
「フランスの日本文化の催しは、パリと南仏とリヨンで終わりでしょうか」
終わりではありません。ドイツと国境を接する街ストラスブールでも、毎年6月に2日間ひらかれています。ラ・ジャパン(La Japan)といいます。2025年の回は出展者350で、そのうち事業者は1割でした。公式サイトに出ている事実だけを、順に並べます。
1. 開催は6月の2日間、会場はストラスブール見本市会場です
直近の回と会場は次のとおりです。
- 2026年の回 6月6日(土)と7日(日)
- 会場 ストラスブール見本市会場(Parc des Expositions de Strasbourg)
- 所在地 Av. Herrenschmidt, 67000 Strasbourg フランス
- 主催 Association Kakemono Events(ストラスブールの団体)
- 2026年の主題 ROBOTS & VAISSEAUX(ロボットと宇宙船)
会場は見本市会場です。会議場やホールを借りて開く催しとは、通路の幅も、什器の持ち込み方も、搬入の段取りも変わります。フランスの日本文化イベントは会議場で開かれることも多く、見本市会場を使う催しはそう多くありません。ボルドーのアニマジアと同じ型だ、と考えていただくと近いです。
次の回について。地域のイベント情報サイトは2027年6月5日と6日と掲示しています。ただしこれは公式の告知ではありません。日程を決めて動かれる場合は、必ず主催の公式サイトでご確認ください。
2. 名前が3つあります。調べるときの最初の落とし穴です
この催しは、これまでに3つの名前で呼ばれてきました。
- ジャパン・アディクト(Japan Addict) 長く使われてきた名前です
- ジャパン・アディクト・ゼット(Japan Addict Z) 公式ドメインは今もこの名前のままです
- ラ・ジャパン(La Japan) 2026年の回からこの名前になっています
調べるときにこれが効いてきます。日本語で「ジャパンアディクト」と検索すると、古い回の情報が上に出ます。公式サイトの中でも、過去の回の記録は Japan Addict、2026年の案内は La Japan と、別の名前で並んでいます。資料に書くときは、どの年の話をしているのかを名前とセットで押さえてください。
同じことは、パリ近郊のマツリ・エピタニメでも起きています。旧称エピタニメで検索して、現行名にたどり着けないまま「もう無い催し」と誤解される。フランスの催しは名前が変わります。無くなったのではなく、名前が変わっただけ、ということが珍しくありません。
3. 2025年の出展者は350、うち事業者は1割でした
主催が公表している2025年の回の内訳です。ここがこの記事でいちばん申し上げたいところです。
- 出展者 350
- クリエイター・アーティスト 80パーセント
- 事業者(プロ) 10パーセント
- 協会・団体 10パーセント
- 開場 土曜と日曜の10時から19時まで
350のうち事業者は10パーセントですから、35前後ということになります。会場の大半は、個人の作家さんとアーティストさんの区画です。
これを「企業には向かない場所だ」と読むこともできますし、「企業がほとんど居ない場所だ」と読むこともできます。どちらが正しいかは目的によります。同業がひしめく中で見つけてもらうのが難しい場所と、同じ形の出展がほとんど無い場所とでは、立ち方がまるで変わります。
来場者数について。主催は「フランス全土から数千人」と書いているだけで、具体的な人数を公表していません。数えられた数字が無い以上、この記事でも書きません。
4. 入場料は公式に出ています
来場者がいくら払って入るのかは、ブースの作り方にそのまま効きます。2025年の回の料金は次のとおりです。
- 1日券 17ユーロ
- 週末券(2日間) 25ユーロ
- 10歳以下 無料
ここから読み取れることが1つあります。25ユーロを払って2日通しで来る人が歩いている、ということです。通りかかった人ではありません。日程を空けて来た人です。声をかける相手の前提が、街頭での配布とはまったく違います。
5. 出展の申し込みは、書類をメールで請求する形です
主催の公式サイトには「出展の書類を請求する(Je demande mon dossier Exposant)」という案内があり、宛先はメールアドレスです。連絡先は asso.kakemono.events@gmail.com です。
出展料の一覧は公開されていません。書類を請求して、はじめて条件が示される形です。相場を推測した金額は、この記事には書きません。書けば、それが独り歩きするからです。
もうひとつ。フランスの催しは、クリエイター区分の受付が開催の半年以上前に閉じることがあります。ボルドーのアニマジアは2026年の回について、開催の半年前の時点で若手・プロのクリエイター区分の事前登録終了を掲示していました。出たい年があるなら、前の年の秋には動き出しておく必要があります。
