
「フランスにも大きなマンガの祭典があると聞きました。ただ、向こうで評価されるのは向こうの作品でしょうし、日本のマンガが相手にされる場ではないのではないでしょうか」
そうとも限りません。フランスのバンド・デシネの祭典であるアングレーム国際漫画祭で、日本の作家が最高賞であるグランプリを2人受けています。2015年の大友克洋さんと、2019年の高橋留美子さんです。2013年には鳥山明さんへ、40周年を記念する特別賞が贈られています。
ただし、その催しは2026年に開かれませんでした。いま、運営そのものが作り直されている最中です。順に申し上げます。
1. アングレーム国際漫画祭とは、どういう催しか
フランス南西部シャラント県のアングレーム市で、毎年1月に開かれてきた催しです。第1回は1974年。扱うのはバンド・デシネ、つまりフランス語圏のマンガで、市の中心部の広場や公共施設が会場になります。ヨーロッパで最も長く続いてきたマンガの催しです。
ここで言うグランプリは、その年の作品に贈られる賞ではありません。マンガの発展に寄与してきた作家に贈られる、いわば功労賞です。
2. 日本の作家が、2人受けています
- 2015年 第42回(1月29日から2月1日) 大友克洋さん。日本人として初めてのグランプリでした。
- 2019年 第46回 高橋留美子さん。日本人として2人目です。グランプリの発表は、開幕前夜の1月23日に行われました。
加えて2013年1月には、鳥山明さんへ40周年記念の特別賞が贈られています。弊社の代表がデジタルコンテンツ協会の白書でフランスのマンガ事情を担当していた当時、現地で記録したものです。
バンド・デシネの祭典で、日本の作家がこれだけ表に出ている。ここは、海外を考えるときに知っておく値打ちがあります。
3. 「向こうの土俵だから無理」ではありません
バンド・デシネと日本のマンガは、本の作り方も、読者の年齢層も、書店での置かれ方も違います。それでも同じ場所で並んで評価されています。
ここから言えるのは、形式が違うことと、伝わらないことは別だということです。読み手が受け取るのは判型ではなく、そこで描かれている人と物語のほうです。弊社がお客さまの現場をマンガにするときも、同じことを考えています。業種の言葉は国境を越えませんが、そこで働く人の姿は越えます。
4. その祭典は、2026年に開かれませんでした
2026年1月の開催は行われていません。長く運営してきた事業者の運営のあり方に批判が起き、作家や出版社のあいだで参加を見合わせる動きが広がったためです。
その後、アングレーム市とバンド・デシネ振興協会が新しい運営者を公募し、2026年4月に事業者が決まりました。2027年の再開に向けて動いていますが、正確な会期も、新しい名称も、まだ公表されていません。詳しくは次の記事に整理しています。
来年もあると思って、予定を組んでよいですか?フランス最大のマンガの祭典は、2026年に中止となりました
5. 50年続いた催しでも、止まることがあります
弊社は、ジャパンエキスポをはじめ、フランスの催しへ2006年から2015年までに11回出展してきました。そのあいだにも、無くなった催しがあります。
レンヌのニオン・ブレイズ・フェスティバルは2013年に始まり、2016年の休止をはさんで2017年に第4回を開いたのち、2019年1月31日に終了を発表しました。理由は費用でも来場者減でもなく、この規模の催しを協会とボランティアだけで運営し続けるのが難しかったことだと説明されています。
1974年から続いてきたアングレームでさえ、1年開かれませんでした。出る側がどれだけ続ける氣でいても、催しの側が止まることがあります。
6. だから、催しではなく渡すものを先に決めます
海外出展のご相談で、最初に会場と日程から決めていく会社さまが多くいらっしゃいます。順番を1つ入れ替えるだけで、次につながり方が変わります。
- 先に、現地で何を渡すかを決める。会社案内の翻訳ではなく、読まなくても伝わる形にする。
- 渡すものが決まってから、それが最も効く場所を選ぶ。大きい催しが最適とは限りません。
- 1回で判断しない。2回目に「あのときの」と言ってもらえて、はじめて回数が意味を持ちます。
この順番であれば、催しの名前が変わっても、会場が移っても、続きから始められます。
よくあるご質問
Q1. グランプリは、作品に贈られる賞ですか。
作家に贈られます。その年に出た作品を選ぶ賞ではなく、マンガの発展に寄与してきた作家へ贈られる功労賞です。
Q2. 日本人の受賞は、この2人だけですか。
グランプリは、2015年の大友克洋さんと2019年の高橋留美子さんの2人です。ほかに2013年、鳥山明さんへ40周年記念の特別賞が贈られています。部門ごとの賞は別にあります。
Q3. バンド・デシネと日本のマンガは、どちらが読まれていますか。
フランスの書店では、両方が別の棚に並んでいます。どちらが上かという比較よりも、日本のマンガを読んで育った層が、いま働く世代になっているという事実のほうが実務には効きます。
Q4. 2027年のアングレームに出展できますか。
2026年9月9日の時点で、出展の受付は公表されていません。運営者が2026年4月に決まったばかりで、名称も未発表です。市と振興協会の告知でご確認ください。
Q5. 大きい催しに出るほうが有利ですか。
規模と成果は比例しません。来場者が多いほど1社あたりの滞在は短くなります。渡すものが決まっていない状態で大きい会場に出ると、通り過ぎられる回数が増えるだけになります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
海外の展示会で、御社のブースに立ち寄った方が、日本へ帰ったあとも手元に残しているものは何でしょうか。
そこが決まっていれば、出る催しが変わっても続けられます。ご相談のときに、前回お持ちになった資料を1部お持ちください。
海外での取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
形式が違うことと、伝わらないことは別です。判型ではなく、そこにいる人が越えます。
参考ブログ
参考実績


