
「うちは人がいいんです。職場の雰囲氣がいいんです。それが、求人票では伝わらなくて」
伝わりません。雰囲氣は形容詞では伝わらないからです。アットホーム、風通しがいい、和氣あいあい。どれも書いた側の評価であって、読む側が確かめられる事実ではありません。伝える道はひとつだけで、その雰囲氣を作っている場面を、そのまま見せることです。
1. 形容詞は、読む側で検証できません
「アットホームな職場です」と書いてある求人を見た人が、何を確かめられるかを考えてみます。答えは、何も確かめられない、です。誰が、いつ、どんなふうにアットホームなのかが1つも書かれていないからです。
しかも、この言葉はどの会社も使います。同じ言葉が並べば、読む側はそこで差をつけられません。差がつけられない情報は、読み飛ばされます。
いっぽう、こう書いてあったらどうでしょうか。「朝8時10分に全員でラジオ体操をして、そのあと5分だけ雑談してから持ち場に散ります。この5分で、前の日にうまくいかなかったことがだいたい共有されます」。読む側は、その5分の情景を思い浮かべることができます。思い浮かべられたものだけが、記憶に残ります。
2. 求職者が本当に知りたいのは、この4つです
待遇の話ではありません。働いている自分を思い浮かべるために必要な情報です。
- 子どもの熱で遅刻や早退を申し出たとき、どんな反応が返ってくるか
- 有給休暇を、実際に誰が、どのくらい、どんな理由で取っているか
- 3年後、5年後に、自分は何をしている人になっているか
- 直属の上司が、どんな人か。どんな失敗をしてきた人か
この4つは、求人票の項目にありません。だから、載っている会社がほとんどありません。逆に言えば、ここを書くだけで抜けられます。
3. 条件で並べると、必ず大きい会社が勝ちます
求人サイトは、条件で並べ替えるための道具です。給与、休日数、通勤時間、手当。すべて数字で比べられます。数字で比べられる土俵に自分から上がれば、体力のある会社が勝ちます。
しかも条件は、満たされていないと不満になりますが、満たされたからといって「この会社で働きたい」まで人を運んではくれません。人を運ぶのは、そこで何をしている自分が見えるか、誰と働くのかが見えるか、という別の要素です。
だから、土俵を変えます。条件で選ばれる場所ではなく、働く姿を見てもらえる場所を、自分で作る。
4. 地元の人は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった
ここが、いちばん申し上げたいところです。
求人広告は、いま仕事を探している人にしか届きません。探していない人は、求人サイトを開きません。ところが、地元で採用できる可能性がいちばん高いのは、いま探していない人です。子どもが小学校に上がった人、通勤に片道1時間かけている人、いまの職場で3年目に入った人。その人たちは、御社の名前を知らないのではありません。知る機会が、一度もなかっただけです。
マイナビの2027年卒の調査(調査期間は2026年3月20日から4月5日、有効回答2,800人)では、地元就職を希望する学生が58.7%で、前年より2.3ポイント増え、4年ぶりに増加しました。同じ調査で、地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。
これは新卒の学生を対象にした調査で、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、会社を知るきっかけが求人広告ではなく人づての話だった、という点は、中途でも大きくは変わらないはずです。人づてに話が出るためには、話せる中身が要ります。条件は話題になりません。場面は話題になります。
5. 雰囲氣を「見せる」5つの型
どれも、社内にすでにある話です。新しく作る必要はありません。
- 1日の流れを時刻つきで書く。朝礼が何時何分に始まり、昼はどこで食べ、終業後に誰が残っているか
- 入社1年目の人が最初の3か月でつまずいたことと、それを誰がどう助けたか
- 有給を取った実例。何日取って、何をしたか。取るときに何と言えばよかったか
- 失敗が起きたときに、現場でどう扱われたか。誰が最初に声をかけたか
- 上司が新人だったころの話。いまの若手と同じところでつまずいた話
5つとも、主語が人で、動詞が具体です。形容詞はひとつも要りません。
6. 大阪市港区の前田機械さまの場合
前田機械さまは、求人サイトに掲載しても応募がありませんでした。ゼロです。条件を上げれば来る、という話ではありませんでした。そもそも、会社の存在が地域に知られていなかったからです。
そこで、働いている場面を採用マンガにして、地域へ配布しました。配布から10日で、見学の応募がありました。そのまま採用に至り、現在は第2弾を継続して運用しています。
マンガにしたのは、条件ではありません。工場の中で、誰が、どんな顔で、何をしているか。その場面だけです。読んだ人は、求人を探していたわけではありませんでした。ポストに入っていたものを読んで、行ってみようと思われた。順番はこちらです。
よくあるご質問
Q1. 写真を載せています。それではだめですか。
だめではありません。写真は強い道具です。ただ、写真は瞬間しか写せません。「3年後の自分」や「失敗したときにどう扱われるか」は、時間の流れの中にしかないので、1枚の写真には入りません。場面を連ねられる形式が要ります。
Q2. 社員インタビューを載せていますが、反応がありません。
質問が原因のことが多いです。「やりがいは何ですか」と聞くと、答えは必ず形容詞に戻ります。「先週いちばん時間がかかった作業は何ですか」「入社して最初に怒られたのはいつ、何でしたか」と、時刻と出来事で聞いてください。答えがそのまま場面になります。
Q3. 正直、雰囲氣が良いとは言えません。
その場合は、書く前に直してください。飾って採用すると、入社後に必ず露見します。早期離職は、採用できなかったときより費用がかかります。ただ、直している途中である、という事実そのものは書けます。何を、いつから、どう変えているか。これは十分に伝わります。
Q4. どのくらいで反応が出ますか。
前田機械さまでは、配布から10日で見学の応募がありました。ただ、1回で終わらせないことが前提です。探していない人に届けるということは、その人が探し始める日まで、覚えていてもらうということです。1回の配布は、その日のためのしるしを置く作業だとお考えください。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社で、昨日いちばん和やかだった場面は、何時ごろの、どこの、誰と誰のやり取りでしたか。
それが答えられるなら、御社の雰囲氣はもう言葉にできます。ご相談のときは、いまお使いの求人票を1枚お持ちください。
働く一日を、探していない人にも届く形にしています。採用マンガプロジェクトを見る
形容詞を強くするのではなく、場面を1つ増やす。伝わり方は、そこでだけ変わります。
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