6. なぜ国境の街なのか
ストラスブールはアルザス地方の中心都市で、ライン川をはさんでドイツと接しています。欧州議会が置かれている街でもあります。
フランスの催しを日本から眺めると、どうしてもパリの大きさに目がいきます。ですが、出展する側にとって効いてくるのは、その街がどこと地続きなのか、です。国境の街には、国境の向こうから来る人がいます。フランス語圏だけを相手にしているつもりで、隣の言語圏の人に見られていることがあります。
弊社代表の松山は、デジタルコンテンツ協会の白書でフランスのマンガ事情を担当し、現地取材を重ねてきました。そのなかで何度も見たのは、日本の会社が「フランス=パリ」で計画を立て、そこだけで判断してしまう姿でした。フランスは、パリだけの国ではありません。
7. 白書が記録した「地方への広がり」
白書の2013年版には、それまでパリ中心だった催しがフランス全土へ広がったという記録が残っています。日本の大衆文化があまり多くなかった地域でも開かれるようになった、という趣旨です。
同じ白書に、2012年度のフランスではマンガ関連の催しが年間58件あったという記録もあります(出典はNautiljon)。これは2012年度の数字であって、現在も58件という意味ではありません。
白書には、出展する側にとって耳の痛い記録も残っています。山陰国際観光協議会がジャパンエキスポへ2012年から2013年にかけて連続出展した事例です。白書は、地方公共団体が1回の出展で成果が出ずにあきらめること、担当者が代わって情熱を失うことまで書いています。
出展は、前と、中と、後の3つで1つの仕事です。行く前に誰に会うかを決め、会場で覚えてもらい、帰ってから続きを渡す。この3つのうち1つでも抜けると、費用だけが残ります。
8. パリ・マルセイユ・トゥーロン・ボルドー・リヨンと並べると
フランスで日本文化の催しに出ようとするとき、選択肢は1つではありません。時期で並べると、こうなります。
- 2月から3月・マルセイユ ジャパンエキスポ・シュッド
- 4月・トゥーロン マング・アジュール。来場者22,000人
- 6月・ストラスブール ラ・ジャパン。ドイツ国境の街。出展者350のうち事業者は1割
- 7月・パリ北郊ヴィルパント ジャパンエキスポ。規模が最大で、出展者は800社を超える
- 10月・ボルドー アニマジア。2日間でおよそ3万人
- 11月・リヨン ジャパンタッチ。来場者45,000人
弊社自身は、フランス・JAPAN EXPO等に11回出展してきました。11回のあいだに分かったことを、ひとつだけ申し上げます。初回で成果が出た年はありません。同じ場所に、続けていることが伝わったときに、相手のほうから声がかかりました。
よくあるご質問
Q1. 出展料はいくらですか。
公開されていません。公式サイトは「出展の書類を請求してください」という案内で、メールで問い合わせてはじめて条件が示される形です。相場を推測して書くことは、この記事ではしません。
Q2. 日本の会社でも出られますか。
2025年の回の内訳に事業者(プロ)が10パーセント含まれていますので、事業者の区画そのものはあります。残っている区分と条件は、asso.kakemono.events@gmail.com へ問い合わせて確かめる形になります。
Q3. 来場者は何人ですか。
主催は具体的な人数を公表していません。「フランス全土から数千人」という書き方だけです。数字が要る場合は、来場者数の出ている他の催し(リヨン45,000人、トゥーロン22,000人)と並べて説明されることをおすすめします。
Q4. 検索しても情報が古いのですが。
名前が変わっているためです。Japan Addict、Japan Addict Z、La Japan の3つがあり、公式ドメインは今も japanaddictz.fr のままです。年と名前をセットで確かめてください。
Q5. フランス語が話せません。
弊社が11回出展して分かったのは、最初に足を止めるのは言葉ではなく絵だ、ということです。絵で立ち止まってもらってから、簡単な言葉で足りる状態にしておく。順番はこちらです。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社が出展先を選ぶとき、「規模の大きさ」と「同じ形の出展がほとんど無いこと」の、どちらを先に見ておられますか。
ご相談のときに、いま海外向けにお使いの資料を1点、お持ちください。どちらの場所が向いているかは、その1点を見れば見当がつきます。
海外向けマンガの実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
大きい場所に埋もれるより、同じ形の出展が無い場所に立つ。それも1つの選び方です。
参考ブログ
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