
「レンヌやディジョンのような地方の催しは分かった。ただ、会場が大学や小さな施設だと、社の稟議が通りにくい。市の中心にある、きちんとした会議場で開かれる催しはないだろうか」
あります。フランス東部ロレーヌ地方、ナンシーのアニメストです。会場はナンシー市の中心にある大型会議場サントル・プルーヴェで、鉄道のナンシー駅から100メートル。2026年11月14日と15日に、第24回が開かれると公式サイトが告知しています。
公式サイトで確認できた事実と、確認できなかった事実を、分けて並べます。
1. 日程と会場は、1年前に公式が出しています
公式サイトの表紙に出ている告知は、次のとおりです。
- 第24回、2026年11月14日(土)と15日(日)の2日間
- 会場はサントル・プルーヴェ(Centre Prouvé de Nancy)、住所は1 Place de la République, 54000 Nancy
- 公式の実用情報ページによると、前売券をお持ちの方の入場は9時30分から19時、当日券をお求めになる方は10時30分から19時
- 会場は鉄道のナンシー駅から100メートル。会場に併設の駐車場があり、市内バスは12系統以上が乗り入れる
駅から100メートルという条件は、出展する側にとって実務的な意味があります。日本から機材を持ち込む場合、空港から鉄道で入って、そのまま徒歩圏に会場と宿がある。地方の催しで負担になりやすいのは出展料ではなく移動と搬入ですから、ここが軽いのは検討材料になります。
2. 出展の受付は、店舗と創作者の2つに分かれています
公式の申込ページで確認できたのは、次の区分です。
- 店舗(boutiques)。日本文化に関わる商品を扱う事業者向け。本稿の執筆時点で受付は開いている
- 創作者(créateurs)。作家、職人、制作者向け。本稿の執筆時点で受付は締め切られている
- ボランティア。運営を手伝う人向け。誰でも申し込める
- 報道。近日公開とだけ書かれている
企業として出展を検討する場合、入口は1番の店舗です。申込はGoogleフォームで、公式サイトからそのフォームへ移る形になっています。
ここで正直に申し上げます。小間の広さ、机や電源が含まれるか、締切がいつか、そして出展料がいくらかは、公式サイトに掲示がありません。フォームの中に書かれている可能性はありますが、外からは読めませんでした。
3. 公式の実務情報は、まだ前回のまま残っています
資料価値の観点で、もう1つお伝えしておくべきことがあります。公式サイトのよくある質問のページは、本稿の執筆時点で第23回、2025年11月15日と16日の記述のまま残っています。表紙は2026年の第24回に更新されているのに、実務情報のページは追いついていません。
これは運営が不誠実だという話ではありません。学生と有志で運営している催しでは、よくあることです。読む側が知っておくべきなのは、次の2点です。
- 日程は1年前に出るが、料金と出展条件は後から更新される。掲示を待っていると、受付が始まってから氣づくことになる
- したがって、掲示の更新を待つのではなく、先に問い合わせておくのが安全な順序である
4. 規模の数字は、公式発表ではありません
来場者数について、公式サイトには掲示が見当たりませんでした。現地の専門メディアが第23回の報告として、来場8,300人、運営予算20万ユーロ、テーマはサイバーパンクであったと伝えています。ただしこれは公式発表ではなく、媒体の報告です。そのつもりでご覧ください。
この規模をどう読むか、正確に申し上げます。8,300人は、本ブログで扱ってきた催しの中では小さいほうです。ローザンヌのジャパン・インパクトが公式で1万2000人超、トゥールのジャパン・ツアーズ・フェスティバルが出展407を掲げていました。それらより一回り小さい。
小さいことは、出展する側にとって不利とはかぎりません。2日間で会場をひととおり歩き切れる規模だということは、御社のブースの前を、来場者の大半が一度は通るということです。数万人が来る催しで通路の端に置かれるより、届く人数はむしろ多くなります。
5. 入場料は、前回の金額が参考になります
2026年の第24回の入場料は、本稿の執筆時点で未発表です。第三者の情報サイトが掲載している第23回、2025年の金額は次のとおりでした。
