
「パリ、リヨン、マルセイユ、トゥーロン、ボルドー、ストラスブール、ナント、トゥールーズ、トゥール。フランスの主だった都市は一通り見てきた。ブルゴーニュには、出る場所はないのだろうか」
あります。ディジョンのカモコン(Kamo Con)です。会場はディジョンの見本市会場。ただし、この催しには先にお伝えしておくべき特徴が1つあります。出展の入口が「クリエイター」と「ショップ」の2つしか用意されていないことです。自社がどちらの名札を付けて入るのかを決められない会社は、申込の一歩目で止まります。公式サイトで確認できた事実だけを順に並べます。
1. 会場はディジョンの見本市会場です
会場は、ディジョンの見本市会場(Parc des Expositions de Dijon)です。公式サイトの案内ページに、次のことが書かれています。
- 所在地はアヴニュー・デ・グラン・デュック・ドクシダン(Avenue des Grands Ducs d’Occident)
- 来場者の入口は第2ホール、ポルト・デ・グラン・デュック・ドクシダン
- 開場は土曜が10時から19時、日曜が10時から18時
- 2026年の回は3月28日と29日に開かれた
市民会館や大学の校舎を借りる形ではなく、見本市のための建物です。搬入口と動線がはじめから見本市用に作られていること、電源や什器を会場側の仕組みに乗せられること。この2つは、はじめて海外へ出る会社にとって地味ですが大きな差になります。
ディジョンはブルゴーニュの中心都市です。パリから見れば南東、リヨンへ向かう線の途中にあたります。ぶどう畑と食で知られる地域で、日本からの観光でも名前を聞く土地です。
2. 出展の入口は「クリエイター」と「ショップ」の2つです
ここが、この催しのいちばんの特徴です。公式の出展ページに並んでいる区分は、次の2つだけでした。
- クリエイター(Créateur)
- ショップ(Boutique)
そして対象について、公式は「アマチュアの作家でも、経験を積んだ作家でも、職人でも、店でも」と書いています。作る人と売る人のための催しである、という設計が、区分の名前にそのまま出ています。
日本の見本市に慣れていると、この2つしかない状態は不親切に見えるかもしれません。企業出展、団体出展、自治体枠、といった箱が用意されていないからです。けれども、これは不親切なのではなく、催しの性格をそのまま表しています。ここは、作った本人が机の向こうに立っている場です。
ですので、出展を考える会社が最初に決めるのは、予算でも小間の広さでもありません。自社は「作る人」として入るのか、「売る店」として入るのかです。ここが決まらないまま問い合わせると、先方も返事の書きようがありません。
3. 申込はメールかフォームだけです
申込の順路も、公式に明記されています。
- 公式に掲載された申込先へメールを送り、申込書一式を受け取る
- または、公式サイトに置かれた申込フォームから送る
そのうえで公式は「メールまたはフォームによる依頼のみを処理します」と書き添えています。会場で声をかける、交流サイトの投稿に返信する、といった経路では受け付けられない、ということです。少人数で運営している催しでは、窓口を絞ることが運営を守る手段になります。この一文は、守るべき作法として読むのが正解です。
4. 公式が出していない数字は、出していないと書きます
調べた範囲で、公式サイトに載っていなかったものを正直に並べます。
- 出展料の金額
- 区画の広さと設備の内訳
- 申込の締切日
- 来場者数と出展者数
- 次回の開催日
催事情報のサイトや地元の報道には、来場者数や次回の日程を挙げているものがあります。ただし公式の掲示ではありませんので、本稿では数字として扱いません。開催の回数についても、公式の出展ページの記述と地元報道の伝える回数が一致しませんでした。数え方の分からない数字を、確かなもののように書かないためです。
入場券については、公式は「前売りのほうが安く、開催の1週間前からと当日は通常料金になる」とだけ書いています。金額は案内ページには出ていません。
なお公式サイトには、カモコンと並んでカモプレイ、カモポリスという名前の催しも置かれています。同じ運営が複数の催しを持っている形です。問い合わせるときは、どの催しの話なのかを最初に書き添えると行き違いが起きません。
5. 区分が2つしかない催しに、会社はどう向き合うか
ここからは公式の事実ではなく、私どもが現場で見てきたことです。
私どもは、フランスのジャパンエキスポ等へ累計11回出展してきました。毎回痛感するのは、通路で足が止まるかどうかは、掲げた説明文の正確さでは決まらないということです。言葉が分からない人が、絵だけで筋を追えるかどうかで決まります。
そしてクリエイターと店しかない催しでは、この差がさらに大きく出ます。隣にいるのは、自分で描いた絵を自分で並べている人たちです。そこに、会社案内をきれいに翻訳して積んだだけの机が並ぶと、通路からは「何の机か分からない机」に見えます。名札が2つしかない場では、自社がどちらなのかを一目で見せる必要があるのです。
私どもの代表は、デジタルコンテンツ白書のフランスの章を執筆しました。その取材のなかで、日本の自治体がジャパンエキスポへ2012年から2013年にかけて連続出展した事例を扱っています。白書には、成果が出る前にやめてしまう理由まで書かれています。1回の出展で成果が出ずにあきらめること。担当者が代わって情熱が引き継がれないこと。この2つです。小さい催しほど、続けて出た会社の顔が覚えられます。裏返せば、1回で判断してしまうと、いちばん効く部分を取りこぼします。
よくある質問
Q1. マンガやアニメと関係のない業種でも出られますか。
公式が挙げている対象は、作家、職人、店です。業種そのものは限定されていません。ですので、工芸品や食品を扱う会社が「職人」または「店」として入る余地はあります。ただし判断は運営側にありますので、扱う商材と希望する区分を書いて、申込先へ確認するのが確実です。
Q2. 出展料はいくらぐらいでしょうか。
公式サイトに掲示がありませんので、金額は書きません。フランスの催しでは、区画の位置と広さで金額が変わるため、非掲示は珍しいことではありません。希望する広さと扱う商材を書いて申込書を取り寄せるのが、いちばん早い順路です。
Q3. 次回はいつですか。
本稿の執筆時点で、公式サイトは次回の日付を掲示していません。開催までの残り時間を数える表示があるだけです。日程が出てから動くのではなく、日程が出るまでの間に「自社はクリエイターとショップのどちらで入るか」を社内で決めておく、という順序をおすすめします。
Q4. パリのジャパンエキスポと、どちらに出るべきですか。
比べるものではないと考えています。パリは規模が桁違いに大きく、費用も競争も比例して重くなります。ディジョンは地方都市の催しで、区分も2つです。自社の物語が現地で通じるかを確かめる場としては、むしろ扱いやすい大きさです。試す場と、勝負する場を分けてお考えください。
Q5. 何を持っていけばよいですか。
作り手が自分の手元の物を並べている場です。文字量の多い会社案内は、隣の机に埋もれます。言葉が分からなくても絵だけで筋が追えて、手に取って持ち帰れる形のものを1つご用意ください。翻訳の前に、絵で伝わるかどうかが先です。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社は「作る人」と「売る店」の、どちらの名札で通路に立ちますか。
選んだほうの理由を、ご相談のときにお聞かせください。
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区分が2つしかない場では、どちらでもない机がいちばん通り過ぎられます。
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