
「名刺は300枚集まった。会期の翌週、全員にお礼のメールを送った。返ってきたのは3件だった」
返事が来ないのは、相手が忙しいからでも、メールの文面が悪いからでもありません。当日、御社が相手の記憶に残っていないからです。名刺は、記憶が残った証拠にはなりません。ここには数字の裏づけがあります。公開されている調査と、弊社が20年で見てきたことを、順に並べます。
1. 名刺の枚数と、返信の数は連動しません
会期が終わったあと、社内へ出す報告書に書きやすいのは名刺の枚数です。数えられるからです。ところがその数は、翌月の商談の数とほとんど連動しません。理由は単純で、名刺は「話した」証拠ではなく「立ち寄った」証拠だからです。
来場者の側に立つと分かります。通路を歩き、目に入った小間に立ち寄り、名刺を1枚渡す。それだけで1枚が積み上がります。名刺の束の厚みは、御社が覚えられた回数ではなく、通路を歩いた人の数に比例します。
2. 来場者は1日に、平均17社をまわっています
産業向けの情報サイトを運営するアペルザが、来場者413人に行った調査があります。そこに、出展する側が知っておくべき数が3つ出てきます。1つめがこれです。
- 来場者が1回の展示会でまわる出展社は、平均17社(アペルザ調べ n=413)
17社です。御社は、その17分の1です。相手は会場を出たあと、17社ぶんの記憶を持ち帰り、電車の中でそれが混ざります。翌週、御社からメールが届いたとき、相手は「どこの会社だったか」を思い出すところから始めることになります。
3. 渡した資料の94.9%は、保管されません
同じ調査の2つめです。
- 会場で受け取った資料のうち、保管されるのは一部で、94.9%は保管されない(アペルザ調べ n=413)
会期の前、多くの会社が資料の準備に時間をかけます。刷り部数を決め、封筒を用意し、当日はそれを配ることが仕事になります。ところが配った先で、そのほとんどは残りません。捨てられるというより、置き場所がないのです。17社ぶんの紙を持ち帰った人の机の上を想像すれば、無理のない話です。
4. 名刺の57.7%は、社内で管理されていません
名刺の側にも数があります。名刺管理サービスを提供するSansanが、ビジネスパーソン1,272人に行った調査です。
- 受け取った名刺のうち57.7%が、社内で共有も管理もされていない(Sansan調べ n=1,272)
これは、御社が受け取った名刺の話でもあり、相手が受け取った御社の名刺の話でもあります。渡した名刺の半分以上は、相手の引き出しの中で止まっています。名刺交換は、つながりが成立した証拠ではありません。
5. それでも、訪問後に56.6%が検討を始めています
ここまでは暗い数字ばかりでしたが、同じアペルザの調査に、3つめの数があります。
- 展示会でブースを訪問したあと、56.6%が検討を開始している(アペルザ調べ n=413)
半分以上が動いています。つまり展示会そのものが効かないのではありません。効いている会社と、効いていない会社に分かれているだけです。分かれ目は、会期後のメールの書き方ではありません。当日、その小間で何が起きたかです。
6. リスト集めがゴールになると、後追いは無視されます
ここからは、弊社が現場で見てきたことです。数字ではありませんが、これがいちばんお伝えしたいことです。
多くの出展が、リストを集めることをゴールに設計されています。目標は名刺の枚数で置かれ、当日の動きはその枚数を最大にするように組まれます。そして「集めたあとは、テレアポやメールで育てればいい」と考えられています。
ここに誤解があります。データだけを取っても、現場で盛り上がっていなければ、後追いは商談に結びつきません。相手の中に「あの場所は面白かった」という手ざわりが残っていないところへ、メールだけが届くからです。届いたメールは、17社ぶんの記憶の中で見分けがつかず、開かれずに終わります。
逆に、当日その小間で相手が身を乗り出し、笑い、連れの人を呼んできたのなら、翌週のメールは「あのときの」という一行で通じます。会期後の返信率は、会期後の仕事ではなく、当日の仕事の結果です。
7. 会期後ではなく、当日にやっておく3つのこと
では当日、何をしておけばよいのか。3つに絞ります。
- 相手の言葉を1つ、その場で名刺に書き留める。会社名でも役職でもなく、相手が困っていると言った言葉をそのまま書く。翌週のメールは、その言葉から書き始める
- 資料を渡す前に、相手が変わったあとの場面を1つ見せる。紙は残りませんが、場面は残ります
- その場で次の日時を決める。会場を出た瞬間から、御社の順位は17分の1に戻ります
3つとも、会期後にはできません。当日にしかできないから、当日にやります。
8. 私たちの現場から
弊社は、フランス・JAPAN EXPO等に11回出展してきました。自社が出展者として立ってきた時間のほうが、実は長いのです。
11回のあいだに分かったことを、ひとつだけ申し上げます。初回で成果が出た年はありません。名刺の枚数がいちばん多かった年と、その後に話が続いた年は、別の年でした。枚数が多かった年は、通路を向いて配ることに集中した年です。話が続いた年は、立ち止まった人と長く話し、枚数が減った年でした。
マンガを使うのは、この「立ち止まって、長く話す」を、人手を増やさずに起こすためです。読んでいるあいだ、相手はその場に留まります。留まった時間の長さが、翌週の返信率になります。
よくあるご質問
Q1. 会期後のメールは、何日以内に送るべきですか。
日数よりも中身です。当日その場で相手が言った言葉が1つ書いてあるメールは、3日後でも1週間後でも読まれます。定型のお礼文は、翌日に届いても読まれません。まず、当日に言葉を書き留めるところから始めてください。
Q2. 名刺の枚数を目標にしてはいけないのですか。
目標に置くと、当日の動きが枚数を最大にする形へ寄っていきます。通路へ向かって配る時間が増え、立ち止まった人と話す時間が減ります。枚数は記録として残してよいのですが、目標は「20分以上話した相手の数」など、会話の側に置くことをお勧めします。
Q3. 資料の94.9%が残らないなら、資料は作らなくてよいのですか。
持ち帰らせるための資料と、その場で見せるための資料を分けてください。残らないのは持ち帰り用のほうです。その場で相手と一緒に見て、指をさしながら話せるものは、紙が捨てられても記憶に残ります。
Q4. 小間が小さく、人手も2名しかいません。
小さいほうが、この設計には向いています。大きい小間は通路を向いて配る形になりやすく、小さい小間は立ち止まった人と話す形になります。2名なら、1名は必ず座って話せる位置にいてください。
Q5. 当日は盛り上がったのに、やはり返事が来ませんでした。
盛り上がった相手が、決める人だったかどうかをご確認ください。会場で熱心に話す方が、社内で予算を持っているとは限りません。当日その場で「社内でどなたにお見せになりますか」と一言うかがっておくと、翌週の宛先が変わります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
前回の展示会でいただいた名刺のうち、その方が困っていると言った言葉を、いま思い出せるのは何枚ぶんですか。
思い出せた枚数が、そのまま次の商談の数です。前回お使いになった配布物を1点、ご相談のときにお持ちください。
展示会での実際の取り組みをご覧いただけます。展示会マンガの事例を見る
会期後の返信率は、会期後の仕事ではありません。当日の仕事の結果です。
参考ブログ
参考実績


