、44.0%でした。新卒の学生の調査なので、アルバイトを探す方にそのまま当てはまるわけではありません。それでも、身近な人から働く様子を聞くことが、職場を知る入口になっていることは読み取れます。
だから、働く一日を、お客さまや近所の方の目に触れる形にしておきます。初日に教わること、混んだ時間に先輩がどう声をかけるか、シフトを替えたいときに誰に何と言えばいいか。その場面がお店の中で目に入っていれば、「ここなら自分にもできそう」と思った方が、ある日レジ越しに「募集、まだしていますか」と声をかけてくださいます。
4. 続けて届けると、何が変わるか
働く場面は、1回見せて終わりにしません。不安は1つではないからです。初日の不安が消えた方にも、混んだ時間の不安、シフトの不安が残っています。物語をつないで、季節ごとに届け続けます。
業種は違いますが、大阪市港区で大型金属の精密切削加工をしておられる前田機械さまは、求人サイトに出しても応募がゼロのところから、採用マンガのプロジェクトを始められました。マンガは、初日に遅れてきた新人を先輩が受け止める場面、「説明と全然ちがう」という戸惑いに「一緒に考えようや」と応える場面など、新人の不安に先に答える形で組まれています。地域のご家庭へ配り、ハローワークにも置いたところ、配布から10日で見学の応募が入り、採用につながりました。いまも第2弾を継続して運用しておられます。
続けていくと、変わるのは応募の入口だけではありません。
- 募集の言葉が育つ 前回届けた場面に、どんな方が、どんな言葉で反応したかが残ります。次の話は、そこから作れます。
- 働いている方が語る側に回る 自分たちの職場の場面が物語になると、今いるスタッフの方が「うちはこういう店です」と、自分の言葉で話せるようになります。
- 入った方が次の話の登場人物になる 入る前に何が不安だったかを、入った方ご本人にうかがい、その声で次の話を作ります。
5. 前・中・後で回します
弊社は、このプロジェクトを、前・中・後の3つに分けて回しています。
- 前 店長やスタッフの方と一緒に、新しく入った方が実際につまずいた場面と、そのとき先輩が何と言ったかを拾います。スタッフの方ご自身の言葉なので、物語になったとき、お店の誰もが「うちの話だ」と言えます。
- 中 その場面をマンガにして、お店の中や地域の暮らしの中へ置きます。手に取った方が「ここなら」と思ったとき、話を聞ける相手が、目の前のスタッフの方です。紙で読んだことを、カウンター越しに確かめられるので、納得が深まります。
- 後 入った方に、入る前に何が不安だったかをうかがい、その声で次の話を作ります。季節ごとの募集のたびにゼロへ戻らず、前の話の続きから始められます。
スタッフの方も、これから入る方も、お客さまも、一緒に物語を作る側に回る。だから、読む方にも実感が湧き、入ってからも話が続きます。私たちは、作って納めるところで終わらず、この前・中・後を、御社と一緒に1年、2年と回し続けるプロジェクト運用者として関わっています。
6. 明日からできる3つ
- いま働いているスタッフの方に、「入る前に何が一番不安だったか」を1人1つずつ聞いて、紙に書き出す。
- その不安が本当に起きた日に、先輩が何と言ったかを、言葉のまま書き添える。貼り紙の「未経験歓迎」を、その一言に置き換えてみる。
- お店の中と、お店から歩いて行ける範囲で、その場面を目にしてもらえる場所を3つ挙げる。レジの横、商品の袋の中、近所の掲示板、学校や地域の行事などです。
よくあるご質問
Q1. アルバイトの応募を増やすには、時給を上げるしかありませんか。
時給は大切ですが、上げても近くのお店との比べ合いになるだけで終わりがちです。応募の手前で手が止まる理由は、働く一日が見えないことにあります。初日に何が起きるかを、入る前に場面で見せるほうが先です。
Q2. お客さまに、働く側の話を見せてもよいのでしょうか。
見せるのは、お店の裏側の苦労話ではなく、新しく入った方がどう迎えられるかの場面です。お客さまにとっても、働く方を大切にしているお店だと伝わり、お店への親しみが深まります。
Q3. 求人サイトや貼り紙は、やめたほうがいいですか。
やめる必要はありません。求人サイトは、いま探している方への入口です。そこに加えて、まだ探していない方がお店で働く一日を知る機会を作ります。前田機械さまも、地域への配布とハローワークを両方使われました。
Q4. 1回作れば、応募は来ますか。
1回で来ることもありますが、それを前提にしないほうが確かです。不安は複数あるので、話をつないで季節ごとに届けるほど、近所の方の中でお店の名前が、働く場所として育っていきます。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社のお店に新しく入った方が、初めてレジで間違えた日、先輩は何と言いましたか。
その一言が、いまの貼り紙のどこにも書かれていないなら、毎日来てくださるお客さまにも、まだ御社の一番いいところが届いていません。
スタッフの方と一緒に不安の場面を拾い、マンガにしてお店と地域の暮らしの中へ届け、入った方の声で次の話を作る。その前・中・後を、何年も続けて回していくところまで運用しています。採用マンガプロジェクトを見る
いまの募集の貼り紙をお持ちいただければ、「未経験歓迎」を、御社の先輩の一言に置き換えるところから、一緒に始めます。30分の面談を予約する
参考ブログ
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アルバイトの応募が来ないのは、お店で働く一日が外から見えないからです。「未経験歓迎」を、うまくいかなかった日の先輩の一言に置き換え、お客さまと近所の方の目に触れる形で、季節ごとに続けて届けてください。


