
「求人を出しても、応募してくるのは同年代か、それより上の方ばかりです。若い人がまったく来ません。この地域に、もう若い人がいないということでしょうか」
いません、ではありません。探しはじめた時点で、御社が候補に入っていないだけです。若い方が応募先を選ぶとき、その人の頭の中には、すでに知っている会社の名前が数社だけ並んでいます。求人を出すという行為は、その並びの中から選んでもらう作業であって、並びに載せる作業ではありません。
以下、若い方が応募先を決めるまでの順番を分けたうえで、公表されている調査と、弊社が実際に伴走した現場の記録を並べます。
1. 応募は、選ぶ作業の最後の一手です
採用の話は「応募が来るか、来ないか」で語られます。しかし応募する側から見ると、応募は最後の一手です。その前に、少なくとも3つの段階があります。
- 知っている。名前と、だいたい何をしている会社かが分かる
- 候補に入る。自分が働く場所として考えてよい対象だと思う
- 調べる。求人票やサイトを見て、条件と中身を確かめる
求人票が仕事をしているのは3番目だけです。1番目と2番目が済んでいない相手に対して、3番目の道具をいくら磨いても順番が届きません。若い方の応募が来ないとき、たいていは1番目で止まっています。
ここで問題になるのは、1番目が済んでいるかどうかを、会社側から見ることができない点です。応募が来ない理由が「条件が悪いから」なのか「そもそも知られていないから」なのかは、応募が来ないという同じ一つの結果しか返してきません。だから条件のほうを疑い、給与や休日を見直す方向へ進みます。
2. 若い人ほど、探す期間が短いという事情があります
もう一つ、年齢による違いがあります。
働いた年数が長い方は、業界の中に知り合いがいます。前の職場でのつながり、取引先、同業の集まり。転職を考えたとき、その記憶の中から候補が出てきます。求人を見て初めて知る会社ばかりではありません。
若い方には、その蓄積がありません。学校を出て数年の方が持っている「知っている会社」の一覧は、実家の周りで見聞きしたもの、家族や友人の勤め先、あとは全国区の名前です。そこに地元の中小企業が入っているかどうかは、その会社が過去に何をしていたかで決まります。
そして探す期間は短くなっています。求人サイトを開いて、条件で絞り込み、上から見て、数社に応募する。この作業は数日で終わります。数日の中で「初めて名前を見た会社」に応募する判断は、なかなか起きません。
3. マイナビの調査が示している、知られ方の中身
マイナビが2027年卒業予定の学生を対象に行った調査(有効回答2,800名、2026年3月20日から4月5日)では、地元で働きたいと答えた学生が58.7パーセントでした。前年より2.3ポイント増え、4年ぶりの増加です。
同じ調査で、地元企業を知ったきっかけの第1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で、44.0パーセントでした。
これは新卒の大学生・大学院生を対象にした調査ですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。年齢も、就職活動の進め方も違います。それでも1位の中身は考える材料になります。求人媒体でも、会社のウェブサイトでもなく、日常の会話から知られています。
地元の若い人は、御社を知らないのではありません。知る機会が一度もなかっただけです。この違いは大きく、打つ手がまるで変わります。知らないのだと考えると、伝え方を工夫する方向へ進みます。機会がなかったのだと考えると、機会そのものを作る方向へ進みます。
4. 条件を上げる方向は、いちばん不利な土俵です
応募が来ないとき、最初に検討されるのは条件の見直しです。給与、休日、賞与。ここを動かせば応募は増えるはずだ、という考え方は自然です。
ただ、条件は比較される項目です。比較の土俵に上がった瞬間、相手は同じ地域の会社だけではなくなります。全国に拠点を持つ会社、名前を知られている会社と、同じ表の中に並びます。給料を上げても応募が来ないという現象が起きるのは、上げるほど大きい会社と同じ土俵に乗るからです。
一方で、知られていることは比較されません。「あの会社なら知っている」という状態は、他社と並べて優劣をつける対象になりません。中小企業が持てる強みは、比較されない側にあります。
5. 応募がゼロだった会社が、10日で見学の申し込みを受けた記録
弊社が伴走した前田機械株式会社さま(大阪市港区)の記録を、そのままお伝えします。
金属加工の会社さまです。求人サイトに掲載しても応募がゼロという状態が続いていました。掲載内容が悪かったわけではありません。条件も、写真も、同業他社と並べて見劣りするものではありませんでした。
