
「スイスのポリマンガは分かった。ただ、いきなり有料の大きな催しは重い。同じスイスに、もう少し試しやすい場はないだろうか」
あります。ローザンヌのジャパン・インパクトです。スイス連邦工科大学ローザンヌ校、通称EPFLのキャンパスで開かれる催しで、公式サイトは来場1万2000人超、ブース150超という規模を掲げています。そして特筆すべきなのは、2009年の第1回から直近までの来場者数を、すべて公式に並べて公開していることです。2009年は2,000人でした。2025年は1万2500人を超えています。16年かけて、6倍以上になった記録がそのまま読めます。
公式サイトで確認できた事実だけを、順に並べます。
1. 公式が掲げている規模は、来場1万2000人超とブース150超です
公式サイトの表紙に、6つの数字が並んでいます。
- 来場者 12,000人以上
- 出展ブース 150以上
- ボランティア 300人以上
- ワークショップと催し 50以上
- 講演と演奏 30以上
- 会期 2日間
ブース150という数は、出展を考える側にとって実務的な意味があります。数千の小間が並ぶ大規模見本市とは違い、来場者が2日間で会場をひととおり歩き切れる規模だということです。前の記事で扱ったトゥールのジャパン・ツアーズ・フェスティバルが出展407、ブリュッセルのメイド・イン・アジアが出展397でしたから、それらより一回り小さい。埋もれにくい規模です。
2. 16年分の来場記録が、公式にそのまま並んでいます
この催しの資料価値は、規模そのものよりも、過去の開催をすべて数字付きで公開している点にあります。公式の「過去の開催」ページから、来場者数を年ごとに書き出します。いずれも公式表記のままです。
- 2009年 2,000人(3月14日から15日)
- 2010年 2,000人
- 2011年 3,000人
- 2012年 4,500人
- 2013年 4,000人超
- 2014年 5,000人超
- 2015年 6,500人超
- 2016年 6,500人超
- 2017年 8,000人超
- 2018年 7,500人超
- 2019年 7,800人超
- 2020年 9,000人超
- 2021年 3,000人超(オンライン開催)
- 2022年 1万2000人超(8月開催)
- 2023年 1万1000人超
- 2024年 1万2000人超
- 2025年 1万2500人超
ここで、都合の良いところだけを読まないようにいたします。この17回分は、きれいな右肩上がりではありません。2017年の8,000人超に対して2018年は7,500人超で、前年を下回っています。2015年と2016年は同じ6,500人超で足踏みしています。2021年はオンラインに切り替わり、2022年は2月ではなく8月の開催でした。
下がった年と、開催そのものが動いた年をはさみながら、16年かけて6倍になっている。これがこの記録の正確な読み方です。
3. 主催は、大学の学生協会です
運営しているのはPolyJapanという協会で、EPFLのキャンパスを会場に開いています。会場所在地は、EPFLのキャンパス北地区、郵便番号1015のローザンヌです。公式サイトは、フランス語圏スイスで最大の日本文化の祭典であるとし、2009年の創設以来、毎年拡大してきたと記しています。
主催が学生団体であることは、出展を考える側にとって、良い面と注意すべき面の両方があります。
- 良い面。ボランティア300人以上という運営体制で、来場者との距離が近い。企業の展示会にありがちな、通り一遍の応対になりにくい
- 良い面。大学のキャンパスが会場なので、学生と若い層が濃く歩く。将来の顧客層に届く
- 注意する面。運営の担当者は学年とともに入れ替わる。前年に築いた関係が、翌年も同じ人につながるとは限らない
- 注意する面。見本市専用の建物ではないため、搬入や電源の条件は、日本の見本市会場と同じ前提では考えられない
3番目は、実は出展する側にも同じことが起きます。日本の会社が海外の催しを続けられない理由として、担当者が代わって情熱が引き継がれないことが挙げられます。弊社の代表が執筆したデジタルコンテンツ白書のフランスの章にも、自治体の連続出展を扱った箇所で同じ指摘が残っています。主催側も出展側も人が入れ替わるのなら、続ける仕組みは、人ではなく形のほうに置いておくしかありません。
