
「フランスの日本文化イベントを調べている。数年前の一覧に載っていた催しへ問い合わせたら、返事が来ない」
その催しは、もう終わっているかもしれません。ブルターニュの中心都市レンヌがまさにその例で、10年ほど前の一覧に載っていたニオン・ブレイズ・フェスティバルは2019年に終了を発表しています。いまレンヌで続いているのは、レンヌ大学の経営大学院の中で開かれるロアゾン・ジャポンで、2026年3月14日に第6回を数えました。
以下、公式に出ている事実と、弊社が現場で見てきたことを分けて並べます。
1. ロアゾン・ジャポン(Roazhon Japan)の基本情報
公式サイトと、会場である大学の告知に出ている内容です。
- 名称 Roazhon Japan。ロアゾンはブルトン語でレンヌを指す呼び方です
- 回数 2026年3月14日(土曜)に第6回
- 会場 IGR-IAE Rennes(レンヌ大学の経営大学院)。所在地は 11 rue Jean Macé, CS 70803, 35708 Rennes Cedex 7
- 主催 IGR-IAE Rennes の ACECFJM
- 入場 無料
- 来場 第6回は1,900人を超えたと公式に出ています
- 内容 展示、講演、ワークショップ、実演、コンサート。美術、遊び、食、伝統文化にまたがります
出展の枠として公式に案内されているのは、日本にまつわる作品を作るアーティストと職人の展示販売です。企業向けの出展区分や出展料は、公式サイトに記載がありません。出展を検討される場合は、主催へ直接お尋ねいただくことになります。
1日開催で1,900人。ジャパンエキスポの規模と比べれば、小さな催しです。ただし、入場無料で1日に1,900人が大学の建物に入るというのは、その街に日本文化を見に来る人が確かにいるということでもあります。
2. その前に、レンヌには別の催しがありました
2010年代の一覧を見ると、レンヌの欄にはニオン・ブレイズ・フェスティバル(Nihon Breizh Festival)が載っています。ブレイズはブルトン語でブルターニュのことです。
公表されている経緯は次のとおりです。
- 2013年に開始。2013年、2014年、2015年と開催
- 2016年は休止
- 2017年に第4回を開催
- 2019年1月31日、終了を発表
終了の理由として発表されているのは、費用でも来場者の減少でもありません。十分にやる氣があり能力のあるボランティアがいない、という一点です。この規模の催しを協会とボランティアだけで運営するのは非常に難しい、と主催者が述べています。
つまり、レンヌで日本文化の催しが求められなくなったわけではありません。求められていたのに、続ける側が続けられなくなりました。そして数年後、同じ街の大学の中で、別の名前の催しが立ち上がっています。
3. 終わった理由が、そのまま出展する側の教訓になります
ここは、海外の催しに出ようとする日本の会社さまにとって、いちばん実務的な話になります。
弊社代表の松山秀俊は、デジタルコンテンツ協会の白書で、フランスのマンガ・大衆文化イベントの章を執筆してまいりました。2013年版では、山陰国際観光協議会(島根県・鳥取県および各市で構成)が2012年から2013年にかけてジャパンエキスポへ連続出展した事例を、現地取材で扱っています。
そのとき記録したのは、成功の要因ではありません。続けられない理由のほうです。地方公共団体は1回の出展で成果が出ないとあきらめる。担当者が代わると情熱が失われる。この2つが、白書にそのまま書かれています。
主催する側も、出展する側も、止まる理由は同じです。人が続かないことです。だからこそ、出展を決めるときに先に決めておくべきことが3つあります。
- 何年やるか。1回で判断しないと最初に決めておく
- 誰がやるか。担当者が代わったときに、何が引き継がれるのかを形にしておく
- 現地で何を残すか。名刺やリストではなく、来年また会う相手を何人つくるか
小さい催しほど、この3つの効き方がはっきり出ます。1,900人の会場で顔を覚えてもらうほうが、23万人の会場で1日を過ごすより、翌年につながることがあります。
4. パートナーの顔ぶれから読めること
ロアゾン・ジャポンの公式サイトには、2026年のパートナーが掲載されています。書かれているとおりに挙げます。
- 日本側 東日本旅客鉄道(JR East)、日本政府観光局(JNTO)、Mitsubishi Electric R&D Centre Europe、Makurazaki France Katsuobushi
