
「フランスの内陸で、日本文化の催しを探しています。パリと地中海側ばかりが出てきて、それ以外の土地に出展先があるのか分かりません」
あります。クレルモン・フェランでは、秋にジャパン・イベント、春にクレルモン・ギーク・コンヴァンシオンと、性格の違う催しが2つ立っています。ただし出展の料金は、どちらの公式サイトにも出ていません。出展の入口は、同じ1つの登録ページに集約されています。
先に、人に話したくなる事実をひとつ置きます。日本文化になじみが薄いとされてきた内陸の街に、性格の違う催しが2つ立っています。春と秋で、来場者も会場も違います。
お手元の海外イベントの一覧を開いて、パリと地中海側を線で消してみてください。残った街の名前は、いくつありますか。その数が、いま御社が見えている範囲です。
以下、公式に出ている事実と、公式には出ていない事実を分けて並べます。確認日は2026年9月6日です。
1. なぜクレルモン・フェランなのか
この街を最初に挙げるのには、理由があります。
弊社代表の松山は、デジタルコンテンツ白書の第6章フランスを執筆しておりました。2013年版に、次のことを書いています。数年前まではパリ開催が大半だったが、近年フランス全土へ広がった。クレルモン・フェランなど、日本の大衆文化が比較的少ない地域でも開催されるようになった。同じ白書は、2012年度のマンガ関連の催しを年間58件と記録しています(出典はNautiljon。2012年度の数字であり、現在の件数ではありません)。
つまりクレルモン・フェランは、13年前の時点で「日本文化になじみが薄いのに、催しが立ちはじめた土地」の例として挙げた街です。その後どうなったかを、いま公式サイトで確かめました。1つではなく、2つになっていました。
2. ジャパン・イベント(Japan Event)
公式サイト japan-event.fr に出ている内容と、報道で確認できた内容です。
- 会期 2026年10月31日から11月1日の2日間
- 会場 ポリドーム(Polydôme)。クレルモン・フェラン中心部に近い多目的ホールです
- 回数 公式サイトに記載なし。2025年の開催が第2回と告知されていました
- 内容 伝統文化の展示、日本料理、コスプレ、マンガ、アニメ、音楽、講演、サイン会
- 出展の導線 公式サイトに「JE SOUHAITE EXPOSER(出展を希望する)」があり、GL events社の出展者登録ページへつながります
- 出展料・小間の広さ・申込の締切 公式サイトに記載なし
入場料と来場者については、2025年10月31日付のフランス3(France 3)の記事で確認できました。入場料は1日券10ユーロ、2日通し券17ユーロ。前年の来場者は1万人と伝えています。主催はクレルモン・オーヴェルニュ・エヴェヌマンで、担当のカンタン・コント氏は、マンガのファンだけに向けた催しではなく、家族連れで来られる催しにしたいという趣旨を述べています。
この「マンガのファンだけに向けていない」という運営方針は、出展を考える側にとって小さな話ではありません。通路を歩いているのが誰かが変わるからです。
3. クレルモン・ギーク・コンヴァンシオン(Clermont Geek Convention)
同じ地域で、春に開かれるほうです。
- 会期 2027年3月20日から21日の2日間(公式サイト clermontgeek.com に掲示)
- 会場 グランド・アル・ドーヴェルニュ(Grande Halle d’Auvergne)。所在地は Plaine de Sarliève, 63800 Cournon-d’Auvergne。クレルモン・フェランの隣、クルノン・ドーヴェルニュです
- 規模 23,000平方メートル、出展者200、企画約100(催事情報サイト rom-game.fr の掲載。公式サイトには記載がありません)
- 開場 10時から19時(同上)
- 出展の導線 公式サイトに「JE SOUHAITE EXPOSER」があり、こちらも GL events社の出展者登録ページへつながります
- 会場・規模・入場料 公式サイトに記載なし
公式サイトが掲げているのは、ギーク文化と日本文化の両方を好む人に向けた催しである、という位置づけです。日本文化専門ではありません。日本文化の区画がどれくらいの広さを占めるかは、公式には出ていないため、主催へ尋ねる必要があります。
4. 2つの催しの、決定的な違い
同じ地域の2つですが、出展の目的が違います。
- 時季 ジャパン・イベントは10月末から11月頭。ギーク・コンヴァンシオンは3月下旬。半年ずれています
