
「フランスのマンガイベントに出てみたい。ジャパンエキスポ以外にも場所はあるのだろうか」
結論から申し上げます。あります。パリ北郊で年2回開かれるParis Manga By TGSがそれです。ただし、出展を考えるうえで最初に知っておくべきなのは規模でも料金でもなく、公式サイトが出展者を4つの区分に分けているという事実のほうです。この記事は、2026年8月7日に公式サイト(parismanga.fr)で確認できた事実だけを並べます。出展のお誘いはいたしません。
1. まず、名前が変わっています
日本語の記事や古い資料では「Paris Manga & Sci-Fi Show」と書かれていることが多いのですが、現在の公式名称はParis Manga By TGSです。主催はTGS(Toulouse Game Show)系の運営体で、問い合わせ先もcontact@tgsevents.comになっています。
海外イベントを調べるときに最初につまずくのがここです。数年前の日本語まとめ記事を頼りにすると、すでに存在しない名前で検索し続けることになります。社内で共有する資料には、必ず公式サイトで確認した現行名称を書いてください。
2. 次の開催は、いつ、どこか
公式トップページに掲示されている内容です。
- 会期は2026年10月3日から4日の2日間。
- 回数は40回目(40ème édition)。2026年3月14日から15日に39回目が開かれており、年2回開催です。
- 会場はパリ北郊のParis Nord Villepinte。ジャパンエキスポと同じ見本市会場です。
- 開場は9時30分。
年2回というのは、海外出展を考えるうえで見落とされがちな利点です。1年に1度しかない場だと、失敗しても次の検証まで12か月空きます。半年で2回目を打てる場は、試して直すという当たり前のことができます。
3. 規模は、公式サイトに3つの数字で出ています
トップページに掲示されている数字は次の3つだけです。
- 会場面積 35,500平方メートル
- 出展ブース 300スタンド
- ステージ 4か所
来場者数は公式サイトに掲示されていませんでした。報道各社は数万人規模と伝えていますが、公式を出典とする来場者数は確認できませんでしたので、この記事では書きません。社内の稟議に来場者数を書くなら、出典が公式かどうかを必ず添えてください。後で必ず聞かれます。
4. 出展区分は4つ。ここがいちばん重要です
公式の出展者一覧ページ(parismanga.fr/exposants)には、絞り込みのフィルターが置かれています。そこに並んでいる区分が、そのまま出展者の分類です。
- ASSOCIATION(アソシエーション/非営利団体)
- BOUTIQUE(物販店)
- CRÉATEUR(クリエイター)
- ARTIST ALLEY(作家の直売区画)
実際に並んでいる出展者名を見ると、性格がはっきりします。フランスの非営利団体、日本の商品を扱う物販店、アクセサリーやイラストの個人作家。「企業ブース」「法人展示」といった区分は置かれていません。
これは、日本の中小企業にとって重要な情報です。この場は、その場で買っていただく場として設計されています。技術や製品の説明をして名刺を交換し、後日商談へ、という日本のBtoB展示会の型をそのまま持ち込むと、区分の時点で噛み合いません。出るなら、4つのどれとして出るのかを先に決める必要があります。
5. 出展料は公開されていません
公式サイトに出展料金表はありませんでした。出展の相談は問い合わせ先(contact@tgsevents.com)へ個別に行う形です。ジャパンエキスポと同じで、金額はまず名乗ってから出てくる仕組みだとお考えください。
インターネット上には金額が書かれた情報もありますが、公式を出典とするものは確認できませんでした。区画の広さ、位置、什器の有無で総額が変わる以上、個別見積りにならざるを得ません。年度も区分も違う数字を予算の根拠にすると、社内での説明が後で崩れます。
6. 来場者は、当日その場でチケットを買えません
公式のチケットページに、はっきりと書かれています。現地での当日券販売はありません(PAS DE BILLETTERIE SUR PLACE)。価格は次のとおりです。
- 1日券(13歳以上)20ユーロ。
- 1日券(8歳から12歳)15ユーロ。8歳未満は無料。