- 地元企業 Canon Bretagne、Bretagne Gourmet、Radio Rennes
- 大学・行政 IGR-IAE Rennes、Fondation IGR-IAE、IGR Alumni、Université de Rennes、Rennes Métropole、CROUS-CVEC、Centre Franco-Japonais de Management
入場無料の1日の催しに、これだけの名前が並んでいます。読み取れることが2つあります。
1つ目は、ブルターニュには日本企業の現地拠点があるということです。Makurazaki France Katsuobushi は、鹿児島県枕崎市の枕崎水産加工業協同組合などが設立し、ブルターニュ地方コンカルノーで2016年8月に操業を始めた鰹節の工場です。日本の食材を欧州で作る拠点が、この地域にあります。
2つ目は、規模の小さい催しほど、地元の大学・行政・企業と近い距離で組まれているということです。大きな催しでは1出展社にすぎない会社でも、ここでは主催と直接話せます。海外での初回に、この距離の近さは効きます。
5. 出展を考えるときに、必ず確かめる5つ
公式サイトに出展料の記載がない催しは、フランスの地方では珍しくありません。問い合わせのときに、次の5つを書き添えてください。
- 企業の出展区分はありますか。アーティストと職人の枠しかない場合、企業はどう参加できますか
- 小間の広さ、机と椅子、電源の有無、そして費用はいくらですか
- 前回の来場者の内訳(年齢層、地元と遠方の比率)を教えていただけますか
- 出展の申込はいつ開き、いつ締め切りますか
- 会場で日本語と英語のどちらが通じますか。通訳は主催で用意されますか
返答の速さと具体性まで含めて、判断の材料になります。学生団体が主催している催しでは、年度が替わると担当者が全員入れ替わることがあります。そのときに、去年のやりとりが引き継がれているかどうかは、問い合わせの返答から見えます。
弊社は、フランスのJAPAN EXPO等のマンガ関連イベントに計11回出展してまいりました。言葉が通じない通路で分かったのは、掲げた説明文の正確さでは足が止まらないということです。読ませる資料より、絵だけで筋が追えるもののほうが、通路では強い。人数の少ない会場ほど、その1人ひとりと何を話したかが翌年に残ります。
よくあるご質問
Q1. 1,900人の催しに出る意味はありますか。
あります。ただし、その場で売り切ることを目的にすると合いません。翌年また会う相手を何人つくれるかで見てください。入場無料で1日の催しは、来場者との距離が近く、名前を覚えてもらいやすい場です。大きな催しの前に、自社の見せ方の当たり外れを掴む場としても使えます。
Q2. 数年前の一覧に載っている催しは、そのまま使えますか。
使えません。レンヌの例のとおり、終了しているものがあります。イベント名、開催時期、会場、料金は、必ず公式サイトで確認してから動いてください。公式サイトが更新されていない催しは、それ自体が判断材料です。
Q3. ブルターニュはパリから遠くありませんか。
パリからレンヌまでは高速鉄道で結ばれており、日帰りできる距離です。ただし、出展するなら日帰りにしないでください。会場の外で会う時間が、翌年につながります。
Q4. 学生団体が主催する催しは、企業が出て大丈夫ですか。
公式のパートナーに大企業と行政が並んでいることが答えになります。氣をつけるのは、担当者が毎年替わる前提で進めることです。やりとりは必ず記録に残し、次の担当者へ渡せる形にしておいてください。
Q5. まず何から始めればよいですか。
その年に開かれる催しを1つ選び、出展せずに見に行くことをおすすめしています。通路を歩いているのがどんな人か、どのブースの前で足が止まっているかを、自分の目で見てください。資料で読むより速く、翌年の設計が決まります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
海外の催しに出るとしたら、御社は何年続けるとお決めになりますか。
その年数を書いた紙を1枚、ご相談のときにお持ちください。
海外での実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
催しが終わる理由も、出展が続かない理由も、同じです。人が続かないことです。
参考ブログ
参考実績


