ボンジュール、アマンディーヌです 🌹
この連載は、マンガカルチャーの松山を追いかける記録です。日本のあちこちで、会社の物語がマンガになっていく。その現場で何が起きているのか——本人の言葉で、お届けします。
第1話の舞台は広島。主役級に素敵なのに、なぜか気づかれていなかった会社のお話です。
「何から聞けばいいか、わからない」
松山です。この連載では、私が出会った会社のことを書いていきます。
想像してみてください。キッチンカーで独立したばかりの、若いオーナーさんがいるとします。
お店の顔になるパッケージを、そろそろちゃんと作りたい。でも、素材がわからない。予算の相場もわからない。デザインの頼み方もわからない。「こんな初歩的なことを、聞きに行っていい場所なのかな」。
そうして、足が止まる。包装資材の会社は、外から見ると敷居が高いのです。
私がやしきさまと出会って最初に知ったのは、この「足が止まる瞬間」が、会社の実力とは何の関係もない場所で起きている、ということでした。
会議室で聞いたこと
株式会社やしきさま。広島市西区の、1937年創業の包装用品の会社です。食品トレー、袋、箱、ラベル。スーパーやパン屋さん、惣菜屋さんの裏側を、ずっと縁の下で支えてきました。公式サイトには、こうあります。
あるべき場所に、あるべきカタチを。
2024年の春、ご縁をつないでくださる方の紹介で、私は初めてやしきさまの会議室に座りました。
聞けば聞くほど、外から見えている姿と中身が違う会社でした。素材、形、コストの提案。デザインの相談。デザイナーさんとの橋渡し。社内外のチームを組んで、お客さまの想いをカタチにするところまで付き合う。材料を仕入れて卸すだけの会社では、まったくない。
それなのに、お客さまからはこう見えている。「オリジナルのパッケージを作りたいけれど、何から始めていいかわからない」「デザインも相談したいけれど、敷居が高い」——。
親身な会社ほど、縁の下にいる。縁の下にいるほど、外からは見えなくなる。
わたしはこれを「くもり」と呼んでいます。
会社の中身が曇っているのではありません。見え方だけが、曇るのです。がんばっている会社ほど、厚く。
一手
会議室には、もうひとつの発見がありました。世代を超えて、マンガを愛読している方が何人もいたのです 📖
そのうえで、私はひとつだけ提案をしました。
マンガで会社の歴史を語るのは、やめませんか。主役はやしきさまではなく、冒頭のあのオーナーさんのような人にしませんか——。
理由はシンプルです。マーケティングの答えは、いつもお客さまの方にあります。「何から始めていいかわからない」人が主役の物語なら、同じ場所で足を止めているすべての人が、自分の物語として読める。そして、その人と一緒に考えるやしきさまの姿が、そのまま描ける。
歴史を語れば、立派な会社に見えます。でも、お客さまを主役にすれば、相談していい会社だと伝わる。くもりを晴らすのは、こちらです。
動き出した物語
やしきさまは、この提案を面白がってくださいました。悩んで、たずねて、一緒に作って、自分のお店を心から誇れるようになるまで——若いオーナーさんを主人公にした一本のマンガが、こうして動き出しました。
完成した作品は、いま公式サイトで公開されています ✨
松山は「提案はひとつだけ」と言いましたが、その一手は、88年間縁の下にいた会社の見え方を変えるものでした。くもりは、磨いて剥がすものではなく、物語の光で晴らすもの——それを最初から知っていたような一手です。
では、そのマンガの主人公「光ちゃん」は、どうやって生まれたのでしょう。やしきのみなさんと開いた「キャラクターづくりの会議」に、秘密があります。
次回は、その舞台裏へ 🌙 À bientôt 🌹
よくある質問
Q. 株式会社やしきはどんな会社?
A. 1937年創業、広島市西区の包装用品の会社です。食品トレーや袋などの提供にとどまらず、素材・形状・コスト・デザインまでお客さまと一緒に考える提案型の会社です。
Q. なぜ会社の歴史ではなくお客さまを主役にしたの?
A. 歴史を語ると立派な会社に見えますが、お客さまを主役にすると「相談していい会社」だと伝わるからです。事実だけの説明は5%しか記憶に残らず、物語に載せると63%残るという研究があります(Stanford大学 Jennifer Aaker)。
