
「SNSで採用がうまくいっている会社があると聞きました。うちにもメリットはあるのでしょうか」
結論から申し上げます。メリットはあります。ただし「応募の入口が1つ増える」という意味ではありません。求人サイトもハローワークも、いま仕事を探しておられる方にしか届きません。SNSの値打ちは、探していない方の日常に先に置けることです。ここを取り違えたまま投稿を続けても、応募にはつながりません。
1. SNS採用のメリットは、届く相手そのものが違うこと
求人媒体は、相手が自分から検索して、はじめて出会う場所です。つまり「いま辞めようとしている方」「いま探しておられる方」だけが見ています。募集をかけた瞬間の求職者の数が、そのまま母数の上限になります。
SNSはここが違います。相手が探していなくても、日常の画面に流れてきます。今日は転職する氣がまったくない方の目にも入ります。これは求人票には絶対にできないことです。
弊社にインターンで来ていた大学生に聞いたところ、検索エンジンはほとんど使わず、Instagramの中で調べることが多いという話でした。これは統計ではなく、その学生ひとりの話です。ただ、探し方そのものが変わってきている感触は、採用のご担当者の多くがお持ちだと思います。
2. 地元の人は、会社を知らないのではなく、知る機会がなかった
ここがいちばんお伝えしたいところです。
地元の方は、御社をご存じないのではありません。知る機会がなかっただけです。同じ町に住み、前を何度も通り、それでも中で何が作られているかを聞いたことがない。知名度の問題ではなく、接点の問題です。
マイナビの新卒調査では、地元での就職を希望する学生は58.7%で、前年から2.3ポイント増え、4年ぶりの増加でした(n=2,800、2026年3月20日から4月5日の調査)。同じ調査で、地元企業を知ったきっかけの1位は「家族や知り合いの勤務先企業の話を聞いたことがある」で44.0%でした。
これは新卒の学生を対象とした調査ですので、中途採用にそのまま当てはめることはできません。ただ、会社を知る入口が求人ではなく日常の会話だった、という点は見逃せません。SNSが担おうとしている役割は、まさにここです。
3. SNS採用に向いている3つの理由
- 日常の言葉で書けます。ホームページのように整えなくてよいぶん、現場の空氣がそのまま出ます。
- その日のことを、その日に出せます。ホームページの更新は手続きが要りますが、SNSは今日の朝礼の話を今日出せます。
- 双方向です。いいね、コメント、共有、直接のメッセージ。求人票には返信欄がありません。
この3つはどれも「条件を伝える力」ではありません。「働く姿を見せる力」です。SNS採用が効くのは、条件で勝てない会社ほど、ここで差がつくからです。
4. それでもSNSだけでは届かない方がいます
正直に申し上げます。SNSは、アカウントをお持ちで、その画面を見ている方にしか届きません。
地元採用でいちばん採りたい層を思い浮かべてください。ご家族。近所にお住まいの方。いまの職場に強い不満はないけれど、話くらいは聞いてみたい方。この方々が、御社のアカウントを見つけてくださる確率は高くありません。
ポスティングを試されて、反応がなくて終わった、というお話もよくうかがいます。あの時に足りなかったのは枚数ではなく、配ったものが読み物になっていたかどうかです。SNSも紙も、同じところでつまずきます。会社の説明が並んでいるだけなら、画面でも紙でも読み飛ばされます。
5. 大阪市港区の前田機械さまで起きたこと
前田機械さまは、求人サイトに掲載しても応募がゼロという状態が続いていました。
そこで、働く姿をマンガにして、会社の周りの地域へ配布しました。配布から10日で、見学のお申し込みが届きました。そのまま採用に至り、いまは第2弾を継続して運用しておられます。
この時に動いたのは、条件ではありません。「この工場では、こういう1日が流れている」という中身が、はじめて外から見えるようになったことです。SNSでやろうとしていることと、まったく同じ話です。
6. SNS採用を始める前に決めておく3つのこと
- 誰に見せるかを1人に絞ります。「若い人」ではなく「通勤30分圏内に住む、いま製造の現場で働いている25歳」まで絞ります。
- 何を見せるかを決めます。募集要項ではなく、働く姿です。遅刻したときにどうなるか。有給はどう申請するか。上司はどんな人か。求人票に書けないことほど、知りたがられています。
- どれくらい続けるかを先に決めます。3か月で応募が来なくても止めない、と決めてから始めてください。探していない方に届く手段は、届いてから思い出されるまでに時間がかかります。
よくあるご質問
Q1. SNS採用は、何から始めればよいですか。
アカウントの開設より先に、見せる中身を決めてください。1週間分の投稿を紙に書き出してみて、そこに「働く姿」が3回以上出てこないようなら、まだ始める段階ではありません。
Q2. 担当者が1人しかいません。続けられるでしょうか。
毎日の投稿は必要ありません。続かない頻度で始めるほうが危険です。週1回でも、同じ曜日に同じ視点で出しているほうが、見ている方の記憶には残ります。
Q3. 中途採用にもSNSは効きますか。
効きます。ただし新卒より時間がかかります。中途の方は、いま働いておられるぶん、見てから動くまでが長くなります。すぐの応募を期待せず、思い出していただく前提で設計してください。
Q4. SNSとポスティング、どちらを先にやるべきですか。
地元に絞るなら紙が先です。SNSは相手が見にきてくださらないと届きませんが、紙はご自宅の玄関まで届きます。届いたあとに「もっと見たい」と思われた方の行き先として、SNSを用意しておくのが順番として自然です。
Q5. 効果はどう測ればよいですか。
応募数だけで測らないでください。面接に来られた方に「うちを何で知りましたか」と必ずうかがってください。SNSの本当の効果は、応募の数ではなく、来られた方がすでに御社をご存じだったかどうかに出ます。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社のSNSをこの1か月ぶんさかのぼったとき、そこに「働いておられる社員の方の1日」は何回出てきているでしょうか。
数えてみて少なかったと感じられたなら、直すのは投稿の頻度ではありません。直近1か月の投稿を印刷して1枚お持ちください。どこまでが会社の説明で、どこからが働く姿の話になっているかを、一緒に読み分けます。
地元での採用に取り組んだ実際の事例をご覧いただけます。採用マンガの事例を見る
発信の頻度を上げる前に、見せる中身から。
参考ブログ
参考実績


