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製造業の採用課題は、どこにあるのでしょうか?
設備でも待遇でもなく、仕事の中身が外から見えないことでした

公開日:2026年9月25日
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設備でも待遇でもなく、仕事の中身が外から見えないことでした
工場の作業場で、削り出したばかりの金属部品を手のひらに載せて見せているところ。設備でも待遇でもなく、仕事の中身が外から見えないことが課題です

「うちは製造業です。求人票の書き方も直しましたし、初任給も上げました。それでも応募が来ません。製造業の採用課題というのは、結局のところ何なのでしょうか。人口が減っているから仕方がない、で終わらせたくないのです」

課題は、待遇でも設備でもありませんでした。製造業には、他の業種にはない「外から仕事の中身が見えない」という構造があります。見えないものは、選ぶ対象にすら入りません。応募が来ないのは、比べられて負けているのではなく、比べる土俵に上がっていないからです。

以下、製造業に固有の課題を3つに分け、どこから手をつけるかまで並べます。

1. 課題の本体は「仕事の中身が外から見えない」ことです

飲食も小売も、お客として一度は中に入ったことがあります。働いている方の動きを、誰もが見たことがあります。製造業はそうではありません。工場の中は、取引先の方以外、ほとんど誰も入ったことがありません。

すると、応募を考える方の頭の中には、テレビや映画で見た工場の映像しか残りません。ベルトコンベアの前に立ち続ける映像です。実際の御社の仕事とは、まったく違うはずです。それでも、他に材料が無ければ、その映像で判断されます。

ここが製造業の採用課題の本体です。求人票の文章を直しても、この映像は書き換わりません。文字は、すでに読む気のある方にしか届かないからです。

2. 製造業だけが背負っている3つの見えなさ

見えないものを、さらに分けます。この3つは、どれも求人票では解けません。

  1. 仕事の中身が見えない。「機械加工」と書いてあっても、一日のうち何をどれだけやるのかが分かりません。図面を読む時間、段取りの時間、削っている時間の比率が想像できません。
  2. 先入観が先に立つ。きつい、汚い、危ない。この3語は、実際に見たことのない方ほど強く持っておられます。空調を入れた、自動化したと書いても、書いた側の言い分としてしか読まれません。
  3. 一人前までの道のりが見えない。入って3か月で何ができるようになるのか、3年後に何を任されるのか。ここが見えないと、若い方は「時間だけ取られて、つぶしが利かない」と感じます。

3つとも、共通しているのは「言葉では覆せない」という点です。相手が持っている映像より強い映像を、こちらから先に渡すしかありません。

3. 求人票を直しても届かないのは、置き場所の問題です

求人サイトもハローワークも、いま仕事を探しておられる方だけが見る場所です。製造業の求人は、その場所で、知名度のある会社と条件だけで並べられます。給与を上げても、その隣にはもっと上げられる会社が並びます。

そして、御社の近くに住んでおられて、条件が合えば働けたはずの方の大半は、そもそもその画面を見ておられません。いま探していないからです。地元の方は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった。製造業では、これがとりわけ強く効きます。工場は、外から中が見えないからです。

だから手をつける順番は、求人票の文章ではありません。探しておられない方の日常に、仕事の中身が見える形で先に置くこと。ここが最初です。

4. 見えるようにするために、何を渡すか

実際にお渡しするものを、具体的に挙げます。

  1. 一日の流れ。何時に来て、最初に何をして、昼はどうしていて、何時に帰るか。
  2. 新しく入られた方が、最初の1か月で任される仕事。
  3. 先輩の方が、その仕事をどう教えておられるか。教え方そのものが中身です。
  4. 失敗したとき、どうなるか。怒られて終わりなのか、直し方を教わるのか。ここを書ける会社は多くありません。
  5. 3年目の方が、いま何をしておられるか。将来像は、実在の先輩でしか示せません。

この5つは、パンフレットの会社概要欄には載りません。載るのは資本金と沿革と設備一覧です。設備一覧は、取引先には効きますが、応募を考える方には何も伝えません。入る前に働く姿を見ていただくことは、入っていただいた後の定着にもそのまま効きます。

5. 応募ゼロだった機械加工の会社で起きたこと

大阪市港区の前田機械株式会社さまは、大型金属の精密切削機械加工をされています。求人サイトに掲載しても応募がゼロ、という状態からのご相談でした。

最初にうかがったのは設備のことではなく、毎日の手順のほうでした。大きな部品を削るときの段取りと、若い方に最初に任せる仕事の順番。出てきたのはこの2つです。それを採用マンガにして、ポスティングチラシとして地域へ配布し、あわせてハローワークにも展開しました。

配布から10日で見学のお申し込みが入り、その後、採用に至っています。現在は第2弾を継続して運用しておられます。変えたのは待遇ではなく、仕事の中身が見える状態にしたことと、それを置いた場所でした。

弊社がお手伝いしているのは1枚の絵ではありません。配る前・配っている間・配った後までを続ける運用です。工場見学へつなぐ設計も、その中に入ります。

Q1. 設備投資をして環境を良くしました。それは書かないほうがよいですか。

書いてください。ただし、設備の名前ではなく、それで一日がどう変わったかを書いてください。「空調を入れました」より「夏の午後も、汗だくにならずに図面が読めます」のほうが伝わります。読む方が知りたいのは設備ではなく、自分の一日です。

Q2. きつい仕事であることは事実です。隠すべきでしょうか。

隠すと、入られた後に辞める理由になります。きつい部分は、いつ・どの工程で・どのくらいかを具体的に書いてください。そのうえで、そこを越えたときに何ができるようになるかを並べます。曖昧に良いことだけを書くほうが、かえって信用されません。

Q3. 若い方が来ません。年齢層を広げるべきでしょうか。

広げるかどうかの前に、いまの求人が誰の目に入っているかを見てください。若い方が来ないのは応募先として選ばれなかったからではなく、多くの場合、存在を知られていないからです。順番を間違えると、対象を広げても同じ結果になります。

Q4. うちは下請けで、自社製品がありません。それでも見せられますか。

見せられます。伝わるのは製品ではなく仕事です。どんな図面が来て、どう段取りして、どこが難しくて、どう解いたか。自社製品の有無とは関係がありません。むしろ、毎回違う図面が来ることそのものが、仕事の面白さとして伝わります。

Q5. 何から手をつければよいですか。

入社3年目の方おひとりに、入った日のことを聞いてみてください。何が分からなかったか、誰に助けられたか。その話が、そのまま最初の材料になります。会議で採用計画を作るところから始めると、たいてい止まります。

最後に、ひとつだけうかがわせてください。

御社の工場の中を、この1年で、取引先以外のどなたかがご覧になったことはありますか。

思い当たらないようでしたら、それが課題の在りかです。設備でも待遇でもなく、見ていただく機会のほうを先に作ります。

すでに出ている費用に、何が返っていますか。

求人サイトの掲載料、展示会の出展料、広告費。どれも、もう払っている費用です。その額に対して何人採れたのか、何件が商談になったのか。御社の数字を入れると、そのまま出ます。会社名もお名前も要りません。

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製造業の採用課題は、条件で負けていることではありません。工場の中が、外から一度も見えていないことです。

2026年9月25日

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