- 土曜1日券 14ユーロ、日曜1日券 13ユーロ
- 2日通し券 22ユーロ
- 割引料金 各日7ユーロ、2日通し11ユーロ
- 学生 土曜12ユーロ、日曜11ユーロ、2日通し20ユーロ
- 優先入場と特典が付くパス・タヌキ 50ユーロ
入場料が2日で22ユーロという水準は、日本の見本市が無料招待で人を集めるのとは前提が違います。お金を払って入る人しか会場にいません。ひやかしが少ない代わりに、通路を歩いている人は目的を持っています。ブースの前で足を止めてもらえるかどうかが、そのまま結果になります。
弊社は、フランスのJAPAN EXPO等のマンガ関連イベントに計11回出展してまいりました。回を重ねて分かったのは、現地で効くのは翻訳の正確さではないということです。言葉が分からない人が、絵だけで筋を追えるかどうか。通路で足が止まるのは、そこだけです。
6. 運営は、大学に根を持つ団体です
公式サイトは、TELECOM Nancy とロレーヌ大学との連携のもとで開かれていることを掲げています。2003年にナンシー鉱山学校の学生が立ち上げた非営利団体が始まりであると記録されていますが、創設年については公式サイト上で確認できませんでした。確認できていない事実として、そのままお伝えします。
運営が学生と大学に根を持つ催しには、共通の性質があります。来場者との距離が近い一方で、運営の担当者は学年とともに入れ替わります。前年に築いた関係が、翌年も同じ人につながるとはかぎりません。
これは出展する側にも同じことが起こります。日本の会社が海外の催しを続けられない理由として、担当者が代わって情熱が引き継がれないことが挙げられます。弊社の代表が執筆したデジタルコンテンツ白書のフランスの章にも、自治体の連続出展を扱った箇所で同じ指摘が残っています。主催側も出展側も人が入れ替わるのなら、続ける仕組みは人ではなく形のほうに置いておくしかありません。
よくあるご質問
Q1. 出展料はいくらですか。
公式サイトには掲示がありませんでした。申込フォームの中を見るか、公式へ直接お尋ねいただく形になります。ヨーロッパの催しは、区分と小間の位置で金額が変わるため、一覧を出さないところが多数です。金額が非公開であること自体は、珍しいことではありません。
Q2. 来場8,300人という数字は、公式のものですか。
いいえ。現地の専門メディアが第23回の報告として伝えている数字です。主催者の公式発表ではありませんし、第三者の監査値でもありません。社内の稟議で数字をお使いになる場合は、その旨を添えてください。
Q3. マンガやアニメと関係のない業種でも出られますか。
受付の区分が「日本文化に関わる商品を扱う事業者」となっています。自社の商品を日本文化の文脈に置き直せるかどうかが分かれ目です。判断に迷う場合は、扱う商材を明記して問い合わせるのが早い順路です。
Q4. パリのジャパンエキスポと、どちらに出るべきですか。
比べるものではないと考えています。パリは規模が大きく、費用も準備も重い。ナンシーは規模が小さく、駅から100メートルで、負担が軽い。初めての海外出展で運用の型を作る場としては、負担の軽いほうから入る順序が現実的です。ただし1回で判断しないことが前提です。
Q5. いつ動けばよいですか。
いま動いてください。理由は3番に書いたとおりで、この催しは日程が先に出て、料金と出展条件が後から更新されます。更新を待つと、受付が始まっていることに後から氣づく形になります。日程が確定している11月の催しに対して、夏を過ぎてから問い合わせるのでは、社内の予算取りが間に合いません。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社が海外の催しに出るとして、出展料が公開されていないという理由だけで、候補から外しておられませんか。
非公開の催しを1つ選んで、問い合わせ文の下書きを1通、ご相談のときにお持ちください。
海外向けマンガの実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
駅から100メートル。出展の負担を決めるのは、出展料だけではありません。
参考ブログ
参考実績


