
「会社案内を作ったのに、置いてあるだけになっていませんか?」
結論から申し上げます。会社案内が読まれないのは、デザインの問題ではありません。読み手にとって「知らない会社の自己紹介」を最後まで読む理由がないからです。理由をつくれるのは、実績一覧ではなく物語でした。
「知名度がない」は、思っている以上に重い
日経リサーチのBtoB購買プロセス調査(n=2,132・2020年5月)に、目を背けたくなる結果があります。新規の取引先を却下する理由のトップが「会社の知名度」でした。価格の妥当性と同率です。※新型コロナ第1波の最中に行われた調査である点は割り引いてお読みください。
つまり、品質でも価格でもなく「知らないから」で外されている。会社案内は本来ここを埋める道具のはずですが、実績一覧と沿革を並べただけでは「知らない会社の自己紹介」のままです。読む理由がありません。
勝負は「検討が始まる前」に決まっている
もう一つ、発注のタイミングの話をします。才流の調査(n=600・2024年11月)では、92.8%が1年以内に発注しており、最も多いのは1〜3か月未満でした。「BtoBは検討期間が長いから、じっくり追いかければいい」——これは実態と違います。
しかも動くきっかけは法改正やトップダウンで、こちらの都合では作れません。同調査で一次選定の鍵とされたのは、検索エンジン・紹介、そして第一想起です。思い出された会社しか、土俵に上がれない。会社案内の役目は「読ませること」ではなく、その日が来たときに思い出される状態をつくることだと考えています。
物語にすると、なぜ残るのか
物語の効き方は、研究でもある程度わかっています。van Laer らのメタ分析(76論文・132効果量)では、物語に引き込まれた読み手は感情(ρ=.57)や態度(ρ=.44)が動く一方、批判的な反論が減る(ρ=−.20)と報告されています。売り込まれている感じが薄れる、ということです。
Mayer らの11実験でも、絵と言葉を組み合わせた説明の効果量はd=1.39と大きく、その分野を知らない相手ほど強く効くことが示されています。会社案内が向き合うのは、まさに「自社を知らない人」です。
ただし、出せば出すほど好かれるわけではありません。Montoya らの再検証(81論文・268曲線)では、単純接触の効果は逆U字を描きました。回数ではなく、思い出す価値のある中身かどうかが分かれ目です。
会社案内マンガをつくる4つの順番
- 沿革から書き始めない。読み手は会社の歴史に関心がありません。関心があるのは自分の困りごとです。
- 「誰の、どんな困りごとを、どう解いたか」を1本の物語にする。実績一覧はその後ろで十分です。
- 社内の実在の人を出す。知名度の穴を埋めるのは会社の格ではなく、顔と手つきです。
- 1年後に読み返せる分量にする。分厚さは信頼になりません。8〜16ページで足ります。
20年やってきて、今も間違えること
私たちはフランスのジャパンエキスポに11回出展し、前田機械さまの営業職採用マンガをはじめ、20年以上にわたって企業の発信をお手伝いしてきました。それでも、いまだに間違えることがあります。つい「自社のすごさ」から書き始めてしまうのです。
原稿を読み返して、1ページ目に読み手が出てこないと気づいて書き直す。その繰り返しでした。会社案内マンガがうまくいくときは、たいてい1コマ目の主人公が、自社ではなくお客さまになっています。特別なことはしていません。順番を守っているだけです。
よくある質問
Q1. 会社案内マンガは何ページが適切ですか?
8〜16ページをお勧めしています。分厚くすると更新できなくなり、情報が古いまま配り続けることになります。更新できる分量が正解です。
Q2. 既存の会社案内と、どう使い分けますか?
マンガを入口、既存の会社案内を後ろに置く形が多いです。興味を持った人だけが詳細に進む構造にすると、どちらも役割を果たします。
Q3. 知名度がない中小企業でも効果はありますか?
むしろ知名度がない会社ほど向いています。大企業は名前で思い出されますが、そうでない会社は物語でしか思い出されません。
Q4. 社員が登場するのを嫌がりませんか?
最初は戸惑われることが多いです。ただ、出来上がったマンガをご家族に見せてくださる方が少なくありません。採用や社内の士気にも効いてくるのは、正直なところ想定外の副産物でした。
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