そこで、求人票を直すのではなく、置き場所を変えました。未経験の方がつまずく場面と、そのとき現場でかけられた言葉をマンガにして、周辺地域へ配布しました。結果として、配布から10日で工場見学の申し込みが入り、そのまま採用に至っています。現在は第2弾を継続して運用中です。
正直に申し上げると、この1件だけで方法の優劣は決まりません。地域性も、業種も、タイミングも重なっています。それでも1つ確かなことがあります。同じ会社が、同じ条件で、届け方を変えただけで応募が発生しました。足りなかったのは条件ではなく、知られていることでした。
6. 探していない時期に、どこへ置くか
若い方に届けるための置き場所は、求人媒体の中ではありません。まだ探していない時期に、その人の日常が通る場所です。
- 家のポスト。本人が読まなくても、家族が読んで話題にします。マイナビの調査で1位だった経路がここです
- 待合室と受付。歯科、理容室、自動車整備工場。滞在時間があり、手持ちぶさたな場所です
- 子どもが持ち帰る紙。保護者は必ず目を通します
- 地元の催し。市民祭、商店街の行事、消防や防災の集まり
- 取引先の休憩室。同じ地域で働く方の家族に、まわっていきます
置き場所を変えるとき、置くものも変わります。求人票は、探している人が読むために作られた書式です。探していない人の手元では、目を通される前に紙として処理されます。地元の人に会社を知ってもらうには、読まれる形のものを置く必要があります。
弊社が採用マンガという形をとっているのは、絵が上手だからではありません。探していない人が、用がなくても最後まで読んでしまう形が、いまのところこれだからです。読み終わったあとに残るのは条件ではなく、その会社で人が働いている場面です。場面のほうが、数年後まで残ります。
よくあるご質問
Q1. うちの地域は、本当に若い人が減っています。それでも同じ話になりますか。
減っている地域ほど、同じ話になります。人数が少ないほど、限られた人が「知っている数社」だけで決めます。その数社に入っているかどうかの比重が上がります。人口が多い地域なら、知られていなくても数の力で応募が発生することがありますが、少ない地域ではそれが起きません。
Q2. 効果が出るまで、どのくらいかかりますか。
知られている状態を作る仕事は、応募という形ですぐには返ってきません。前田機械さまの例では配布から10日で反応がありましたが、これは早いほうです。1回で止めると、届いた記憶も一緒に消えます。続けている間だけ効いている、と考えたほうが実態に合います。
Q3. SNSでも同じことができませんか。
できる部分と、できない部分があります。すでに関心を持っている方へ届けるのはSNSが速いです。一方で、まだ関心のない地元の方の目に入れるのは、いまのところ紙のほうが確実です。届く相手が違うので、どちらかを選ぶというより、届けたい相手から先に決めることになります。
Q4. 若い人向けに、明るく楽しそうな見せ方にしたほうがよいですか。
お勧めしません。入る前に見た姿と、入ってから見た姿の差が、辞める理由のいちばん大きな部分です。実際より明るく見せた分は、入社後にそのまま落差として返ってきます。地味な作業がある職場なら、地味な作業を描いたほうが、残る方が残ります。
Q5. まず何を1つやればよいですか。
御社の社員の方に「この会社を、家族にどう説明していますか」と聞いてみてください。説明できる言葉を持っておられない場合、社外の方が知る機会は、いまのところどこにもありません。そこが出発点になります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
いま御社の名前を、地元の20代の方が聞いたとして、何をしている会社か答えられるでしょうか。
答えられないとお感じでしたら、そのことをご相談のときにお聞かせください。伝え方を変える話ではなく、機会を作る話から始めます。
探していない人の日常に、働く姿を先に置いています。採用マンガプロジェクトを見る
若い人が来ないのは、いないからではありません。探しはじめる前に、名前が入っていなかったからです。
前田機械さまでお作りしたのは、初日に遅刻した新人の話、説明どおりに行かなかった日の話、納期に追われた日の話の3話です。第3話では、失敗を申し出た新人に先輩がこう返します。「ええ判断や。隠すより100倍マシや」。求職者の方が知りたいのは、制度があるかどうかではなく、そのとき自分がどう扱われるかです。不安はひとつではありませんので、物語をつないでお届けします。
御社の場合はどの不安から描くとよいか、ご相談に乗ります。30分ほどお時間をいただければ、その場で1話目の見当までお出しします。相談してみる
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