- 2日通し券 35ユーロ(数量限定・再入場可)。
- VIP EXPRESS 85ユーロ(2日間・優先入場)。
この一文が意味することは、金額の大小ではありません。来場者は全員、事前に日程を決めて、自分でお金を払ってから来ているということです。通りすがりの人はひとりもいません。日本の文化に対する熱氣が、そのまま行動として先に出ている場だということです。
ブースの前を通る人が「たまたま来た人」なのか「決めて来た人」なのかで、当日の設計はまるで変わります。出展料の多寡より先に、この違いを踏まえているかどうかで結果が分かれます。
7. 記録として残っている、フランス市場の事実
私(松山)は、デジタルコンテンツ協会のデジタルコンテンツ白書でフランスの章を担当していました。当時の記録から、いまも判断材料として使えるものを3つ挙げます。
- 2012年度、フランスでは日本のマンガや大衆文化を扱うイベントが年間58件記録されていました(白書2013・出典Nautiljon)。これは2012年度の数字であって、現在の件数ではありません。
- それまではパリ集中でしたが、クレルモン・フェランなど地方にも開催地が広がりました。大きな会場を取れない規模の会社にも、出る場所の選択肢があるということです。
- 山陰国際観光協議会が2012年から2013年にかけてJapan Expoへ連続出展しています。白書ではこの取材の際、「1回の出展で成果が出ずあきらめてしまう」「担当者が代わって情熱が続かない」という、続けられない側の理由まで記録しました。
8. 区分を見て、先に決めておくこと
私たちはフランスのJAPAN EXPO等のマンガ関連イベントに、これまで計11回出展してきました。正直に書きます。前半は出ること自体が目的になっていました。区分がどうなっているかを見て、自社がその場で何の顔をして立つのかを決めていなかったからです。
いま同じ相談を受けたら、金額より先に次の3つを決めることをお勧めしています。現地の人がその場で読めるものを用意しているか。会期中、言葉が通じない相手に何を見せて足を止めていただくのか。終わったあと、名前を思い出してもらう手段が用意されているか。前と、中と、後。この3つが決まっていれば、見積りが出てきたときに高いか安いかを自社で判断できます。
よくある質問
Q1. Paris Manga & Sci-Fi Showという名前はもう使われていないのですか。
公式サイトの表記はParis Manga By TGSです。ただしSNSのアカウント名などには旧称が残っています。検索するときは両方お試しください。
Q2. 日本の会社でも出展できますか。
公式に国籍や企業規模の制限は書かれていません。ただし出展者の区分がアソシエーション・物販店・クリエイター・作家直売の4つである点はご確認ください。自社がどの区分として出るのかが決まらないままの申し込みはお勧めしません。
Q3. 出展料はいくらですか。
公式に公開されていないため、この記事では書けません。金額を明示している情報源は、公式サイト以外のものである可能性が高いとお考えください。確実なのは、公式の問い合わせ先へ自社の条件で見積りを求めることです。
Q4. ジャパンエキスポとどちらに出るべきですか。
比較して優劣を決められるものではありません。会期の長さ、区分、来場者の来かたが違います。判断材料としては、ジャパンエキスポが4日間で出展対象に企業・専門団体が明記されているのに対し、こちらは2日間で区分が物販と作家中心である、という違いが大きいところです。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
アソシエーション、物販店、クリエイター、作家直売。この4つの区分のうち、御社が現地で名乗るとしたらどれでしょうか。
どれにも当てはまらない、と感じられたなら、それが出展前にいちばん先に考えるべきところです。いま海外向けに配っている資料を1点お持ちください。その1枚が現地でどの区分に見えているかを、一緒に読み解きます。
海外向けマンガの実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
出展を決める前に、現地で何が起きているのかを見ておく。
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