- 会場の性格 ポリドームは市街地に近い多目的ホール。グランド・アル・ドーヴェルニュは郊外の大型見本市会場です
- 来場者 ジャパン・イベントは日本文化そのものを見に来る人。ギーク・コンヴァンシオンはゲーム・コミック・日本文化をまたいで見に来る人です
- 規模 ギーク・コンヴァンシオンのほうが会場は大きく、出展者数も多いと掲示されています
初めて出るなら、日本文化そのものを見に来る人が集まるジャパン・イベントのほうが、自社の何が伝わって何が伝わらないかを確かめやすくなります。規模の大きさは、初回の判断材料としては後回しでかまいません。
5. 出展料が出ていないことの読み方
2つとも、公式サイトに料金表がありません。日本の見本市に慣れていると不安になりますが、これは珍しいことではありません。
フランスの地方の催しでは、出展の条件を1件ずつ決めることがよくあります。小間の広さも、机や電源の有無も、出す物によって変わるためです。料金表を先に作るより、登録フォームで内容を聞いてから見積もるほうが早い、という運営の判断です。
今回の2つは、どちらも同じ GL events社の出展者登録ページへつながっていました。この会社はフランス各地の会場運営と見本市運営を手がけています。窓口が1つにまとまっているぶん、片方に登録すればもう片方の案内も届きやすい、という利点があります。
6. 最初の1通で、まとめて尋ねること
登録フォームは短く、そこだけでは判断材料が揃いません。備考欄か、登録後の返信で、次の6つをまとめて尋ねてください。往復が1回で済みます。
- 小間の広さの種類と、それぞれの出展料。机、椅子、電源が含まれるかどうか
- 申込の受付開始と締切。2027年3月開催なら、締切は前年の秋であることが多くあります
- 日本の法人が出展できるか。できる場合、必要な書類は何か
- 会場で日本語と英語のどちらが通じるか。通訳は主催で用意されるか
- 前回の来場者数と、来場者の年齢層
- 日本文化の区画がどこにあり、どれくらいの広さか(ギーク・コンヴァンシオンの場合)
弊社は、フランスのJAPAN EXPO等のマンガ関連イベントに計11回出展してまいりました。通路で分かったのは、掲げた説明文の正確さでは足が止まらないということです。読ませる資料より、絵だけで筋が追えるもののほうが通路では強い。日本文化専門ではない催しほど、その差は大きく出ます。日本語もフランス語も読まない人が、目の前を通っていくからです。
よくあるご質問
Q1. パリではなく、内陸の街に出る意味はありますか。
あります。パリの大きな催しは出展者が多く、初めての会社は通路の端に置かれます。地方の催しは出展者が少ないぶん、来場者ひとりあたりに使える時間が長くなります。何が伝わるかを確かめる目的なら、地方のほうが速く分かります。
Q2. 日本文化専門ではない催しに出て、意味はありますか。
目的によります。日本文化を知っている人だけに会いたいのなら合いません。まだ知らない人に見つけてもらいたいのなら、専門ではない催しのほうが向いています。通路を歩いている人の多くが、日本文化を目当てに来ていないからです。
Q3. 出展料が公式に出ていないのは、危ないということですか。
そうとは限りません。今回の2つは、どちらも会場運営を手がける会社の登録ページが窓口になっており、体制としては整っています。危ないかどうかは、料金表の有無ではなく、尋ねたときに返ってくる答えの具体性で判断してください。
Q4. 春と秋、両方に出たほうがよいですか。
初年度は片方だけにしてください。2つとも出ると、どちらの何が効いたのかが分からなくなります。片方に出て、来場者の反応を記録し、翌年もう片方を足すほうが、判断が積み上がります。
Q5. まず何から始めればよいですか。
その年に開かれるほうを1つ選び、出展せずに見に行くことをおすすめしています。どんな人が通路を歩いているか、どの卓の前で足が止まっているかを、自分の目で見てください。資料で読むより速く、翌年の設計が決まります。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社が海外の催しを探すとき、都市の名前はいくつまで思い浮かびますか。
その数を、ご相談のときに教えてください。そこから漏れている街を、一緒に足していきます。
海外での実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
知られていない街に、出展先が無いわけではありません。探されていないだけです。
では、ほかの街はどうか
言葉が読まれない通路で、起きたこと