4. 出展の入口は、公式サイトからの問い合わせです
出展を検討する場合、公式サイトで確認できたのは次の点です。
- 出展の申込受付は、6月から始まると案内されている
- 申込の方法は、公式サイトの窓口へメールで問い合わせる形である
- 出展料は公式サイトには掲示されていない
- 本稿の執筆時点で、公式サイトの表紙に出ている開催案内は第17回、2026年2月14日から15日である。次回の日程は掲示を確認できなかった
4番目について補足します。2026年2月の回はすでに終わっています。次回の日程が公式に出るのを待ってから動くと、6月からの申込受付に間に合わない可能性があります。日程の告知を待つのではなく、先に問い合わせておくのが安全な順序です。
5. 同じスイスに、性格の違う2つがあります
スイスには、すでに本ブログで扱ったポリマンガがあります。同じ国の、同じフランス語圏で、性格がはっきり違います。
- ポリマンガは、作家向けと事業者向けで出展の入口そのものが分かれている催しです
- ジャパン・インパクトは、大学キャンパスで開かれる、ブース150規模の催しです
- 時期も違います。ポリマンガは春、ジャパン・インパクトは2月が基本です
どちらが上ということではありません。1年のうちに2回、同じ国の同じ言語圏で顔を出せる、と読むのが実務的です。海外の催しで成果が出ない最大の理由は、1回出して手応えがないまま終わることにあります。同じ商圏に年2回の機会があるなら、1回目で見た反応を2回目に反映できます。
弊社は、フランスのJAPAN EXPO等のマンガ関連イベントに計11回出展してまいりました。回を重ねて分かったのは、現地で効くのは翻訳の正確さではないということです。言葉が分からない人が、絵だけで筋を追えるかどうか。通路で足が止まるのは、そこだけです。
よくあるご質問
Q1. 出展料はいくらですか。
公式サイトには掲示がありませんでした。公式の窓口へ問い合わせる形になります。ヨーロッパの催しは、出展の区分と小間の位置で金額が変わるため、一覧を出さないところが多数です。金額が公開されていないこと自体は、珍しいことではありません。
Q2. 来場1万2000人という数字は、監査された数字ですか。
主催者が自ら公表している数字です。第三者の監査値ではありません。監査済みの数字で比べたい場合は、ナントのアート・トゥ・プレイのように監査値を公開している催しと並べてご覧ください。ただし、この催しについては16年分を年ごとに並べて公開しており、数え方が途中で変わったようには見えない点は、判断材料になります。
Q3. スイスなのに、なぜフランス語なのですか。
ローザンヌはスイスのフランス語圏にあります。公式サイトもフランス語と英語で書かれています。フランス向けに用意した資料が、そのまま使える商圏だとお考えください。フランス本国の催しに出るための下見として、規模の小さいこの催しから入る、という順序も成り立ちます。
Q4. マンガやアニメと関係のない業種でも出られますか。
日本文化の祭典として、マンガ、アニメ、ゲーム、日本の伝統文化まで幅広く扱う催しです。自社の商品を日本文化の文脈に置き直せるかどうかが分かれ目になります。判断に迷う場合は、扱う商材を明記して問い合わせるのが早い順路です。
Q5. 1回だけ出して様子を見る、というのはどうですか。
おすすめしません。上に並べた16年の記録が、そのまま答えになっています。この催し自体が、2,000人から始めて、下がった年をはさみながら1万2500人まで来ています。主催者が16年続けた場所で、出展する側が1回で見切るのは、釣り合いが取れません。少なくとも2回分の予算と担当を、先に決めてから申し込んでください。
最後に、ひとつだけうかがわせてください。
御社が海外の催しに出るとしたら、2回目の予算を、いま社内で通せますか。
1回分ではなく2回分の見積を1枚、ご相談のときにお持ちください。
海外向けマンガの実際の取り組みをご覧いただけます。国際マンガの事例を見る
2千人から始まっています。始まりが小さいことは、続けない理由になりません。
参考ブログ
参考実績


